【はじめてのお香】落ち着きたいとき、疲れたとき。そっと火をつければ、たちまちリフレッシュ。【はじめてをはじめる #27 】

生活

【はじめてのお香】落ち着きたいとき、疲れたとき。そっと火をつければ、たちまちリフレッシュ。【はじめてをはじめる #27 】

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知人が、「イライラしたときはセージのお香を焚いてリフレッシュする」と話しているのを聞きました。お香は、お土産やちょっとしたギフトでもらったことがあるものの、強烈な匂いばかりが印象的。そこまで気持ちに作用するものという認識がなかったので、「お香って、本当にリフレッシュにいいのかしら……」といささか疑問に思いました。そこで、お香について調べてみることに。

お香について調べてみた

お香とは、木や木の実、蕾、葉や茎を原料として作られ、主に火をつけたり、温めたりして香りを楽しむもの。仏教の伝来と共に日本に伝わり、神仏に参るときに使うことから始まった、歴史の深いものだそうです。原料が自然由来で、香りを楽しむものという点は、アロマオイルと似ている気がします。

お香ならではの特長や魅力はどんなものなのでしょう。詳しく知りたい!ということで、香りのプロフェッショナルとして手作りお香講座を開催したり、お香についての著書を出したりと活躍中の石濱栞さんに取材を依頼しました。

香りを楽しむ粋な趣味。かつては貴族の遊びだった

佐藤

お香の原料は植物なんですよね?どんなものが使われているんですか?

石濱

私が専門としている和のお香は、「沈香(じんこう)」と「白檀(びゃくだん)」という香木が主原料です。どちらかをベースに作られているものが多いですね。原料の30~50%ほどが香木で、そこに乾燥させたさまざまな植物の葉や根を混ぜて作ります。

佐藤

例えばどんな植物がありますか?

石濱

ケイヒ(桂皮)、カッコウ(藿香)、サンナ(山奈)、カンショウ(甘松)、ダイウイキョウ(茴香)など。私がお香づくり講座を開くときは、13~14種類ほど用意します。

佐藤

混ぜる植物の種類や、量によって、香りが変わるんですか?

石濱

そうです。少し配合を変えただけでも、まったく違う香りに仕上がるので、おもしろいですよ。

佐藤

お香は、宗教と大きく関わるイメージがありますが、歴史は長いんでしょうか。

石濱

そうですね。お香は、日本には仏教と一緒に入ってきたというのが有力な説です。経典を見ると、香木にそのまま火をつけていたのではないかと思われます。焼香として使われていたんです。

佐藤

今のように、香木とその他の植物を混ぜたお香になったのはいつぐらいなんでしょうか?

石濱

奈良時代に鑑真和上(がんじんわじょう)が日本に来た際、持参品目録のなかにお香の原料がいろいろと入っていたそうです。それから、調合をしてお香を作る文化が広まりました。最初は、貴族が家同士でどちらの香りが良いかを競う遊びを楽しんでいたんだとか。

佐藤

うわぁ、香りを競い合うなんて、なんだかすごく貴族っぽい遊びですね。一般庶民にまで広まったのはいつ頃ですか?

石濱

江戸時代頃と言われています。それまでは仏教は位の高い人だけのものだったのですが、庶民にも広まったのがその頃で、同時にお香も普及していきました。当時の女性の嗜みについて書かれた本に、お香の解説が書かれているんですよ。

佐藤

へぇ!お香は花嫁修業の一つのようなものだったんですね。やはり女性を中心に楽しむものだったんですか?

石濱

実はそうでもないんです。武士が着物の袂にお香が入った匂い袋を入れて持ち歩くというのが、嗜みだったんだとか。武士が通ると、袂が揺れていい匂いがすることを「追い風用意」と呼んでいました。

佐藤

え、武士がですか。香水のような感覚で使っていたんでしょうか?

石濱

お香は嗜好品ですから、まだ高価なものだったんですね。いわば、権力の象徴。お香を香らせることで、権力をアピールしたのではないかと思います。

佐藤

なるほど。歴史を知ると、ますます興味がわきますね。

石濱

そうですよね。

佐藤

原料が植物とのことですが、アロマもそうですよね。同じように香りを楽しむものですが、アロマとは何が違うんでしょうか?

石濱

アロマは植物から抽出したエキスが原料で、お香に使うのと同じものが入っている場合もあります。だから、似た効果も期待できると思います。違うのは、アロマは香りの変化がほとんどないという点です。

佐藤

香りの変化?お香はあるんですか?

