【はじめての文章発信】いつか誰かの元に届く”ボトルメール”。人気ライター・ゆぴさんが語る「書く習慣」のつくりかた【はじめてをはじめる #33】

生活

【はじめての文章発信】いつか誰かの元に届く”ボトルメール”。人気ライター・ゆぴさんが語る「書く習慣」のつくりかた【はじめてをはじめる #33】

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やってみたいけれど一歩踏み出せない、新しい趣味を見つけたい。そんな人の背中をそっと押す企画「はじめてをはじめる」。

今回のテーマは「文章発信」です。

文章を書くのって、難しいですよね。うまく書こうとすればするほど、書けなくなってしまう。「自分の文章が、誰かの目に触れる」なんて意識し始めると、途端に手がとまってしまったり……。

でも一方で、「自分の思いを文章で表現したい」「文章を通じて誰かとつながりたい」という気持ちもあるんです。だから書くのをやめられない。”書きたい自分”と”書けない自分”のはざまで、悶々とする毎日です。

もっと楽な気持ちで「書くこと・発信すること」に向き合えたら――。そう思いながら、「文章発信」について調べてみることに。

文章発信について調べてみた

手軽に文章を発信できるコンテンツとして代表的なのが、「Twitter」と「note」ではないでしょうか。

2021年8月に総務省が発表した調査では、日本に住む約4割の人がTwitterを利用しているそうです。日本の人口が約1.2億人なので、約4800万人ということになりますね。

一方、noteの会員登録者数は2020年6月時点で約260万人。1日に平均2.6万件もの投稿が行われているとのこと。みんなガンガン書いて、発信しているんですね。見習わなければ……!!

ここはやはり、「文章発信」のプロにコツを教えてもらうしかない。そう考えて、今年8月に、『書く習慣~自分と人生が変わるいちばん大切な文章力~』を出版した人気ライターのいしかわゆき(ゆぴ)さんに取材を依頼。お話を伺いました。

文法や語彙力は気にせず、「メモをする感覚」で書く

取材記事を執筆する傍ら、日々noteで思いを綴るライター・ゆぴさん(写真は本人提供、以下同)

新妻

ゆぴさんは普段、どんな意識で文章を発信しているんですか?

ゆぴさん

メモをしている感覚に近いですね。前提として、人は何かを学んでも1日後にはほとんどのことをすぐに忘れてしまうので。

だから、何かしらの形として残しておくような感覚です。

新妻

でもメモをするだけだと、自分だけで完結してしまうのでは?

ゆぴさん

私の場合、どうせメモをするのであれば、ほかの人にもシェアして役立ててもらえばいいなと考えているので。

基本的には自分のために書いているんですけど、プラスアルファで「ついでだからほかの誰かも使っていいよ!」みたいな気持ちで書いています。

新妻

なるほど!シェアするときは、具体的な「誰か」をイメージされるんですか?

ゆぴさん

私が想定しているのは、「過去の自分」か「身近な人」ですね。

新妻

過去の自分。

ゆぴさん

そうです。生きているといろんなアクシデントが起こるなかで、自然と対応を覚えてノウハウがたまっていくじゃないですか。

そういうノウハウを、過去の自分に向けて「こういうときは、こうしたら?」と伝えるイメージです。

新妻

確かに、過去の自分はイメージしやすい!身近な人というのは?

ゆぴさん

私、中学生のときにブログを書いてたんですけど、基本的に「みんな聞いて!」というスタンスで書いてたし、それは今も変わらないです。

たとえば、お気に入りのアニメを紹介するとき、変に身構えるのではなく、「このアニメの面白さをどうやって友達に布教しよう?」と考えながら書くと、書きやすいんじゃないかなと思います。

新妻

友だちに話しかける感覚ですね!でも、語彙力不足がバレてしまいそう……。

ゆぴさん

実は、最低限の「てにをは」さえ押さえておけば、細かい文法や語彙力を気にする必要はないんですよ。

私たちは別に作家や小説家ではなく、届ける相手も一般の人です。であれば、発信するときに一番大事なのは「わかりやすく確実に伝えること」ですよね。

新妻

文法や語彙力を身につけてから発信するべきだと思っていました……!!

ゆぴさん

たとえば、身体を鍛えようと思って筋トレの勉強をしてから1年後に筋トレをしても、無駄な時間を過ごしているだけじゃないですか。

どうせなら筋トレの勉強と並行しながら鍛えたほうが効率良く鍛えられる。発信も同じで、書きながら身につけていけばいいんじゃないかな。

「どうでもいい時間」を5分使って、スモールスタートを積み重ねる

「何も考えずに書けるような環境を整えておく」のもテクニックのひとつだという

新妻

筋トレもそうですが、文章を書いて発信するのって、続けるのが難しいんですよね……。

ゆぴさん

私は「5分だけやろう」というのをすごく意識しています。そういう気持ちで着手すると、気づいたら20分くらい書いていたりするんですよ。

新妻

5分だけなら続けられる気がする!!

