【はじめてのレコード】針を落とす瞬間のドキドキ感。曲を聴くだけじゃない、レコードの魅力とは? 【はじめてをはじめる #22】

生活

【はじめてのレコード】針を落とす瞬間のドキドキ感。曲を聴くだけじゃない、レコードの魅力とは? 【はじめてをはじめる #22】

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やってみたいけれど一歩踏み出せない、新しい趣味を見つけたい。そんな人の背中をそっと押す企画「はじめてをはじめる」。

今回のテーマは、「レコード」です。

私は、ジュリーや百恵ちゃんなど昭和の歌謡曲が好きで、YouTubeで聴いたり、たまに歌謡曲BARに足を運んだり。でも、これまでレコードで歌謡曲を聴いたことはありませんでした。せっかくならば、当時と同じ音質で曲を聴いてみたいなぁと思ったのです。

レコードについて調べてみた

レコードとは、樹脂などでできた円盤に、音楽や音声などのを刻み込んで記録したメディアのこと。記録された「音の振動の振幅」を取り出し、「音」を復元して聴く仕組みで、今主流のデジタル配信の音楽とは、まったく違う聴き方だったようです。

古き良き時代の音楽メディアであるレコードには、どんな魅力があるのだろう? 気になった私は、『音楽の黄金時代 レコードガイド 素晴らしき昭和歌謡』の著者で、自身もミュージシャンとして昭和時代を駆け抜けた、タブレット純さんに取材を依頼。お話を聞きました。

生々しさ、ノイズ。レコードでしか味わえない音に酔う

佐藤

今、音楽のほとんどがサブスクなどのデジタル配信で聞かれていて、レコードを全然知らない人も多いと思います。あらためて、レコードとはどんなものか、簡単に教えていただけますか?

タブレット純

「レコード」といって皆さんが思い浮かべるのは、いわゆる「ドーナツ盤」と言われる、昭和30年くらいに出始めた近代的なレコードのことだと思います。

佐藤

正直、それ以外にレコードの種類があることを知りませんでした!

タブレット純

「ドーナツ盤」はEP盤といって、塩化ビニル製のレコードのことです。それ以前、戦前から戦後にかけて作られていたものは、SP盤と呼ばれるもので、陶器製のレコードです。

佐藤

え、陶器でできたレコードがあったんですね。

タブレット純

そうなんです。陶器製なので、重いしデリケートで、落とすとすぐに割れてしまうという特徴がありました。これは、蓄音機を使って聞かれていましたね。

佐藤

EP盤は、蓄音機ではなくレコードプレイヤーで聞くんですよね?

タブレット純

そうです。でも、EP盤もSP盤も、表面に細かい溝があって、そこに針を落とすことで記録された音声を聞く仕組みという点は、同じです。

佐藤

盤に音が振動として記録されているんですよね。なんだか不思議……。レコードの魅力って、どんなところでしょうか?

タブレット純

針と盤が混ざり合って音を発するので、音に生々しさがあります。それに、盤自体が傷付きやすい素材でできているので、それが音に影響するんです。ノイズが混ざったりとか。それがまた味わいになります。

佐藤

ノイズもまた味わい。それがレコードを聞く醍醐味なんですね。

タブレット純

そうですね。新品で買っても、聞き続けると音が変化していきます。中古レコードでノイズが入っていないことはまずありません。デジタルでしか音楽を聴いたことない人にとっては、新鮮かもしれませんね。

佐藤

最近のアーティストで、あえてレコードで音源を出す人もいますよね?

タブレット純

レコードのアナログな音の良さに惹かれて、こだわってレコードを出す人もいますね。確か、クレイジーケンバンドなんかは、よくレコードを出していると思いますよ。

佐藤

へぇ!若手でも、私が好きな藤井風なんかは、CDとは別に限定でレコードを出していて、そういう人もいるんだなぁと。

タブレット純

クラブのDJは、今でもレコードを使ってプレイする人が多いですから、そのためにレコードを出すという人もいますね。

佐藤

レコードの音を気軽に楽しめる場所はありますか?

