【はじめての漢方】薬とどう違う?どこで買えばいい?気になる不調を取り除く、漢方薬を試してみよう! 【はじめてをはじめる#16】

生活

【はじめての漢方】薬とどう違う?どこで買えばいい?気になる不調を取り除く、漢方薬を試してみよう! 【はじめてをはじめる#16】

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やってみたいけれど一歩踏み出せない、新しい趣味を見つけたい。そんな人の背中をそっと押す企画「はじめてをはじめる」。

今回のテーマは、「漢方」です。

動悸と不整脈で循環器内科へ駆け込んでも、めまいとしびれで脳神経外科で検査を受けても、異常なし。体に不調があるのは間違いないものの、原因不明で打つ手がない状態が何年も続いている私。

漢方で体調を改善できるという話をよく聞くし、東洋医学に頼るのも、一つの手かも。でも、漢方ってどんなものかイマイチよくわからない……。そんな私の目に留まったのが、漢方コンサルタントとして年間5000件以上の相談を受けている漢方専門家・櫻井大典さんのTwitter。

さまざまな漢方の知識を、わかりやすく、日常に取り入れやすい形で提供してくれている櫻井さんに、漢方の基本や、漢方を用いることのメリットなどについてお話を聞きました。

病名がつかなくても、症状があれば解決できる

佐藤

基本的なことからおうかがいします。漢方と、普通の病院で出されたり、ドラッグストアで買うようないわゆる「薬」は、どう違うのでしょうか?

櫻井

ざっくり言うと、自然界に存在するものか、しないものかの違いです。漢方は、薬草の葉や根を砕いたり、煮たりして作ったもの。西洋医学の薬は、化学薬品を使って人間の手によって作られたものです。

佐藤

ハーブのようなものと考えればいいですか?

櫻井

漢方に使われる生薬はハーブと同じ。西洋ではハーブ、東洋では漢方と呼び方が異なるだけで、共通する薬草もありますよ。ただし、基本的な考え方や、理論は異なります。

佐藤

なるほど!漢方とハーブはほぼイコールなんですね。漢方って、何種類ぐらいあるのでしょうか?

櫻井

国内で承認されているものは294処方(※)。そのうち、医療保険適用のあるものが148処方。一般用漢方製剤はもう少し増えている可能性があります。

※一般用漢方製剤/平成24年8月30日基準の改正により、294処方となる

佐藤

そんなにたくさんあるんですね!漢方というのは、1種類につき、1種類の薬草が使われているんですか?

櫻井

いえいえ。漢方とは、2種類以上の薬草(中医学では「生薬」と呼ぶ)がブレンドされているもののこと。生薬の調合は、例えると、料理のレシピのようなものです。

佐藤

へぇ!料理のレシピですか。

櫻井

甘いものを作るときに、塩を少し入れて甘さを引き出したりしますよね?それと同じような感じです。例えば、炎症を静めるためには、冷やす効果のある生薬を使いますが、体を冷やし過ぎないように、温める生薬をブレンドすることもあります。

佐藤

そうなんですね!

櫻井

また、冷えのダメージを少なくするために胃腸をケアする生薬を入れることもあります。グラム単位で効果が変わるので、どの生薬をどれくらい入れるかがとても重要。センスや経験が問われるものですね。

佐藤

すごく繊細なんですね。漢方を服用するメリットとは、ズバリ何なのでしょうか?

櫻井

症状を抑え込むのではなく、体のバランスを整えて根本から治療できることだと思います。元気がない、気力がない、すごく冷える……こんな症状を病院で訴えてもそれを治す薬はないけれど、漢方なら出せる薬は山ほどあるんです。

佐藤

なるほど。病名はつかないけれど、起きている不調に対処する方法が、漢方ならあるということですね。

櫻井

そうです。中医学は、検査機器がない古い時代からある医学なので、検査の数値で異常がなくても、症状があれば、それに合った漢方を出すことができるんです。

体の中のどこで、何が起きている?自分の体と向き合うことから

佐藤

検査の数値などを用いずに、どのようにして、その人に合う漢方を出すのですか?