ゆぴさん

何かを始めるとき、つい目標を高く設定しがち。でも、まずはスモールスタートを積み重ねていくのがコツかなと思います。

新妻

急に気合いを入れて取り組むから続かないんですね。

ゆぴさん

座ってパソコンを開いて、「今から1時間くらい書くぞ!」と始めようとすると、何だか億劫になってきますし……。

仮にその1時間を使って書いたものが何も身を結ばなかった場合、何だかもったいないような気がしませんか?

新妻

確かに、1時間を無駄にした感じがします……。

ゆぴさん

でも、逆に何をしてもしなくても気づいたら過ぎているような「どうでもいい時間」で何かを書けたら、めちゃくちゃお得な気持ちになると思っていて。

電車に乗ってるときとか、Twitterを見てるときとか、「失ってもいい時間」を活用すれば習慣化しやすいと思います。

新妻

書くためのネタはどうやって探せばいいでしょう?

ゆぴさん

自分の内側からネタが探せないのなら、外から引っ張ってくるのがオススメです。私はよく「コンテンツを利用しよう!」と言ってますね。

今やサブスクが一般的で”読むもの”も”観るもの”もたくさんある時代。日常的にみんな娯楽に勤しんでいると思うんです。

だからまずは、自分の好きなものについての感想を書いてみることから始めてみるといいと思います。

みんな「いいね」をしない。だから「1いいね」でも素晴らしいと考えて

「いいねがなくてもみんな読んでいる、というマインドを持つのが大事」と話してくれました

新妻

ちなみに、ゆぴさんはTwitterとnoteをどのように使い分けてるんですか?

ゆぴさん

実は明確に分けてるわけじゃなくて。noteはTwitterの延長線上にあるものだと思っています。

新妻

Twitterの延長線上……?

ゆぴさん

そうです。Twitterは140字しか書けないので、書けることも限られるし、どうしても言葉足らずで淡々とした感じになってしまう。

一方で、noteは文字数制限がなく、長い文章を届けるのに適しています。まずはTwitterでつぶやいてみて、「ここをもうちょっと語りたい!もっと掘り下げたい!」と感じたものを”リサイクル”してnoteで書く方法を取っていますね。

新妻

そうするとnoteも書きやすくなりますね。「こういう内容を書いたら読者の反応が良さそう!」とかは考えますか?

ゆぴさん

いや、普段の日記に関しては、とにかく書きたいことを書いています。自分のために書く、ただの日記なので、別に誰にも賛同されなくてもいいと思っているんですよね。

もちろん賛同されたらうれしいですけど、「ためになる・ならない」は読者が決めることなので。

新妻

え、賛同されなくてもいいんですか?ぼくはTwitterやnoteで「いいね」とか「スキ」をもらえないと不安になっちゃうんですが。

ゆぴさん

「いいねがもらえない」と言ってる人は、有名人感覚で、「発信すれば必ずいいねがもらえる!」と思ってるからショックを受けるんですよ。

新妻

うっ……。

ゆぴさん

有名人や、発信の内容が良い人であれば、もちろん何もしなくてもいいねがもらえると思います。

でも、そうじゃないなら、「良かったら読んでみて」と友だちに記事のURLを送ってみたり、ほかの人にコメントしたり、自分から何かアクションをしないとコミュニケーションは生まれないと思います。

それなのに、なんでみんなそんなに“待ち”の姿勢なのかな?と思って。

新妻

待ちぼうけ状態でした……。

ゆぴさん

もし読まれている実感が持てない人は、一度PV数を見てみるといいと思います。

たとえばnoteのダッシュボードからPV数を見てみると、いいねやスキよりもめちゃくちゃ多いことがわかると思います。

改めてそれを目の当たりにすれば、「基本的にみんな、いいねやスキをしないんだな」と気づけるはず。そうすると「1いいね」でも素晴らしいと思えるんですよね。

新妻

肝に銘じます!!実はもう1つ気になっているのが「炎上」なんですが、ゆぴさんは炎上が恐くないんですか?

ゆぴさん

私は3年間Twitterをやっていますが、炎上したことがないし、これからもしないと思っています。というのも、基本的に誰かや何かを”ディスる”ことをしないんですよ。

言葉の扱いってすごく難しくて。もしかしたら今後自分にそのつもりがなくても、相手を傷つけてしまうことがあるかもしれないんですけど……。でも最低限、「誰も傷つけないように」というのを意識してTwitterやnoteを書くようにしています。

ポジティブなことばかりを呟けとは言いませんが、特定の個人やサービスを貶めたり、人の悪口を言ったりするSNSの使い方は気持ちよくないと思うから。

書くことでやりたいことが見つかる。発信すれば誰かの元に届く

ゆぴさんの著書『書く習慣~自分と人生が変わるいちばん大切な文章力~』

新妻

今年8月に出版された『書く習慣 』は、noteで発信した内容がきっかけなんですよね。ゆぴさんは「書いて発信する」ことで、ご自身の可能性を広げているように感じます。

ゆぴさん

自分の思いを言語化していくことは、自分と対話することだと思っていて。書いているうちに、自分のことが分かってくるんです。

「自分はこういうことを考えていたんだな」という自己理解が深まることで、やりたいことが見つかる。それによって、可能性が広がるというのはありますね。

新妻

「発信する」ことで、さらに可能性を広げられる?

