超集中力で的を撃ち抜く!若き東京五輪代表が語る「射撃」の魅力とは【マイナースポーツ特集#58】

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超集中力で的を撃ち抜く!若き東京五輪代表が語る「射撃」の魅力とは【マイナースポーツ特集#58】

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ライフル・ピストルで的を撃ち抜き点数を競う射撃競技。古くは1896年の第1回アネテオリンピックから存在し、1984年のロサンゼルスオリンピックから女子種目も正式採用された歴史ある競技です。

その射撃において、競技を始めてからわずか7年でオリンピック代表の座を勝ち取ったのが平田しおりさん。2021年の東京オリンピックでは3種目に出場し、女子ライフル3姿勢では11位の成績を収めました。そんな女子射撃界の若きエース・平田選手に、射撃の魅力と2024パリ五輪への意気込みをお伺いしました。

オリンピック種目は15種目!銃の所持には公安委員会の許可が必須

――射撃競技の概要について教えて下さい。

平田さん

銃で弾を撃ち、的を射貫く競技です。使う銃や的までの距離などによって競技が細分化されており、オリンピックでは15種目に分れています。

――すごく細分化されているんですね!

平田さん

まずクレー射撃とライフル射撃に分かれ、ライフル射撃の中でもライフル種目とピストル種目に分かれます。さらにライフル種目の中でも、的までの距離が10mと50mの2種類あり、それぞれ男女別と10mだけ男女ミックス競技が設けられています。ピストルは10mと25mの男女別ですね。

それらの中で、私は10mのエアライフル、10m男女ミックス、50mライフル3姿勢の3つの種目に出場しています。

――平田選手が一番得意な種目はどれでしょうか?

平田さん

一番成績に繋がるのは50mライフル3姿勢です。膝を立てる姿勢の「膝射」、うつ伏せになる「伏射」、真っ直ぐ立って半身に構える「立射」の3つの姿勢でそれぞれ40発ずつ、合計120発を撃って得点を競う競技です。

もちろんどの競技でもオリンピックに出るからには恥ずかしい点数を出せないので、どの競技もしっかりがんばっています!

――10mと50mでは使う銃が違うのでしょうか?

平田さん

10mは空気を圧縮して鉛玉を飛ばすエアライフルを使い、50mは火薬で鉛玉を押し出す火薬銃を使います。どちらの銃も、個人が所持するには公安委員会の許可が必要です。

――許可が必要となると、今すぐ始めようと思っても難しいですね。

平田さん

射撃競技の中にはビームライフル(光線銃)を使うものもあります。銃の所持にはそれぞれ年齢制限や取得の条件があって、18歳未満でエアライフルを持とうとすると、ビームライフルで実績を残して日本スポーツ協会の推薦を受けないといけないんです。なので中高生から始める場合には、まずビームライフルからキャリアを詰むのが一般的です。

誕生は貴族の遊びから!ヨーロッパでは300万人が競技に参加する人気スポーツ

――射撃競技はどこで生まれた競技なのでしょうか?

平田さん

定かではないのですが、ヨーロッパの貴族が銃で獲物を狩るところから始まったといわれています。現在も競技としてヨーロッパが盛んで、競技人口は300万人ほどいるとかいないとか。有名な銃のメーカーはドイツやスイスにありますし、オリンピックでも陸上競技に次いで参加国が多いのが射撃なんです。

――世界的にも歴史があり、盛んに行われている競技ですね!大会も多いのでしょうか?

平田さん

4年に1回のオリンピックのほか、世界選手権やワールドカップ、ヨーロッパ選手権やアジア選手権のような大陸ごとの大会など、国際大会は豊富ですね。弾のメーカーが主催するような小さな大会も含めると、数え切れないほど多くの大会が開催されています。

――日本国内ではどんな大会がありますか?

平田さん

日本国内でも非常に多くの大会が行われています。全日本選手権や全日本選抜、国体などが大きな大会ですね。海外に派遣する代表選手を決める選考記録会は細かく開催されています。また地域ごとの大会が開かれたり、学生選手権のような年齢別だったりと、大会の種類と数は非常に豊富です。

――さすが歴史のある競技!大会が盛んに行われているのが伝わってきます!

平田さん

日本国内での競技人口は7,500人ほどと言われていますが、最近はコロナ禍の影響で試合が1年以上無くなっているので、競技人口も減少しているようです。ただ今月から大会を再開するところも多く、私も久々に遠征予定が入ってきました。元通りの環境に向けてちょっとずつ動き出しているのを感じます。

父の影響で文系少女から転向、開始3か月で北信越大会優勝!

