【はじめての美術館】歴史と向き合う贅沢な時間を。「疲れた時こそ美術館がおすすめ」な理由【はじめてをはじめる #28】

生活

【はじめての美術館】歴史と向き合う贅沢な時間を。「疲れた時こそ美術館がおすすめ」な理由【はじめてをはじめる #28】

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やってみたいけれど一歩踏み出せない、新しい趣味を見つけたい。そんな人の背中をそっと押す企画「はじめてをはじめる」。

今回のテーマは「美術館」です。

美術館には、年1〜2回行く程度。旅行先で観光の一環として行くか、疲れやストレスが溜まって「静かな空間でぼんやりしたい……」と思った時にふらりと訪れるかのどちらかです。

いつもなんとなく順路通りに作品をざっと眺めて終わりなので、「改めて、美術館の楽しみ方を知りたい」と思いました。

そこでまずは「美術館」について調べてみることに。

美術館について調べてみた

「美術館」は博物館(※)の一種で、主に美術作品を収集・保存・展示し、それらの文化に関する教育・普及・研究を行う施設、とのこと。

つまり、博物館という大きなカテゴリの中のひとつが「美術館」なんですね。

(※博物館=歴史、芸術、産業などに関する資料を収集・保管・展示・調査研究を行う機関)

ちなみに、「美術館」は研究を行う施設ですが、「ギャラリー」は作品の展示がメインで、研究を行う施設ではない、という違いがあるそう。

「研究施設」と聞くと若干敷居が高く感じますが、実は守るべきマナーや決まりがいろいろとあるんだろうか……?

気になったので、美術ブログ「青い日記帳」を主宰し、『いちばんやさしい美術鑑賞』『カフェのある美術館』など美術関連の著書も多数執筆されている、美術ブロガーのTak(タケ)さんにお話を伺いました。

会話や撮影はOK?美術館で過ごす際のマナー

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

中村

美術館で過ごす際に守るべきマナー、気をつけなければいけないことはあるんでしょうか? 個人的には「会話はNG」というイメージがあるんですが……。

Tak

いえいえ、そんなことはありませんよ。
大声を出したり美術館とは関係のない話を延々としたりすると、他の方の鑑賞の妨げになってしまいますが、普通に会話するくらいならまったく問題ありません。
「こっちの作品の方が好き」「この絵いいね」など感想をシェアしながら見ると、より楽しめます。

中村

え、そうなんですね! シーンとしているので、暗黙のルールとしてしゃべったらダメなのかと思っていました。

Tak

ただ、最近はコロナの感染防止の観点から館内での会話が禁止されている美術館も多いので、その点は気をつけていただきたいです。
あとは、会話OKとは言え静かな空間なので、足音が響きやすい靴は避けたほうが無難かと思います。

中村

静かな場所で自分の靴の音が響くと気まずいですからね……ヒールの靴は避けます。
あと、海外の美術館だと作品を撮影していいところも多いですが、日本だと撮影NGですよね?

Tak

最近は日本でも、SNSでの宣伝の意味も兼ねて、作品を撮影できる美術館は増えています。
ただし撮影できる作品が限定されている場合もあるので、しっかりと確認してから撮るようにしましょう。

中村

撮影時に気をつけたほうがいいポイントはありますか?

Tak

シャッター音を気にする人もいるので、消音のカメラアプリを使ったり、撮影時にはスマホのスピーカー部分を押さえたりするといいかもしれません。
あとは、美術館の醍醐味は自分の目で作品を見ることなので、撮影に夢中になりすぎて自分の目で作品を見るのを忘れないように……というのも、気に留めていただきたいポイントです。

これがあれば鑑賞をより楽しめる!便利アイテム

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

中村

鑑賞時に持っておくと便利なアイテムってありますか?

Tak

持っておくと便利なのは「手持ち用の軽いバッグ」。寒がりな方は「薄手の上着」を持っていくといいですよ。
あとは、「筆記用具」「単眼鏡」があると、鑑賞の楽しみ方の幅がより広がります。

【便利アイテム一覧】

手持ち用の軽いバッグ(サコッシュ、エコバッグなど)
薄手の上着
筆記用具(作品保護のためインクが出るものはNG、原則鉛筆のみ。美術館でも借りられる)
単眼鏡(双眼鏡やオペラグラスでも可)
中村

「手持ち用の軽いバッグ」というのは?