櫻井

中医学では、患者さんを診るとき、「定位(ていい)」と「定性(ていせい)」を基準にします。定位とは、「五行説」に則って「五臓六腑」の状態を見て、体のどこが不調なのかを探り、薬を選択すること。これを「弁証論治」といいます。

<五行説とは>

自然界にある「木」「火」「土」「金」「水」の5つの物質を用いて、物事の性質を分類した考え方。この考えを人体にも応用し、5つに分類したのが「五臓」です。「肝」「心」「脾」「肺」「腎」と分けられ、体を支えるものとして、中医学では重要視されています。

櫻井

定性とは、五臓六腑の「気」「血」「水」のバランスがどうなっているか(足りているか、余っていたり、滞っていたりするのか)を見ていくこと。それによって、体のどこで、何が起きているのかがわかるんです。

<「気」「血」「水」とは>

「気」は生命のエネルギーのこと。元気、気力などの「気」で、神経機能を指します。「血」は、主に血液のことを指し、全身をめぐって栄養を運びます。「水」は、血液以外の体液のこと。水分の代謝や免疫系に深く関わります。

中医学では、この3つのバランスが保たれていることで、私たちの体は健康を維持できていると考えます。このうちどれかが不足したり、余剰になったりしてめぐりが悪くなると、体に不調をきたすのです。

櫻井

弁証論治で体の状態を確認したら、次に体の「寒」or「熱」を見ていきます。これは単に体温が低いか高いかの話ではありません。例えば、イライラしている、食欲過多、黄色い鼻水が出るなどの症状があれば、体内に熱がこもっていると考え、それを取り除くための漢方を提案します。

佐藤

櫻井さんの本に、舌の状態を見たり、脈を測ったりすると書いてありましたが、そのようにして判断するのですか?

櫻井

中医学では、「望診」「聞診」「問診」「切診」の四つの方法で、その人の体の状態を見極めていきます。

佐藤

問診では、どんなことを聞くのでしょうか?

櫻井

何時に何をどのくらい食べているのか、便通は毎日あるか、便の量や色はどうか、生理周期はどうか、経血は塊があるか、量や色はどうか、PMSはあるかなど、さまざまなことを聞いていきます。

佐藤

食事のことは答えられると思いますが、便の量や色などは、普段あまり意識していないので答えられるかわからないですね……。

櫻井

そう。自分の体のことを知らない人が多いんですよ。だからこそ、何も考えず食べたり飲んだり、無理をしたり、不摂生をしたりする。それによって不調が起こるんです。

佐藤

わぁ……。おっしゃる通りです……。

櫻井

なので、まずは自分の体に興味を持ってもらうことからスタートします。毎回の相談で生活習慣や体の状態について詳しく聞くことで、本人の意識を体に向けさせるのです。

佐藤

当たり前になっている習慣のなかに、不調の原因があるかもしれないということですね。

櫻井

そうです。そして、弁証論治などによってわかったことをもとに、症状を改善する漢方を選びます。私が一方的に選ぶというよりも、対話を通して一緒に探していくという感じですね。

佐藤

コミュニケーションをしっかりとることで、その人に合う漢方がわかるのですね。

櫻井

先ほど話したように、生薬の配合を間違えると効かないこともありますから、慎重に判断します。

佐藤

経験や知識がものを言いますね。

櫻井

すごい先生だと、立ち姿や声を聞いただけでその人の体の状態が分かるような人もいるんですよ。

佐藤

えー!それはすごい!

自分に合うものを飲むためには、専門家に相談すること

佐藤

最近よく、ドラッグストアでも漢方薬が並んでいるのを見かけます。でも、先ほどのお話を踏まえると、自己判断で市販の漢方薬を買うのは難しい気がしますね。

櫻井

そうですね。市販の漢方薬を使うのは、一種のギャンブルのようなもの。同じ吐き気という症状でも、人によって合う薬は違います。でも、ドラッグストアで買うとすると、効能に「吐き気」と書いてある同じものになってしまいますよね。

佐藤

自分に合うかどうかわからないものを飲んでも、効かないですよね。

櫻井

たまに、「私には漢方は効かなかった」という声を耳にしますが、それは間違い。自分に合うものを飲んでいないだけなんです。

佐藤

専門家に選んでもらうことの大切さがわかります。

櫻井

葛根湯一つとっても、いろんな種類があるんです。生薬は農産物と一緒で、良いもの、悪いものがあります。また、加熱の仕方など製法もさまざま。だから、一概に葛根湯といってもメーカーによって全然違うんです。

佐藤

そんな違いがあるなんて……。葛根湯ならどれも一緒だと思っていました。

櫻井

漢方の専門家に相談すれば、素材にこだわった質の良いもの、自分の症状や体質に合ったものを選んでもらえます。漢方が合わない人はいません。合っているものを飲んでいるか否かが重要なのです。

佐藤

病院でも、漢方薬を出してくれるところがありますが、それは専門家とは異なりますか?