――平田選手はどんなきっかけで射撃を始めたのでしょうか。

平田さん

元々父がクレー射撃の選手で、小さい頃から父の試合を見るなど、射撃という存在は身近にありました。高校からは何か新しいことを始めたいと思いましたが、入学した高校には射撃部がなかったで、土日メインで外部に習いに行くことにしたんです。

――それまでスポーツ経験はあったのでしょうか。

平田さん

それが全然やってなくて(笑)。小学1年生からずっと書道をやっていました。高校では何らかの部活に所属しないといけなかったので、平日2日だけ参加すればいい書道部に入部しています。

――書道から射撃へは、ずいぶん思い切った転向だと思います!実際に射撃を始めてから、書道での経験が活きている部分はありますか?

平田さん

書道では一枚を書き上げるまでの間にリズムや流れがあり、1枚ごとに集中を切り替えていきます。射撃も時間内に規定の弾数を撃つための流れがあり、集中力を切り替えていくので、そういうルーティンは似ているかもしれません(笑)。

――文化系から射撃を始めた平田選手が、射撃に「ハマった!」と思った瞬間はなんでしょうか?

平田さん

高校1年生の5~6月ごろに射撃を始めて、8月に出た北信越の大会で優勝できたんです。その時に地元のコーチや先生、両親など周囲の人たちにとても褒めてもらえて。それがうれしかったんですね。

――やはり褒めてもらえるというのは大きな原動力になりますね。

平田さん

正直、射撃競技について深く理解しているわけではありませんでしたが、当時はがんばれば褒めてもらえるからもっとやってみたいな、と思ったのがハマったきっかけだったと思います。

――当時、とありますが、今は違う感情ですか?

平田さん

今は応援してくださる人の期待に応えたい気持ちと、もっとトップで戦いたいという気持ちが半分ずつですね。オリンピックの時はたくさんいただいた温かい言葉のおかげで踏ん張れた時もありましたし、自分のために射撃の技術をレベルアップさせていきたいという気持ちが強い時もあり、両方の気持ちに支えられています。

2019年に東京オリンピック出場決定!コロナの影響でほぼぶっつけ本番に

――改めて東京オリンピック出場お疲れ様でした!出場が決まったのはいつ頃でしょうか?

平田さん

2019年11月にドーハで行われたアジア選手権です。前々から日本人参加選手でトップならオリンピック内定ということが決まっていて、女子50mライフル3種目の3位に入賞して出場が決まりました。また、この大会でQP(オリンピック割当出場枠)も獲得して、10mエアライフルにも出場できる可能性があったので、エアライフルも撃つことになるだろうなとは思っていました。

――しかし翌年の2020年3月に東京オリンピックの1年延期が発表されました。この発表はショックではありませんでしたか?

平田さん

延期についての情報が内部で回ってくるわけではなかったので、私たちもニュースを追っていました。ずっと延期か中止かという話が出ていましたので、たぶん延期になるんだろうな、という覚悟はできていましたね。実際に決まっても心構えはできていたので、精神的なダメージはずいぶん軽かったと思います。

――延期が決まってからの1年間はどんな過ごし方をしていましたか?

平田さん

延期自体のショックはなかったのですが、コロナの影響で大会がまったく開かれなくなってしまったんです。できればどんどん国際大会に出て経験を積んでおきたいところでしたが、1年間まったく試合経験を積めないままオリンピックを迎えることになってしまったので、残念な気持ちがあったのは正直なところです。

――それではオリンピックがぶっつけ本番になってしまったようなものですね……。

平田さん

リオ大会などに出場した選手の方から、ワールドカップなどの大会で世界のレベルや自分の調子を見られると聞いていましたが、今回はいきなり本番になってしまいましたね。しかし、その分しっかり練習はできていたので、本番までにレベルアップはできたかなとも思っていました。

オリンピック本番で苦戦も未来へ繋げる戦いへ、目指すは2024年パリ五輪

――7月23日にオリンピック競技がスタートし、24日には平田選手にとって最初の競技である10mエアライフルがありました。緊張はしませんでしたか?

平田さん

海外の選手に挟まれながら並んで撃つのは久しぶりだな、と思いましたね。緊張はもちろんしました。結果として中盤後半で点数を伸ばせずに終わってしまいましたが、緊張しているなかでも自分を落ち着かせて取り組めたのはよかったと思います。

――その後10m男女ミックス、そして50mライフル3姿勢と進みます。最後の3姿勢では決勝に進出できなかったとはいえ、初出場で11位と立派な成績だと思います。ご自身では手応えはありましたか?