Tak

美術館には必ずコインロッカーがあるので、大きな荷物はそちらに預けて、軽いバッグに貴重品と最低限の荷物だけを入れて持ち歩くのがおすすめです。
小さなカバンならそのまま持ち込んでも問題ありませんが、大きな荷物を館内に持ち込むと他の方の鑑賞の妨げになる場合があります。もし大きな荷物(特にリュック)が作品に当たり破損させてしまったら、それこそ大変です。
それに、身軽なほうが歩き周りやすいですしね。

中村

確かに、大きな荷物を持って歩き回るのって疲れますもんね。
「薄手の上着」は、私も持参するようにしています。美術館ってなぜか寒い場所が多いですよね。

Tak

美術館では作品保護のために、空調を効かせて温度・湿度とも常に一定に保つようにしているんです。寒がりな方は上着がマストですね。逆に、暑がりな方にとってはすごく快適な空間だと思いますよ。

中村

作品保護のためだったんですね! 夏は美術館に涼みに行くのもよさそうです(笑)。
「筆記用具」「単眼鏡」は、あるとより鑑賞を楽しめるアイテムとのことですが……筆記用具って何に使うんでしょうか?

Tak

「筆記用具」は気に入った作品の感想などを書き留めるのに使います。私は館内で配布している「作品リスト」に書き込むようにしています。
メモをせず眺めるだけでも構いませんが、作業をしながら巡ったほうがより楽しくなりますし、自分が好きな作品を覚えておきやすいんです。

中村

あとは「単眼鏡」ですが、直に目で見るのとは随分違うんでしょうか。

Tak

単眼鏡を通して実際に目で見ていた時には見えていなかった細部を見ていくと、たとえ見慣れた絵画であっても新たな気づきを得られるんです。
初心者から一歩進んだ方向けのアイテムですが、あるとより鑑賞を楽しめますよ。

事前知識は不要!自分なりの楽しみ方を見つけよう

中村

初心者が見に行く展覧会を選ぶ際、どんなポイントで選ぶのが良いのでしょうか。「まずはこの画家を見ておくべし!」みたいなおすすめはありますか?

Tak

最初はあまりこだわらずに、ネット等で見かけて気になったものを見に行くのがいいんじゃないでしょうか。
どうしても選べないなら、人気の展覧会から選ぶのもいいと思います。幅広い人に人気がある展覧会は、美術に詳しくない人でも楽しめるものが多いので。

中村

美術館に行く前に、画家さんのプロフィールや歴史背景なんかを調べておいたほうがいいんでしょうか。

Tak

まったく何も知らない状態でふらりと行っても十分楽しめます。調べるにしても、美術館のサイトを眺める程度でいいと思います。
まずは実際に足を運んでみて、自分がどの作品をいいと感じるかを体感してみる。そこで興味が湧いたら調べてみる……という流れでいいんじゃないかなと。最初から無理に知識を入れる必要はありません。

中村

鑑賞の際のポイントはありますか?

Tak

美術館では、館内に「順路」が掲示されているのですが、必ずしも順路どおりに見なくても構いません。
混んでいる場合、順路通りに進もうとする人々が列になってぞろぞろと歩いている……なんて光景が見られますが、順路を守らなければいけない決まりはありません。気にせず自分のペースで見るのがおすすめです。

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

中村

好きな順番で見てもいいんですね!
作品を鑑賞する際には、Takさんはいつもどんな風に観ているんですか?

Tak

まずは作品から少し距離を取り、全体を眺めます。
次にもう少し見る範囲を狭めて、上の方から順を追うようにして、どんな色が使われているのか、何が描かれているのかなどを見ていきます。
気になる箇所や心に引っかかるものがあれば、作品に近づき、じっくり眺めます。単眼鏡を使うタイミングはこの時ですね。

中村

なるほど……。近くでじっくり見たくなるような「心に引っかかる作品」って、ひとつの展覧会でどのくらいあるものなんですか?

Tak

1〜2つあればいい方ですね。ゼロの時もありますが、それはそれでいい。
何度も展覧会に足を運ぶ中で、「自分はこういうものが好きなんだ」というのが見えてきます。
無理に心に引っかかるものを探さなくても、「1番かわいい動物が描かれている絵を見つけよう!」など自分なりの楽しみ方をするのもおすすめです。

初心者でも楽しみやすい、おすすめ都内美術館

中村

美術館にあまり行ったことがない初心者が足を運ぶのにおすすめな、都内の美術館を教えてください!