櫻井

医師は漢方を処方する権限はあるものの、必ずしも漢方の知識があるわけではありません。ですので、医師や薬剤師、登録販売者といった資格だけを見るのではなく、きちんと「漢方相談」を標榜しているところで相談するようにしてください。

佐藤

はい。わかりました!漢方って、市販の葛根湯から粉状のものをイメージしますが、専門家が出してくれるものは、どんな形状のものなのでしょうか?

櫻井

煎じて飲むもの(生薬そのまま)、粉、錠剤、液体などがあります。煎じて飲むものは生薬本来の形なので症状がひどい場合に向きますが、高価です。

佐藤

いくらくらいするのでしょうか?

櫻井

1回分が1000~2000円というのも普通にありますね。正直、お金をかけようと思えばいくらでもかけられるんですよ。

佐藤

それはちょっとお財布に優しくないかも……。

櫻井

私が普段出している漢方は、粉、錠剤、液体です。

佐藤

それだといくらくらいするのでしょうか?

櫻井

1日分が200円くらいから。私の薬局に相談に来る方は、1カ月で平均1万5千円くらいかけている人が多いですね。

佐藤

そうなんですね。あまりお金をかけられない場合、予算を伝えも良いのでしょうか?

櫻井

もちろん!若い人の冷え症や生理痛なら、月5000円程度で見繕うことも可能です。予算を言ってもらえれば、その範囲内でできることを考えますので、遠慮なく。

自分の「欲」をコントロールして、漢方で治る力を高めていく

佐藤

食間、食後など漢方を飲むタイミングはいつなのでしょうか?

櫻井

それは、ケースバイケースですね。

佐藤

市販品だと、いつ飲むかなどはワンパターンしか書かれていないので、それ以外はNGだと思っていました。飲み続ける期間についてはどうでしょうか?

櫻井

服用期間は、その人がどれくらい頑張れるかによります。体のバランスの崩れは、習慣や食事など、普段の生活によって起こること。自分の欲をどう制御して、体が治ろうとする力を後押しできるかが、とても大切です。

佐藤

欲……。痛い言葉ですね。

櫻井

いくら漢方を飲んでも、不調の原因となっているものを取り除かなければ、意味がありませんから。

佐藤

長期間飲まないと効かないというイメージがありますが、そういうわけでもないということですね。

櫻井

漢方は長く飲まないと効かないというのは、大きな誤解です。例えば、葛根湯はどうですか?

佐藤

確かに、葛根湯は、飲むと少ししたら体がポカポカしてきますね。

櫻井

風邪とか、お腹を壊したとか、急性疾患にはすぐ効くものがあります。一方、不眠とか不妊とか、慢性疾患の場合は、不調の原因が根深いことが多いですから、時間がかかります。

佐藤

服用する際に気を付けるべきことはありますか?

櫻井

漢方相談員のアドバイスをしっかり聞いて実践することです。

佐藤

具体的にはどういうことでしょうか?

櫻井

例えば、毎日サラダばかり食べ、水分を大量に摂っている人が、むくみと下痢で相談に来たとします。我々は水はけをよくする漢方を出しますが、生の野菜や水分を摂るのを控えなければ、良くなるものも良くなりませんよね。

佐藤

確かに、そうですね。何が不調の原因なのかを認識して改善しないといけませんね。

櫻井

自分で不調の原因を作ってしまっていることを認識し、アドバイスをしっかり聞いて自分で取り除く努力をすることが大切です。

佐藤

他力本願ではなく、自分で治すための行動を起こさないといけないんですね。

櫻井

病気は自分の力で治すもの。薬では治りません。例えば、高血圧で薬を飲んでいる人は、薬を飲まなければまた血圧が上がってしまいます。それは、薬で症状を抑え込んでいるだけだからです。

佐藤

そうですね。

櫻井

根本から血圧が高くならない体にするのが、本当の治療。それは自分の体でしかできないことなんです。

佐藤

漢方の力を借りて、自分の力で治していくということですね。

櫻井

よく「この症状には何を食べればいいか?」と聞かれるんです。何かを足して治すことを望む人が多いのですが、原因となっていることを省くことの方が大切です。

佐藤

足すより、省く。なるほど。

櫻井

習慣になっていることをやめるのって、大変ですよね。人間は足すことの方が楽なんですよ。その考え方をあらためる必要がありますね。

漢方は、生き方。内側に目を向ければ世界は変わる。

佐藤

櫻井さんのところへ相談に来る人は、どのような悩みを抱えた方が多いですか?