石濱

お香は、常温のままと、熱を加えた場合とで香りが変わるんです。熱した方が香りの魅力が増します。 それに、置いておくと植物が熟成して、香りが変化します。作りたてと、数カ月後経ったものとでは香りが違うんですよ。深みが増すというか。

佐藤

そうなんですか!知らなかったです。おもしろいですね。

心が落ち着く理由は、科学で証明された鎮静効果

佐藤

お香を焚くとリラックスできると聞きました。なぜなんでしょうか?

石濱

お香には、先ほどお話した香木を使った「香木香(こうぼくこう)」のほかに、人工香料を使った「香水香(こうすいこう)」があるんですね。香木香の方はリラックス効果が期待できますが、香水香の多くは、気分が上がるものが多いと思います。

佐藤

ということは、リラックスしたい場合は天然の原料が使われた香木香の方を使うといいんですね。

石濱

香木香に使われる原料は、多くが漢方にも使われるような植物ばかり。なかでも、沈香は赤ちゃんの夜泣き薬にも使われるもので、鎮静効果が科学的に証明されているんです。

佐藤

気持ちが落ち着く作用ってことですね。

石濱

はい。私自身も、沈香の香りが好きでよく焚くのですが、心が穏やかになっていくのを感じます。

佐藤

そうなんですね。イライラすることが多いので、私も試してみようかな……。寝る前に使うのも良さそうですね。

石濱

最近、沈香について調べる人が増えているそうなんです。私のところにも、沈香のお香を作れるかという問い合わせが来ることが多くなって。正しくはわかりませんが、コロナ禍で不安感を覚える人が増加して、心を落ち着かせるために使おうとしているのかなと。

佐藤

そうかもしれませんね。皆さん、いろんなリラックス法を探しているでしょうから、そのうちの一つとして沈香が注目されているのかもしれません。

石濱

さっき、香木香に使われる原料は漢方に使われているものが多いと話しましたよね。

佐藤

はい。

石濱

だからなのか、お香を作ったり、焚いたりしていると、内臓の働きが活発になるようで、お腹がごろごろと動き出すことがあるんですよ。

佐藤

え、漢方って嗅ぐだけでも効果が!?

石濱

きっとそうなんじゃないかなぁと、私は日々実感していますよ。

佐藤

ちなみに、もう一方の香水香とは原料や効果以外に違いはありますか?

石濱

値段が違いますね。香木香はちゃんとしたものを買おうとしたら3000~5000円くらいします。でも、香水香の方は、たくさん入って1000円とか、比較的安価です。

佐藤

あ、あのアジアン雑貨屋さんに売っていたりする、カラフルなものがそうですか?

石濱

そうです、そうです。香水香の方が香りが強くて見た目もカラフルで、わりとよく見かけるので、お香というとそちらをイメージする人が多いかもしれませんね。

佐藤

私はずっとそうだと思っていましたが、種類があるんですね。

石濱

天然素材からできた香木香は、そこまで香りが強くありません。だから、人工香料の香水香の方に慣れている人は、物足りなく感じることもあるようです。

掃除後、来客前、休憩タイム。お香で空間に変化を

佐藤

お香を使うのに、おすすめのシーンはありますか?石濱さんはどんなときに使っているのでしょう?

石濱

一つは、掃除の後。窓を開けてお香を焚きながら、空気を循環させるんです。白檀には殺菌効果もあるので、スッキリしますよ。

佐藤

殺菌効果!それはいいですね!

石濱

あとは、心をリセットしたいとき。儀式的な感じで、部屋の明かりを落として、静かに座って香りを楽しんだり、流れる煙を見たり。とても神聖な気持ちになります。

佐藤

沈香のお香を使うと良さそうですね。

石濱

軽めというよりは、深めのリラクゼーション。瞑想に近い感じかも。スティック状の14cmのものだとだいたい25分くらい火がついているので、その時間だけ、心を落ち着かせます。

佐藤

心を無にして、マインドフルネスな状態になれそう。時間が短過ぎず、長過ぎないのもいいですね。

石濱

あとは、来客前にもよく使います。スティック状のものは細く長く香りが広がるのですが、コーン状のものはだいたい10分くらいの短い時間で一気に香りが広がるので、約束の時間の10分前に焚き始めて、お客様には残り香を楽しんでもらいます。

佐藤

香りのおもてなしですね。ステキ。お客様の好みなどで香りを変えたりするんですか?