Tak

わかりました!
おすすめの美術館はたくさんありますが、3つに絞ってご紹介しますね。

【古代・印象派・20世紀美術など多種多様】アーティゾン美術館(東京・京橋)

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

Tak

「アーティゾン美術館」は、「ブリヂストン美術館」から館名を変更して建物も建て直し、2020年1月に新しくオープンした美術館です。
古代美術・印象派・日本の近世美術・日本近代洋画・20世紀美術など、古いものから新しいものまで幅広いジャンルの作品が揃っています。
美術館が所蔵している作品も多いので、コレクション展示を見るだけでも楽しめます。

中村

幅広いジャンルの作品を一度に見られるのはいいですね!

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

Tak

また、美術館の公式アプリをダウンロードすれば音声ガイドを無料で聞けます。自身のスマホとイヤホンが必要ですので、音声ガイドを使いたい場合は忘れずに持参してくださいね。
音声ガイドは作品の解説が聞けるもので、有料で貸し出ししている美術館がほとんどです。作品の時代背景などを詳しく知れるので、初心者の方がより作品鑑賞を楽しむ手助けになります。

画像提供:石橋財団アーティゾン美術館

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【アーティゾン美術館】

開館時間:10:00〜18:00、金曜日〜20:00(入館は閉館の30分前まで)
料金:展覧会により異なる
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し翌平日は振替休日)、展示替え期間、年末年始

※日時指定予約制、学生無料(要予約)
※入館方法などの最新情報は公式ウェブサイトでご覧ください
https://www.artizon.museum/
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【日本・東洋作品多数】東京国立博物館(上野)

画像提供:東京国立博物館

Tak

日本を中心とする東洋の美術作品と考古遺物を収蔵している博物館です。
「本館」では常にものすごい量の日本美術が展示されています。その他、特別展や考古展示がある「平成館」、中国・東南アジア・インドなどの作品を展示している「東洋館」、法隆寺の宝物が展示されている「法隆寺宝物館」など展示館も複数あります。

中村

かなり広い博物館なんですね!

画像提供:東京国立博物館

Tak

テーマパークのような感じですね。全部を見てまわろうとすると、1日がかりになると思います。
展示をよりよく見せるために、ライティングなどいろいろな工夫をしているのも特徴です。明治から続く歴史ある博物館ですが、古臭さを感じさせないのは常に改良を重ねているからだと思います。

画像提供:東京国立博物館

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【東京国立博物館】

開館時間:9:30~17:00
料金:一般 1,000円
休館日:月曜日(ただし月曜日が祝休日ならびに2022年1月3日(月)は開館、翌
平日休館)、年末年始、その他臨時休館あり
※入館方法などの最新情報は公式ウェブサイトでご覧ください
https://www.tnm.jp/
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【西洋美術】三菱一号館美術館(東京・丸の内)

画像提供:三菱一号館美術館

Tak

19世紀末の西洋美術を中心に展示しています。先ほど紹介した2館に比べると作品数は少なくコンパクトな美術館で、常設展はなく特別展のみです。
赤煉瓦の建物は、三菱が1894年に建設した「三菱一号館」(ジョサイア・コンドル設計)を復元したもの。昔の図面を忠実に再現したので、明治の雰囲気をそのまま味わえる造りになっています。

中村

これが、明治時代のオフィス……洒落た造りですね!

画像提供:三菱一号館美術館

Tak

元々オフィスだったこともあり、部屋が細かく分かれているのが特徴です。
小部屋を巡って作品を見ていると、まるで貴族の邸宅にお邪魔してコレクションを見ているような楽しさがあります。

画像提供:三菱一号館美術館

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【三菱一号美術館】

開館時間:10:00〜18:00 ※夜間開館の日あり
料金:展覧会により異なる
休館日:毎週月曜(祝日・振替休日・展覧会会期中最終週の場合は開館)年末、元旦、展示替え期間
※入館方法などの最新情報は公式ウェブサイトでご覧ください
https://mimt.jp/
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自宅から作品鑑賞!オンライン鑑賞におすすめの海外美術館

ルーブル美術館(筆者撮影)

中村

最近はオンライン鑑賞を始める美術館も増えていますよね。オンライン鑑賞におすすめの海外美術館を教えてください!