平田さん

3姿勢では膝射と伏射で思うように点数が伸ばせず、この2姿勢が終わった時点で入賞は難しいかなと思っていました。でも最後に立射はやりきろうと心を入れ替え、自分の射撃を思い出して最後まで撃てたので、ここまでしっかり戦えたなという気持ちは大きかったです。オリンピックの空気に飲まれずにやりきれたのはいい経験になりました。

――3姿勢のうち2姿勢で点数が伸びていない状態では、気持ちが折れてしまう選手も少なくないと思います。そこで立て直せたのは平田選手のメンタルの強さですね!

平田さん

そうですね、しっかり切り替えていけるのはいいところだと思います!エアライフルが終わった直後もどうにもならないような点数で、コーチたちに申し訳なくて泣いてしまったりもしたんですが、3姿勢もあるし引きずっていられない、試合を楽しもうと思って切り替えができました。

――ご自身は悔しい思いもあると思いますが、今回の経験は次のパリ五輪に向かって活きますね!

平田さん

そうですね。終わった直後に、2年近く見てくれていた日本人コーチ、外国人コーチのふたりから「よくやった」と褒めてもらえました。もちろん入賞したかったですし、ふたりに何も返せなかったのは悔しいですが、ここまで戦えたから次のパリ五輪に向けてがんばろうという気持ちになりました。

――そのパリ五輪は2024年、あと3年後に迫ってきました。この3年はどんな過ごし方をしたいと思いますか?

平田さん

今回は開催国枠のおかげでたくさんの選手が出られましたが、次は自分から出場枠をワールドカップや世界選手権で獲っていかないといけません。

――もう戦いが始まるんですね……!

平田さん

その出場枠が配布される試合が来年の世界選手権から始まりますので、そこから約2年が勝負になりますね。東京オリンピックの開催が1年延期されている分、あと1年で大切な試合が始まるので、あっという間に感じます。

――当初は2020年から2024年まで4年スパンが空くはずでしたが、延期により3年になりました。この1年の短縮はプラスに運びますか?

平田さん

射撃競技は体重や体格の維持はあまり関係ないので、フィジカル的なコンディションには影響はありません。メンタル面では開催までの時間が短くなった分、東京で盛り上がった気持ちをパリにそのまま持って行けますので、プラスになっていると思います。

まずは体験会から!年齢を問わない射撃競技にチャレンジしよう!

――射撃競技に興味が出たら、何から手を着けたらよいでしょうか。

平田さん

各都道府県で、中高生向けの体験会を開催しています。また一般向けにオリパライベントとして体験会をやっていますので、そういったところに参加していただけると、射撃の空気感を感じていただけますね。また各都道府県の射撃場を見学していただくのも良いと思います。詳しくは日本ライフル射撃協会のホームページで告知していますので、ぜひご覧ください!

――もし体験会やイベントで興味が出た場合は、どんな手順ではじめられますか?

平田さん

日本ライフル射撃協会主催の体験会では、銃の資格の取り方などもレクチャーしてくれますので、ぜひ一度ご参加いただくのがよいと思います。また射撃場に見学に行った際に質問していただければ、詳しく相談に乗ってもらえますよ。

――射撃競技にはどんな方が向いていますか?

平田さん

ナショナルチームの選手たちに共通しているのは「射撃が好き」という点くらいですね。元々やっていたスポーツも職業も、性格もバラバラです。ただ全員の方と話すと「射撃が好きなんだな」と感じます。

――能力面ではいかがでしょう?

平田さん

強いて言うなら気持ちの切り替え方の上手さでしょうか。3姿勢は競技時間が2時間45分と長丁場です。慣れればあっという間ですが、この間にずっと集中しっぱなしではいられませんので、オンとオフを上手に切り替えられる方がよいと思います。

――競技としてやるというよりも、趣味として人生のルーティンに組み入れたいような方に性別や年齢などで制限はありますか?

平田さん

まったくありません!中高生は扱える銃に法的な制限がありますが、成年以上の方なら問題ありません。おじいちゃんもたくさん練習されていますし、マスターズの大会もありますので、何歳でも続けられると思いますよ!

――マスターズがあるのはいいですね!体験会に参加するときに必要な服装や道具などがありましたら教えてください。

平田さん

試合にはドレスコードがありますが、体験なら私服で大丈夫です。ジャージの上下と運動靴くらい揃えていただければ、気軽に体験していただけると思います。

――最後に射撃に興味を持った方へメッセージをお願いします!

平田さん

自分もそうでしたが、スポーツ経験がない人でも取り組める、誰でも楽しめる競技だと思います。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ見学や体験会に参加してみてください!

射撃を始めるのにかかる費用

ジャージ上下3,000円~
運動靴2,000円~

 

射撃を体験したい時の連絡先

公益社団法人日本ライフル射撃協会https://www.riflesports.jp/

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