自由度の高さと”サムライ精神”が魅力!世界60万人に愛される「スポーツチャンバラ」とは?【マイナースポーツ特集#57】

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自由度の高さと”サムライ精神”が魅力!世界60万人に愛される「スポーツチャンバラ」とは?【マイナースポーツ特集#57】

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日本人になじみ深いチャンバラごっこと護身道が融合し、世界的なスポーツとして発展している「スポーツチャンバラ」。最近はテレビやYouTubeで取り上げられる機会が多く、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そんなスポーツチャンバラで、計10度の世界一に輝いている女性剣士がいます。彼女の名は、永井五月さん。永井さんは、スポーツチャンバラの打突で2度、基本動作では8度も世界選手権でグランドチャンピオンに輝いているのです。

今回は世界的な剣士である永井さんに、スポーツチャンバラの魅力や普及への想い、今後の目標などを伺いました。

剣を相手の身体に当てる「打突」と、剣と一体化して演武する「基本動作」

――まずは、スポーツチャンバラ(以下:スポチャン)について教えてください。

永井さん

スポチャンは、皆さんが子どものころにやっていた”チャンバラごっこ”を、安全な用具やルールを用いてスポーツにしたものです。

――チャンバラごっこということは、刀や剣のようなものを使うんですか?

永井さん

「エアーソフト剣」というものを使います。ゴムチューブの中に空気が入っていて、当たっても痛くないんです。

得物(用具)は剣の種類が6種類(小太刀・長剣・杖・短刀・槍・棒)、防具が2種類(楯・面)です。面以外の7種類を組み合わせた競技種目が全部で13種目あります。

――13種目も……!!

永井さん

長さ60cmの「小太刀」が基本的な得物ですね。

ほかにも長さ1mの「長剣」や、長さ45cmの「短刀」、防御用の「楯(たて)」などがあり、「楯長剣」のようにふたつの用具を持って戦うこともあります。

――試合はどのように行われるんでしょうか。

永井さん

スポチャンの試合は、「打突」と「基本動作」の2種類です。

打突は種目ごとに試合がわかれていて、相手と1対1で対峙し、剣で打ったり突いたりして相手より先に1本を奪い合います。予選はすべて1分間の1本勝負、決勝戦は3本勝負で2本を先取した方が勝ちになります。



――1本を取るという点では、剣道に近いですね。

永井さん

そうですね。ただスポチャンの場合、剣を当てる場所は相手の身体のどこでもいいんです。

――とにかく相手の身体に当てればいいんですね!be-topiaで以前紹介した次世代スポーツ「SASSEN(※)」にも似ていると感じました。

永井さん

SASSENとは、審判が「人」か「アプリ」かの違いが大きいです。スポチャンは基本的にコートの中に審判がいて、人の目で勝敗を判断します。

それにSASSENは刀を振れるのが5回までですが、スポチャンには制限がありません。勝ち負けのわかりやすさがSASSENの魅力で、自由度の高さがスポチャンの魅力だと思っています。

※SASSEN:センサー内蔵の「SASSEN刀」を使って戦う、北九州市発祥の次世代刀スポーツ

――もうひとつの試合、「基本動作」についても教えていただけますか?

永井さん

はい。基本動作は2人同時に演武して、型の美しさと正確さ、力強さを競います。

たとえば、剣をぴたっと止めるときの角度の正確さや、足で力強く踏み込んだときに身体がブレていないかなどが判定基準です。

――基本動作でも、13種類の種目が使えるんですか?

永井さん

もともと基本動作で使用するのは小太刀だけだったんですけど、現在は各段級に分かれ、種目に関係なく戦います。

剣が長くなればなるほど、自分の身体と剣を一体化して演武することが難しくなりますね。

潔く負けを認める「自心審判」が、サムライスポーツならではの魅

――打突にも基本動作にも、各種目の優勝者による「グランドチャンピオン戦」というチャンピオン決定戦があるんですよね?

永井さん

はい。戦い方が違う種目同士で試合を行って一番を決めようというのが、グランドチャンピオン戦の面白さです。

――なるほど。いろいろな種目があるスポチャンならではの戦いですね。

永井さん

そうですね。ほかにも、スポチャンには「自心審判」という独特の文化があります。

――自心審判とは?

永井さん

たとえば試合中、相手に自分の小手を打たれたとき、自分と相手は気付いているけど、審判は気付いていないという場面があるとします。

こういうときに自ら「打たれました!」って手をあげて、負けを認めるのが自心審判です。

――え、負けを自己申告しちゃうですか!?