櫻井

8~9割が女性で、30~50代の方が多いのですが、主な相談は、冷え、頭痛や生理痛などの痛み、PMS、更年期、不眠、パニック症、不妊などですね。

佐藤

女性の割合がそんなに多いんですね!

櫻井

女性の方が、自分の体のことを相談することに抵抗がないのかもしれません。男性って、病院が嫌いな人が多いですよね。推測するに、男性は自分で解決できないことを人に話すのが苦手なのでしょう。

佐藤

男女の考え方の違いが表れていますね。多くの悩める人たちを漢方で救ってきた櫻井さんは、仕事のやりがいをどう感じていますか?

櫻井

私はあまり仕事の「やりがい」について、考えたことがないんです。仕事を仕事と思っていないというか。

佐藤

仕事を仕事と思わないというのは、すごくいいことだと思います。

櫻井

私は実家が薬屋で、いろんな仕事を経験した後、結局この道に戻ってきた人間なんです。自分には、これしかできることがないなと思っていて。ただ、できることをひたすらやっている、そういう感覚です。

佐藤

そうなんですね。本を書いたり、Twitterで情報を発信したりしていらっしゃるので、何か大きな目的意識などがあるのかなと思っていたのですが、そういうわけでもないのですか?

櫻井

はい。展望とか今後の目標みたいなものも特にありません。Twitterで漢方の知識をつぶやき始めたのは、10年ほど前なのですが、実は、暇だったから始めただけなんですよ。

佐藤

え、そうなんですね!その肩の力が抜けている感じが、続けられる秘訣なのかもしれませんね。

櫻井

どうでしょう(笑)。ただ、私を頼りにしてくださる方に、真摯に応えるために、勉強を続けていくことだけかなと思っています。

佐藤

漢方初心者の方に向けて、メッセージをお願いできますか?

櫻井

漢方の知識は、知っておいて損はないもの。知るにつれて、いろんなものをこれまでとは違った視点で見ることができるようになります。

佐藤

というと?

櫻井

季節の変化を敏感に感じ取ったり、口にするものに気を付けるようになったり、旬の食べ物がわかるようになったり。

佐藤

丁寧な暮らしができるようになりそう。

櫻井

結局、人間も自然の一部なんだなということもわかってきます。冬は木が枯れて、動物は冬眠する。だったら、人間もそんなに頑張らなくていいじゃないか、そんな風に思えたりして。

佐藤

自分を許せるようになるって、ステキなことですね。

櫻井

漢方は、薬だけのことを指すのではなく、生き方そのものなんです。人はみんな外側にばかり目を向けがちで、自分の内側に興味を持ちづらい。でも、結局、世界って自分の内側にしかないですよね。

佐藤

そうですね。自分の頭のなかで考えていることが、世界ですもんね。

櫻井

そう考えると、自分の内側が平和であることが何より大切。漢方は、それを後押しするためのとても良い手段だと思います。

佐藤

漢方薬だけでなく、漢方の根本にある思想まで知ることができて、すごく納得感がありました。ありがとうございます。漢方のある暮らしに、一歩踏み出してみたいと思います。

漢方をはじめるためにかかる費用

冷え症や生理痛などの悩みならば月5000円程度~。症状や体質、本人の希望などにより、かかる費用は異なる。

漢方のために貯金する

「はじめての漢方」先生の紹介

本日の講師櫻井大典
Twitterhttps://twitter.com/PandaKanpo
著書

・櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活 - こころとからだに効く!
・ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方―体と心をいたわる365のコツ
・ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方食材帖
・つぶやき養生

漢方コンサルタント。国際中医相談員 / 日本中医薬研究会会員。
年間5000件以上の相談をこなす漢方専門家。
アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。

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