石濱

そうですね。あとは、何をするのかにもよります。仕事の打ち合わせのときなどは、眠くなる香りは避けますし、リラックスした雰囲気を出したいときは、それに適した香りを選びます。

佐藤

先ほど、武士が匂い袋を持ち歩いていたとうかがいましたが、火をつけて楽しむもの以外で、お香にはほかにどんなタイプがあるんでしょうか?

石濱

お香には、燃やすもの、あたためて使うもの、常温で使うものの3タイプがあって、後者2つはやさしい香りです。

佐藤

あたためて使うものもあるんですね。

石濱

はい。代表的なものが、印香(いんこう)、練香(ねりこう)で、香炉に置いて間接熱で暖める「空薫」という方法で焚きます。常温で使うタイプの一つには、塗香(ずこう)という粉末状のものがあるんですが、これを持ち歩く人が最近増えています。

佐藤

どうしてですか?

石濱

塗香(ずこう)は、もともと修行僧が身の穢れを取り除くために、体などに塗って使われていたんですね。コロナの影響で社寺の手洗い場が使えないところが増えていますから、水で清める代わりに、塗香(ずこう)を手にすり込むんです。

▲印香(いんこう)

▲練香(ねりこう)

▲こちらが、塗香(ずこう)

佐藤

へぇ!そうなんですね。

石濱

いい香りなので、香水代わりにも使えますよ。

佐藤

匂い袋を、武士のように香水の代わりに使うのもありですね。

石濱

匂い袋は、持ち歩けるタイプのものもありますが、壁に掛けるもの、防虫のためにタンスなどに入れて使うものなど、いろいろな種類があります。

▲スタンダードな匂い袋

▲吊るすタイプの匂い袋

▲防虫香

佐藤

虫を寄せ付けないために香りを使うんですね。蚊取り線香もそうですよね。白檀の殺菌効果もそうですが、香りを楽しむだけでなく、実用的な使い方もできるんですね。

香炉(耐熱皿)と灰さえあればOK。お香を試してみよう

佐藤

お香を始めてみようと思ったら、お香以外に何を揃えればいいでしょうか?

石濱

少し深めの香炉(耐熱皿)と、灰を用意してください。耐熱皿の場合は小鉢のようなもので十分です。灰は、わら灰や珪藻土の灰がホームセンターなどで売っていますから、それを使ってください。

佐藤

小皿にお香を立てる「香立て」を置いて使うのかなと思っていました。

石濱

それでも良いのですが、お香の天然成分が香立てについてしまって、私はそれを洗うのが面倒だったりして。灰の上に置く方がお手入れが楽です。

佐藤

そうなんですね。コーン型とスティック型とどちらがいいんでしょうか。

石濱

どちらでもOKです。燃えている時間がコーン型は短め、スティック型は長めなので、お好みの方を。ただし、スティック型を使う場合は、半分に折るなどして寝かせて使うと良いですよ。

佐藤

え、灰に縦に刺すのではなく?

石濱

そうすると、刺さっている部分が燃え残りますよね。その燃えカスがくすぶったままで火災の原因になることもあるんです。

佐藤

わぁ、そうですか。気を付けます。赤ちゃんやペットがいるところでは使わない方がいいでしょうか?

石濱

具体的なデメリットは正直聞きませんが、私は子どもが小さいときはお香は別の部屋で焚くようにしていました。ペットも同様です。

▲スティック型

▲コーン型

佐藤

わかりました!お香は、どこで買ったらいいんでしょうか。

石濱

ぜひお香専門店に行ってみてください。

佐藤

専門店!あまり見かけませんが、結構あるものなんでしょうか?

石濱

最近、お香の人気が高まっているので、意外とたくさんありますよ。検索をしてみてください。

佐藤

専門店だとやはり品揃えがいいんでしょうか。

石濱

それもありますが、なかには試し焚きをさせてくれるところもあるので、失敗しなくて済むんです。

佐藤

試食とか試着みたいに、試焚ができるんですね!

石濱

お香は、そのままの香りと焚いたときの香りが違うことが多いので、試し焚きをして買うのがおすすめです。

佐藤

そこで気に入るものが見つかったら、後はオンラインショップで買ってもいいわけですもんね。初回は、専門店に行ってみたいと思います。このあたりのお店はいかがでしょうか?