永井さん

そうなんです。だから自心審判にはすごい勇気が必要なんですよ。

でもそれは、試合で勝つことより大事だと思っています。自ら負けを認めることで、相手の実力とそこに至る努力を称えることになるので。

――潔く負けを認める、と。”サムライ魂”のようなものを感じます。

永井さん

スポチャンはもともと、小太刀を使って自分の身を守る「小太刀護身道」として始まった”サムライスポーツ”なんです。

――ということはもちろん、日本発祥なんですね。

永井さん

そうです。1973年に、スポーツチャンバラ協会の現会長・田邊哲人さんがつくりました。

その後、世界中に広めたいという意図もあって、1990年代に小太刀護身道からスポーツチャンバラという競技名になったんです。

――いまは世界でどれくらい広まっているのでしょうか?

永井さん

いまでは愛好者が世界約60か国に約60万人、日本だけでも約36万人もいると言われています。

世界大会では、英語圏だけじゃなくてヨーロッパや中国、ロシアなどの選手と交流していますよ。

1歳から始めたスポチャンは「頑張っている時間が楽しい」


――永井さんご自身は、どんなきっかけでスポチャンを始めたんですか?

永井さん

わたしが1歳11ヶ月のとき、母がスポチャンをテレビで観て「これをやりたい!」と目覚めてしまったんです(笑)。

たまたま家の近くに道場があったので、当時4歳だった姉と1歳のわたしを連れて行って。それがきっかけですね。

――1歳のときから道場で……!!

永井さん

小さいときは年上の人たちに全然勝てなくて、涙で顔をびちゃびちゃにしながら「なんでこんなことをやらされているんだ」って思ってました(笑)。

――それでも辞めることなく続けられたんですね。

永井さん

私は始めた年齢が低かったので、最初は遊び感覚というか、友だちに会いに行く感覚で楽しめてましたね。

でもいまは「もっとスポチャンが強くなりたい」ってずっと考えながら目標を立てて、大会に向けて頑張ってる時間が楽しいんです。だから続けられているのかなと思います。

――楽しいから続けられる、と。逆に、スポチャンの難しさはどういう部分ですか?

永井さん

スポチャンはとにかく自由度が高くて、名前もついてないようなオリジナルの技がたくさんあるんです。だから相手がどんな技を出すのかわからない。そこがすごく難しいですね。

――どんな技にも対応できないといけないんですね……。永井さんが試合のときに意識していることは?

永井さん

打突のときは、相手の動きを見て攻撃を避けたり打ち返したりしながら、「いまなら打ち込みにいけるぞ!」っていうタイミングを伺っています。

基本動作に関しては、”止める動き”ですね。手と足だけじゃなく身体全体を一気に止めないといけないので、打突とは力を入れる部分が違うかなと思います。

 

中学1年生で世界王者に。そして、夫・将史さんとの出会い

――永井さんは日本代表としても長く活躍されていますよね。スポチャンを始めてどれくらいで代表を目指すようになったんですか?

永井さん

中学1年生のときです。そのときに初めて基本動作で世界一になることができました。

世界一になって初めて代表入りできるというのもあって、それからはずっと日本代表として世界大会に出場しています。

――中学1年生で世界王者に!!

永井さん

実は、小学6年生のときに初挑戦した世界大会では惨敗して。それがすごい悔しかったんです。

だから中学1年生になったときに「これからの目標は世界一になること!」と作文で書いて、その半年後に世界一になれました。

――まさに有言実行ですね。その後の世界大会では、基本動作で8度、打突で2度の世界一に輝いています。王者としてのプレッシャーは感じますか?

永井さん

若いときはプレッシャーを感じてました。とくに高校2年生のときが苦しかったです。

――そうだったんですか。でも高校2年生のときは、基本動作で世界大会を三連覇されたタイミングですよね?

永井さん

そのときは何とか勝って三連覇できたんですけど、当時は自分を追い詰めすぎてメンタルがぐちゃぐちゃでした。自分の試合がすごく嫌いになってしまって……。

そんなわたしを見て、母が大阪旅行に連れていってくれたんです。そのおかげでメンタルを持ち直して、高校3年生のときには四連覇できました。

――お母さまの支えがあったんですね。永井さんのご家族といえば、夫・将史さんも打突で2度の世界一になっています。

永井さん

わたしが中学3年生で基本動作の世界一になったとき、夫も打突で初めて世界一になってたんですよ。夫のことは、そのときに初めて知りました。

――運命的ですね!実際にお付き合いを始めたのはしばらく経ってからなんですか?

永井さん

実際に付き合い始めたのは、その10年後くらいですね。大会でたまたま久しぶりに会って、一緒に食事に行くことになったんです。そのときに意気投合しました(笑)。

今後は女性選手の育成や、小学生への普及にも注力

――その後、将史さんとご結婚し、昨年には長男の将太朗くんを出産されました。結婚・出産を経て、変わったことはありますか?