タブレット純

「名曲喫茶」はどうでしょうか。名曲喫茶は、クラシックのレコードをかけてくれる喫茶店です。私は渋谷の「ライオン」や、国分寺の「でんえん」などによく行きますよ。

渋谷 ライオンhttp://lion.main.jp/
国分寺 でんえんhttps://kbjkitchen.owst.jp/
佐藤

やっぱりそういうところは、いいオーディオで聞けて、音が良いんですか?

タブレット純

そうですね。音もそうですし、70年~80年前の当時の建物そのもので、雰囲気がすごく良いんですよ。

佐藤

レコードの音の味わいや、当時の雰囲気を体感したいなら、そういうところに行ってみてもいいかもしれませんね。

タブレット純

もし歌謡曲を聞きたいのなら、レコードをかけてくれる昭和歌謡酒場や、レコードBARなどもあるので、そちらに行くのもありかなと思います。

存在そのものがアート。ジャケットで楽しむ世界観

佐藤

レコードの良さって、音以外にはどんなところがありますか?

タブレット純

ジャケットですね。レコードのジャケットは、「アート」と言えると思います。

佐藤

アートですか。なるほど。

タブレット純

シングルでもCDよりは大きいですし、アルバムサイズのものだと、顔がすっかり隠れてしまうくらい大きいんですね。そこで表現されている写真やデザインで、曲やアーティストの世界観がわかるんです。

佐藤

それは絶対に配信の音楽では味わえない良さですよね。

タブレット純

タイトルがユニークなものも多いですし、それも含めてジャケ買いの楽しさがあると思います。

佐藤

CDが主流だった時代までは、ジャケ買いも多かったと思いますが、最近は全然ないですよねぇ。

タブレット純

それと、中古レコードの場合、最初に買った人がいて、それが流れついて今ここにある。前の持ち主はいったいどんな想いで聞いていたんだろうと、想いを馳せるのもまた、おもしろさだと思います。

佐藤

確かに。中古レコードだと、落書きが書いてあったりすることもきっとありますよね。そういうのにも、物語を感じますね。

タブレット純

「●●さんへ」と、元の持ち主の名前と歌手のサインが書かれたようなものも結構出回っているんです。

佐藤

そうなんですか!

タブレット純

昔の歌手はキャンペーンで全国をまわって、レコードを手売りしていたので、そういうのはわりと多いんですよ。

佐藤

タブレットさんもそういうものをお持ちですか?

タブレット純

もちろん。一つびっくりしたのが、平尾昌晃さんという有名な作曲家・歌手のアルバムを買ったら、とある作詞家さんへのメッセージとともに、サインが入っていたことがあって。

佐藤

えー!送り主の作詞家さんも有名な方なんですよね?

タブレット純

そうなんです。どういういきさつで私の手元に来たのだろうと。そういうのも中古レコードならではで、おもしろいですよ。

佐藤

レコードを聞くのに、初心者におすすめのプレイヤーはありますか?

タブレット純

そうですね。昔、コロンビアが出していたレコードプレイヤーがあって、しばらくそれしかプレイヤーがない時代があったんですよ。それの復刻版が出ていたはずです。デザインがレトロで、見た目もいいですよ。

佐藤

確かに、かわいらしいですね。少しお安めで、天然木デザインがインテリアに馴染みそうなものも見つけました。

タブレット純

こだわり始めたらキリがないですが、最初は1万円前後くらいのもので十分だと思います。スピーカーを別途接続しないといけないものではなく、そのままで聞けるポータブルプレイヤーが良いのでは。

誰かにとってはゴミの山。されど、私には宝の山

佐藤

レコードは、どこで買うのでしょうか?

タブレット純

昔は古本屋と同じくらいレコード屋があったんですが、すっかり姿を消してしまいました。でも、神保町にはまだレコード屋がたくさん残っています。すごくしっかりと盤質を見てから売っているので、品質も良いです。

佐藤

タブレットさんも神保町にはよく行っているんですか?

タブレット純

以前は、休みのたびに神保町通いをしていましたね。駅の近くに「神田古書センター」というビルがあるのですが、その9階にある「富士レコード社」はSP盤も豊富にあって、レコードマニアが通う店として有名です。

佐藤

そうなんですね!神保町以外にも買えるところはありますか?