ゆぴさん

そうですね。私は、発信とは”ボトルメール”だと思っています。実際に書いたものをネット上に乗せることで、いつか誰かの元に流れ着く。

新妻

ボトルメール。

ゆぴさん

たとえば、『書く習慣』のベースになった私のnoteのマガジンは、執筆していたのが2020年の5月~6月くらいでした。でも、それを読んだ出版社の編集さんが連絡をくれたのは、12月頃だったんです。

つまり、”ボトルのなかに入ったメール”をネット上に置いておけば、勝手に広がって、誰かが拾ってくれる可能性がある。

それが結果的に仕事につながることもありますし、似たような考えを持つ仲間が増えていくこともあると思っています。

新妻

発信していれば、どこかで誰かが読んでくれるかもしれないと。

ゆぴさん

そうです。それに、誰かが読んでくれることで「呪いが解ける」こともあります。

新妻

呪いが解ける??

ゆぴさん

以前、HSP(※)にまつわる記事を書いたんですよ。実は私もHSPで、それまで些細なことに驚いたり、すぐに泣いたりしてしまうことに変なコンプレックスを持っていて。

でも、その記事を読んだ人から「自分と同じ人がいると知って、救われた気持ちになりました」とコメントをいただいたときに、自分のコンプレックスが肯定されたように感じたんです。すごくうれしい瞬間でした。

※HSP:ハイリー・センシティブ・パーソンの略。生まれつき感受性が強く、敏感な気質をもつ人

新妻

ゆぴさんのなかで、気持ちが晴れた瞬間だったんですね。

ゆぴさん

文章を書いて「自分はこういう人です!」と表明しておくと、自分と似たような仲間が集まって、自分のコンプレックスがコンプレックスじゃなくなったりする。

だからコンプレックスがある人ほど発信してほしいし、自分の意思や生き方、モットーを発信して、一緒に感動できる仲間と幸せに暮らしてほしいなと思います。

気楽に始めるためには”リターン”を求めず、自分のために書く

「自分が書いた文章を見て、励まされたりする未来があるかもしれない」とゆぴさん

新妻

今回のお話を踏まえて、「文章発信」をするときは何から始めたらいいでしょう?

ゆぴさん

まずはメモをするクセをつけることだと思います。最初は誰にも見せない前提で、自分の思いや感情を言語化する練習をする。

その練習が終わったら発信する、という順番がいいと思います。誰かに見せる前提で書こうとすると、変に格好つけて本音が言えなくなってしまうから。

新妻

発信するときに意識することは?

ゆぴさん

私がTwitterで意識しているのは、とにかく140字マックスで書くこと。ひとつの事柄を140字に広げるのって、意外と大変なんですよ。

でもそうやって140字で書こうと試行錯誤するようになると、日常で起きたことに対して「なんでこう思ったんだろう?どうしてなんだろう?」と”問いかけグセ”がつくようになって、深堀りできるようになっていきます。

新妻

書くときも、発信するときも、まずは”クセ”をつけることが大事なんですね。

ゆぴさん

そうですね。最初は、仕事やお金など、無理やり何かにつなげようと思わないことが大事なのかなと。

何ごとも結果につなげようと思うから、腰が重くなるんですよね。

新妻

あー、よくあります……。結果を気にしすぎて、動けなくなる。

ゆぴさん

でも、リターンを求めずに「自分のために書く」と決めると、気楽に始められるんじゃないかなと思います。

それにみんな、仕事の資料を作ったり、メールを書いたり、友だちにLINEしたり……日常的になんとなく文字を書いているじゃないですか。

だからベースのスキルは誰もが絶対に持っているはず。あとはハードルさえ下げれば、「書くこと」でいろんな可能性を広げていけると思います!


Photo:樋川こころ

文章発信をはじめる費用

メモ帳1000円前後
日記帳
2000円前後

※上記はあくまで参考です。 趣味のために貯金する!

「はじめての文章発信」先生の紹介

本日の講師いしかわゆき(ゆぴ)
Twitterhttps://twitter.com/milkprincess17
notehttps://note.com/milkprincess17

早稲田大学文化構想学部 文芸ジャーナリズム論系卒。Webメディア・新R25編集部を経て2019年に独立。取材やコラムを中心に執筆するかたわら、声優やグラフィックレコーダーとしても活動。著書に『書く習慣~自分と人生が変わるいちばん大切な文章力~』。生きづらい世界をいい感じに泳ぐために日々発信中。

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