永井さん

出産を経て体型が変わり、筋力も落ちてしまいました。コロナ下で思うように練習できていないのもあるんですが。

いまは夫が土日休みのときに一緒に練習をしています。平日は子どもを見ながら自主練をしたり筋トレをしたりしながら、戦える身体に戻しているところですね。

――今年の11月には「全日本選手権大会兼国際交流大会」が控えていますよね。

永井さん

そうです。いまはその大会の基本動作と打突でグランドチャンピオンを獲るのが目標です。

――今回優勝すれば、「ママでも金」ということに。

永井さん

そうですね。わたしが優勝することで、「結婚と出産をしても、スポチャンで世界一を目指せるよ!」というのを見せたいです。

スポチャンをやっている女性は、結婚や出産をすると競技から離れてしまう人が多いんです。とくに出産後は体型が変わっちゃって、復帰するのが簡単ではないので。

――永井さんは女性選手の育成にも取り組まれているんですよね。

永井さん

はい。スポチャンは現状、大会で「女性の部」と「男性の部」がわかれていないケースが多いんです。スポチャンを始めたばかりの女性は、いきなり男性選手の中に入れられると少し引いてしまう。だからまずは、その部分を変えていきたいです。

「年齢性別関係なく」というのがスポチャンの理念なんですけど、競技として普及させるためには、小さい大会でもしっかり女性と男性をわけていきたいと考えています。

――スポーツチャンバラ協会の中では、「全国小学校普及委員会」としても活動されています。

永井さん

小学校の普及委員会では、放課後にスポチャン教室を実施したり、イベントの企画や参加をしたりしながら普及活動をしています。

その際に気をつけているのは、「スポチャンをすること」と「暴力」の意味の違いを伝えることです。

――「スポチャンをすること」と「暴力」の意味の違い。

永井さん

はい。子どもたちは、チャンバラに対して相手を倒す、やっつけるというイメージを持っていることもあって。

でも、スポチャンは自分の身を守るために生まれた武道なので、子どもたちにも「自分自身や大切な人を守るために戦うんだよ」というのをきちんと伝えていますね。

――自分自身や大切な人を守るために戦う。とても大切なメッセージですね。

永井さん

ありがとうございます。いずれ、小学生の全国合宿もしたいと考えています。

合宿の目的は、スポチャンの友情や交流をつくることで、中高生になっても競技を続けやすくすること。あとは合宿をすることで、競技力の向上はもちろん、指導者の指導力向上にもつながればいいなと思っています。

運動が苦手な方にもおすすめ!まずは近くの道場やクラブチームを探そう

――スポチャンはどんな人に向いてますか?

永井さん

運動が苦手な方に向いてると思います。剣を持って振るというシンプルな競技なので。小学生も「体育は嫌いだけどスポチャンは好き!」っていう子が多いんですよ。

あとはストレスが溜まっている主婦の方、楽しく痩せたい方にもおすすめです。もちろん、武道経験者の方にもすごく楽しんでもらえると思います。

――先ほど小学生の普及の話を聞いて、スポチャンは教育にも適していると感じました。

永井さん

おっしゃる通りです!スポチャンを通じて「自分の力はこういう風に使うんだよ」というのを子どもたちに教えられるので。

実際、「子どもが乱暴で困っています」という保護者の方もよく来てくれるんです。そういう子は、とくにスポチャン向きかもしれません。

――元気があり余っている子どもほど、スポチャンに向いていると。

永井さん

そうです。安全な用具を使って、自由に、思う存分エネルギーを発散できるので。それに試合になると、自分より小さい子や女の子に負けることもあるんです。子どもにとっては、”負ける”ということも新しい気づきや発見のきっかけになると思います。

また、礼儀を大切にする武道としての一面もあるので、自然に礼儀が身につくことも保護者の方には喜ばれていますね。

――始めるときは、どこに連絡したらいいでしょう。

永井さん

インターネットで検索すれば近くの道場がヒットすると思うので、まずはそこに連絡していただければ。もしくはスポチャン協会に電話すれば、近くの道場を教えてくれると思います。

――道具を揃える必要はありますか?

永井さん

道場やクラブチームでは、レンタルで貸してくれるところも多いです。もし買う場合は、面と小太刀、長剣があれば基本的にはどの大会にも出られると思います。



――用具はどこで購入すれば?

永井さん

スポチャン協会経由で買うのが一番安全ですね。ネットで買う方法もあるんですけど、たまに偽物があったりするので。値段はスポチャン協会のホームページに載っています(※)。

※記事下部にも記載。

――ありがとうございます。最後に、スポチャンを始めようとしている人にメッセージをお願いします。

永井さん

先に相手に1本当てたら勝ち。年齢や性別に関係なく誰でも楽しめるスポチャンを、ぜひ体験してみてください!

スポーツチャンバラを始めるのにかかる費用

スポチャン面12,700円(税別)~
小太刀10,500円(税別)~
長刀13,000円(税別)~

※上記の価格はすべてスポーツチャンバラ協会のホームページを参照。

問い合わせ先

公益社団法人 日本スポーツチャンバラ協会https://www.internationalsportschanbara.net/jp/try.html
永井さんのツイッターhttps://twitter.com/n_satsuki0519

 

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