タブレット純

地方のリサイクルショップも穴場ですね。1枚100円とか、破格の値段で掘り出し物が置いてあることもあります。

佐藤

リサイクルショップですか。それは意外でした。

タブレット純

30年以上レコードを買い続けていても、まだ知らないレコードがたくさんあって。誰かがいらなくて捨てたゴミの山かもしれないけれど、僕にとっては、宝の山なんですよ。

佐藤

ヴィンテージって、そういうことですよね。古くても価値を感じる人にとっては、宝だという。

タブレット純

そうなんですよね。私は最近、「ディープ歌謡」というジャンルにハマっていて。

佐藤

どういうものなんですか?

タブレット純

全然知らない素人、例えば、どこかの商店会長とか、そういう人が自主製作で出したレコードなんです。

佐藤

へぇ!それはまた、マニアック!オリジナル曲なんですか?

タブレット純

そうです。昔はスターになりたいと夢見る人がたくさんいて、自腹でレコードを作るというのが流行っていました。それで借金をしまくって、身を滅ぼした人もたくさんいるんですけど。

佐藤

知らなかった世界です……。

タブレット純

歌い手は素人なので、決して上手いわけでもないし、曲がいいわけでもない。歌や曲の良し悪しを楽しむというよりは、これはどういういきさつで生まれたものなんだろうとか、ストーリーを想像するのがおもしろくて、聞いているんです。

佐藤

それは、ほんとにディープな楽しみ方ですね……!

タブレット純

もはや、変態の域ですよね(笑)。

佐藤

そういうマニアックなものを、たくさんの中から探すのは、本当に宝探しのようですね。

タブレット純

そうなんです。

佐藤

レコードが売れていたピークの時期って、いつぐらいなんでしょうか?

タブレット純

500万枚近くを売り上げた『およげたいやきくん』のときがまさにそう。昭和50年代ですね。

佐藤

500万枚って、すごいですね。

タブレット純

あの頃は、トリプルミリオンなんかもバンバン出ていましたね。でも、私は昭和50年代の音楽はあまり好みじゃなくて。

佐藤

え、そうなんですか?

タブレット純

私としては、昭和30~40年代がレコードの一番いい時代だったなと思っています。

佐藤

何かおすすめの曲を教えていただけますか?

タブレット純

私が途中で加入した「和田弘とマヒナスターズ」の作品でしょうか。ムードコーラスというジャンルなんですが、私にとってすごく琴線に触れる世界観なんです。

佐藤

年代によっても曲の作風や、ジャンルが少しずつ違うんですね。その違いを比べてみるのも楽しそうです。

聴くうちに好みが見えてくる。お気に入りの作品に出会おう

佐藤

レコードは、どんなふうに選んだらいいでしょうか?

タブレット純

そうですね。全然どんな曲かわからなくても、ジャケットやタイトルの雰囲気で買ってみるのも一つの手だと思いますよ。

佐藤

冒険してみるのもアリですね。

タブレット純

特定のアーティストじゃなくて、作詞家や作曲家で作品を選ぶのも楽しいと思います。

佐藤

当時は、いわゆる職業作詞家、作曲家がたくさんいて、分業で曲を作っていた時代ですもんね。阿久悠さんとか、松本隆さんとか。筒美京平さんとか……。

タブレット純

そうですね。いろいろ聞いてみると、好きだなと思ったものが、同じ人が手がけた作品だったりして。

佐藤

作風のファンになるということですね。タブレットさんも好きな作詞家はいるんですか?

タブレット純

私は万里村ゆき子さんという作詞家の作品が好きですね。売れ線を狙わず、女性のロマンティックな部分を歌っているんですが、とても素敵ですよ。

佐藤

おすすめの曲はありますか?

タブレット純

岩崎宏美さんが歌う「すみれ色の涙」を聞いてみてください。

佐藤

有名で聞いたことがあるような曲も、レコードで聞くとまた違ったふうに聞こえそうですよね。

タブレット純

それこそ「上を向いて歩こう」とか、レコードで聞くと味わいが違うと思います。レコードって、例えば小唄とか、民謡とか、運動会用の曲を集めたようなものとか、あらゆるジャンルがあるので、いろいろ聞いてみるといいと思います。

佐藤

タブレットさんは、しょっちゅうレコードを聞いていると思いますが、ベストなシチュエーションってあったりしますか?