香源東京のお香・お線香・数珠専門店 香源 銀座本店 | トップページ (okoh.co.jp)
香十香りを紡ぐお線香とお香 | 香司 香十 (koju.co.jp)
香雲堂お香製造販売 - 香雲堂 [東京] (koundo.com)
薫物屋香楽https://www.m-karaku.com/
石濱

良いと思います!ぜひ足を運んでみてください。

佐藤

ちなみに、お香に火をつけるとき、マッチとライターどちらを使っていますか?

石濱

私は雰囲気ごと楽しみたいので、一度ロウソクに火をつけてから、それでお香に火を移しています。

佐藤

なるほどー!丁寧な感じがします。ライターで直接だと、ちょっと味気ないですもんね。

目に見えない、正解のない香りの世界に惹かれて

佐藤

石濱さんは、どうしてお香に興味を持ったんですか?

石濱

きっかけはお寺なんです。お寺が好きでよく巡っていたのですが、私が雰囲気がいいなと感じるお寺って、必ずいい香りのお香が焚かれていて。

佐藤

そうなんですか。お寺好きから入ったんですね。

石濱

祖父が亡くなったときに来てくれたお坊さんが、すごくいい香りの焼香を持って来たんですよ。あまりにも香りが気に入ったので、「これ、何の香りですか?」と聞いたら、「沈香ですよ」と。それで、自分でも作ってみたいなぁと思ったんです。

佐藤

思わずたずねてしまいたくなるくらい、好みの香りだったんですね。

石濱

それで、お香を手作りできるところを探して通い始めて。すっかりハマってしまいました。

佐藤

趣味で続けるのはわかりますが、資格を取って人に教える立場になり、お香をお仕事にしてしまうってすごいことじゃないですか?

石濱

すっごく楽しくて大好きになったので、単純にこの楽しさを伝えたい!って思ったんですよ。最初は親しい人にだけ教えられたらいいと思っていたんですが、当時お香を教える人は珍しくて、広まってしまって、いろんな人に教えるようになりました。

佐藤

お香のどんなところが魅力ですか?

石濱

正解がないところ。調合するものの種類や量で出来上がる香りが全然違うので、幾通りにも香りが生まれるんです。そしてそのどれも、間違いじゃない。いつも、これを混ぜたらどんな香りになるだろうと、実験みたいに楽しんでいます。

佐藤

実験!確かに、そういう感じですね。

石濱

いつも生徒さんたちがそれぞれが違う香りを作るんですが、私が思いもよらないような組み合わせをする人もいて、それがすごくおもしろいですね。

佐藤

今後、お香を通してやりたいことはありますか?

石濱

昔は、家でおばあちゃんやおじいちゃんが線香をつけて仏壇に手を合わせるような風景が当たり前にありましたよね。それは大切にしないといけない日本の文化だなと思っていて。でも、今は核家族が増えて仏壇がある家も少なくなっています。

佐藤

そうですね。

石濱

お香を好きになって、その背景にある日本の文化を知ることができたので、それを若い世代にも伝えていけたらいいなと思っています。

佐藤

お香の初心者に、メッセージをいただけますか?

石濱

私はお香に触れるようになってから、心が穏やかになったことを実感しています。まわりから「顔つきが変わったね。やさしい顔になった」と言われるくらい。

佐藤

そんなにも変化したんですね。

石濱

ただでさえストレスが多い世の中で、さらにコロナ禍で心を病む人が増えていますが、病んでしまう前に、日常で気持ちをリセットする方法を見つけてほしいなと。お香の煙で、嫌なことを流してしまう、そんなイメージで取り入れてみてください。

佐藤

ありがとうございます!私も早速、専門店に行って沈香を手に入れて、瞑想しながら香りを楽しんでみたいと思います!

お香をはじめる費用

香木香タイプだと、3000円程度。耐熱皿は100円ショップでも購入可能。灰は500円~1000円程度で入手可能。

お香のために貯金する

「はじめてのお香」先生の紹介

本日の講師石濱栞
Instagramhttps://www.instagram.com/ishihama_shiori/
ブログhttps://profile.ameba.jp/ameba/tedukuriokou

香司。2010年にお香の世界へ入門。お香の調合の専門家を養成している薫物屋香楽香司コースを経たのち「世界で一つ、自分だけの“お香”手作り講座」をスタート。2016年には教授資格も取得する。また、数々のお寺でのイベントも手掛け、幅広く活躍。2014年7月には、名古屋市にあるお寺の坊守(ぼうもり)となる。2011年から「お香の作り方講座」を開催。

著書「ゆらゆらじんわりお香ぐらし~自分らしく生きる贅沢時間の過ごし方」

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