Tak

メジャーなところだと、「メトロポリタン美術館」「ルーブル美術館」ですね。
操作性がよくて見やすかったのはオランダの「マウリッツハイス美術館」です。個人の邸宅を美術館にしているところで、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が所蔵されています。
あとは、世界各国の美術館の作品を見られるGoogleのサービス「Google Arts & Culture」もおすすめです。

【オンライン鑑賞・海外美術館】

メトロポリタン美術館https://www.metmuseum.org/art/online-features/met-360-project
ルーブル美術館https://www.youvisit.com/tour/louvremuseum
マウリッツハイス美術館https://sc9bfffn178962304b143b28d.s3.amazonaws.com/web/15w711q611s9j52975020417b270ea6/15p2n2y656781429732885586bf05d7_en.html?startscene=21
Google Arts & Culturehttps://artsandculture.google.com
中村

ちなみにTakさんはオンライン鑑賞は利用されますか?

Tak

ステイホーム期間にはよく見ていました。
遠方の美術館の作品を家にいながら鑑賞できるのは、特にコロナ禍においては素晴らしい取り組みだと感じました。でも、「本物を見に行きたいけど行けない……」と複雑な気持ちにもなりましたね(笑)。
美術館の雰囲気も楽しみのひとつなので、やはり美術館にも足を運びたいなと、改めて思いました。

疲れている時こそ美術館。自分なりの楽しみ方を見つけて欲しい

中村

Takさんが美術館にはまったきっかけを教えてください。

Tak

大学時代に、授業中の雑談である先生が「東京には歌舞伎やオペラ、美術などあらゆる文化が集まっています。せっかくならたくさん触れておきましょう」と仰っていて、試しに美術館に行ってみたのが始まりです。
事前予約は必要なく、行く時間も決まっていない。自分のペースで気軽に行けるのがいいなと思い、よく美術館に行くようになりました。

中村

そこからハマっていったんですね。現在は、美術館にはどのくらいのペースで通っているんですか?

Tak

年間3〜400ほどの展覧会に足を運んでいます。会社員なので休みの日に行くことが多くて、1日で5〜6件などまとめて巡ります。
ちなみに、金曜日の夜にはいつもよりも遅くまで開館している美術館も多いんです。週末と比べると混雑しないのでおすすめですよ。

アンジュルム元メンバー&美術関連の著書も執筆されている和田 彩花さんとのイベントでの一幕

中村

今や美術ブログ「青い日記帳」を主宰する有名アートブロガーとして、コラムや著書も多く手がけていますが、Takさんが思う美術館の一番の魅力は何ですか?

Tak

「非日常」が味わえるところです。
多くの人は「やらないといけないこと」を抱えながら生きていますよね。でも、たまにはそれを忘れて過ごしたい。そんな時には、美術館がおすすめです。
日常から離れて、快適な温度・湿度が保たれている静かな空間で、何百年もの時を経てきた作品と向かい合うと、リフレッシュできます。疲れている時こそ美術館をおすすめしたいですね。

中村

日常から距離を置いてリフレッシュする時間って大事ですよね。

Tak

今回、私なりのおすすめの見方や巡り方をお伝えしましたが、あくまで一例です。
「こうやって鑑賞しなければいけない」なんて決まりはありません。
1,500円前後の入館料で1日中館内にいられますし、本を持参して作品の前のベンチで読書してもいい。ぜひ気軽に美術館に足を運んで、自分なりの楽しみ方を見つけていってもらいたいですね。

美術館をはじめる費用

入館料1,500円程度(美術館により異なる)
単眼鏡5,000円程度〜

趣味のために貯金する

「はじめての美術館」先生の紹介

本日の講師Tak(タケ)
ブログhttp://bluediary2.jugem.jp/
Twitterhttps://twitter.com/taktwi
Facebookhttps://www.facebook.com/bluediary2/
Instagramhttps://www.instagram.com/taktwi/

Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰する美術ブロガー。
展覧会レビューや書評をはじめ、幅広いアート情報を毎日発信している。
東京都美術館やブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)の公式サイト、goo「いまトピ」、朝日マリオン・コム「ぶらり、ミュージアム」、など多くのメディアにコラムを寄稿。ギャラリーや書店、カルチャーセンターでのトークショーも多く行っている。

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