タブレット純

家でゆっくり、お酒を飲みながら聞くのが一番至福です。

佐藤

あぁ、それ、最高ですねぇ。

店で選んで、自宅でそっと針を落とす。体験そのものが価値

佐藤

そもそも、タブレットさんはいつ頃からレコードが好きだったんですか?

タブレット純

小学5年生のときです。和田弘とマヒナスターズの曲をラジオで聞いて感動して、レコードを買いたいと思いました。それで、レコード屋に足を運ぶようになって。

佐藤

そうなんですね。まわりの友だちも、そういう子が多かったですか?

タブレット純

いえいえ、全然。歌謡曲が好きでレコードを買う子はいなくて、私はかなり浮いていたと思います。文通を始めてやっと、同じ歌謡曲好きの同世代を見つけられるくらいでした。

佐藤

好みが渋い子どもだったんですね。

タブレット純

当時のお小遣いでは新しいレコードは買えなくて、見るだけのこともしょっちゅう。よく、スーパーマーケットで中古レコード市を開催していたんですが、1枚100円とか、安いものだと3枚300円とかだったので、そこでは駄菓子感覚で買っていました。

佐藤

今、どのくらいの数のレコードを持っているんですか?

タブレット純

数えたことはないんですが、おそらく5000枚くらいあるんじゃないかなぁ。でも、コレクションをしているわけではないんですよ。

佐藤

え、そうなんですか?

タブレット純

コレクターは、あるレコードを「手に入れる」ということに価値を置いていますが、私はただ、その時代や、曲そのもの、歌い手が好きで買っている。好きなものを聞いて自分の栄養にしているだけなんです。

佐藤

純粋に作品が好きで手元に置いているということなんですね。

タブレット純

コレクターのなかには、せっかく買っても針を落とさない人もいますが、私はたくさん聞くし、レコードの扱いもそこまで良くなくて。あくまで生活の一部。傷もまた味わいになるから、丁寧に扱い過ぎることはありません。

佐藤

なるほど。お持ちのレコードで、一番高いはおいくらなんですか?

タブレット純

13万円でした。

佐藤

わー!13万円!それはどなたの?

タブレット純

THE ALFEEの前身バンドの音源なんですが、CD化されていないものなので、高価なんです。

佐藤

貴重なものなんですね。でも、好きなら買ってしまいますよね。お気持ち、わかります。タブレットさんは、レコードと出合って、何が良かったと思いますか?

タブレット純

レコードと出合ったことは、今の自分の活動すべてにつながっています。レコードや歌謡曲に関する本を出したり、ラジオに出演したり、舞台に立ったり。

佐藤

レコードとの出合いがあるから、今のタブレットさんがあるのですね。

タブレット純

本当にそうです。

佐藤

レコード初心者に、メッセージをお願いできますか?

タブレット純

昔は今のように、音楽をお試しで聞くことはできませんでした。レコードを買うしかなくて。でも、だからこそ、自分でいい音楽を発掘する楽しさがありました。

佐藤

そうですね。

タブレット純

ぜひ、レコード屋さんに行って、ときにはススで手を汚しながら、たくさんのレコードの中から自分の手でいろいろ探してみてください。そして、ピンときたものを、家で聞いてみてほしいです。

佐藤

買った時点では、どんな曲かわからないってことですよね。

タブレット純

そう。ドキドキしながら針を落とす感覚を、体感してほしいです。そういう体験が丸ごとすべて、レコードの良さだと思います。失敗しながらも楽しんでみてください。

佐藤

今の時代に忘れかけている感覚を、蘇らせてくれそうです。私も近々、神保町に足を運んでみたいと思います!

レコードをはじめる費用

中古レコードは、ピンキリだが1枚500円程度~。ポータブルプレイヤーは、1万円前後で購入可能。

レコードのために貯金する

「はじめてのレコード」先生の紹介

本日の講師タブレット純
オフィシャルブログhttps://ameblo.jp/tablet-jun/
YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCKBxg3z6BXBhSjLSCaSTXDw

昭和49年神奈川県生まれ。台所で母親が聞いていたラジオから、昭和歌謡に親しむ。高校卒業後8年間、古書店に勤め、介護職、歌声喫茶店員を経て、27歳で和田弘とマヒナスターズに加入。解散後はソロとしてムード歌謡芸人としてライブ、漫談、ラジオパーソナリティとして活躍中。

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