体感時速は160km!?エジプト発祥のラケット競技「スピードボール」の醍醐味とは【マイナースポーツ特集#55】

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体感時速は160km!?エジプト発祥のラケット競技「スピードボール」の醍醐味とは【マイナースポーツ特集#55】

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エジプト発祥のラケット競技「スピードボール」は、独特の軌道を描くコード付きのボールを打ち合い、得点を競います。体感時速160kmで動くボールをコート内のどこで、どのように打ち返すのか。相手と駆け引きをしながらラリーを続けるのが醍醐味です。

スピードボール日本代表の岡林志菜さんは現在、全日本女子シングルスを10連覇中。2017年の世界選手権では、岡林さんの夫で同じく日本代表の岡林大樹さんとペアを組み、ミックスダブルスで銅メダルを獲得しました。

今回はそんな岡林志菜さんに、スピードボールの魅力や普及活動への想いを伺いました。

試合では体感時速160kmのボールを2周以内に打ち返す!

――スピードボールはどのような競技ですか?

岡林さん

スタンドの先端に付いているコード付きのボールを打ちながら、ラリーをするのが基本です。

スタンドの高さは175cm、コードの長さは150cmです。スタンドの先端にコードを取り付けることで、スタンドを中心にボールが回る構造になっています。

画像作成・提供=岡林志菜さん


――どのようなルールなのでしょうか。

岡林さん

ルールは主に2つあります。まず、得点を競う対戦方式です。スタンドの真ん中でコートを区切り、それぞれの陣地に選手が分かれて対戦します。

試合では、相手選手の打ったボールが自分の前を2周するまでに逆回りで打ち返さなければなりません。ボールを打ち返せないと相手の得点になります。

 ――試合は何点先取なんですか?

岡林さん

1セット10点先取です。先に2セットを取った選手が勝利します。

――もう1つのルールについても教えてください。

岡林さん

もう1つは、選手ひとりの打数を競うソロ方式です。ひとりでボールを右回り、左回りと交互に打ち、1分間で何回打てるのかを競います。

――打ち方は決まっているんですか?

岡林さん

はい。ソロ方式の打ち方は4種類です。右手だけ・左手だけ・両手持ちでフォア面だけ・両手持ちでバック面だけ、という打ち方があります。

それぞれ1分間の打数を計測して、4分間の合計打数で最終的な順位が決まります。

――ボールの時速が体感160kmにもなるそうですね。

岡林さん

そうです。野球でピッチャーが投げた球をバッターが打ち返すまでの時間をイメージしていただければ、スピードボールのスピード感がわかりやすいと思います。

世界ではエジプトが断トツの強さ。日本は銀メダルを争う位置に

――スピードボールはエジプト生まれの競技なんですよね?

岡林さん

はい。1961年にエジプトで発祥したと言われています。

一説によると、テニスの練習用として生み出されたそうです。テニスボールをひとりで打ち続けられるように考えた結果、スピードボールのスタイルが生まれたみたいですね。

――確かに、ラケットの形も少しテニスに似ていますよね。

岡林さん

そうですね。ただテニスと違ってボールに回転をかけることはできず、あくまでボールにラケットの面を当てるのが基本です。だからテニスとはラケットの振り方が違うんですよね。

――スピードボールはどのようにラケットを振るんですか?

岡林さん

自分の正面から横に振る感じです。どちらかというと野球のスイングに似ています。

――競技人口はどれくらいなのでしょうか。

岡林さん

日本の競技人口は約100人と言われています。世界的な競技人口はわからないのですが、2017年の世界大会には日本を含めて15か国が出場していました。

――やはり強豪国はエジプトですか?

岡林さん

はい。エジプトが断トツで強くて、フランスと日本が2位と3位を争っています。

最近では、チュニジアやポーランドも力をつけていますね。ソロ方式では、エジプトに続いてチュニジアが2位になることが多くなっています。

 ※エジプトとのミックスダブルス 

夫・岡林大樹さんとの出会いが、スピードボールを始めたきっかけ

――岡林さんがスピードボールを始めたきっかけを教えてください。

岡林さん

大学3年生のとき、スピードボールをやっている友だちに遊びで教えてもらったのがきっかけです。

わたしは当時スピードボールのことをまったく知らなかったんですが、実際にやってみたら意外と楽しかったのを覚えています。

――お友だちがきっかけだったんですね。

岡林さん

そうです。実はその友だちが夫の岡林大樹なんですけど(笑)。夫は当時からスピードボールの日本代表として活躍していたんですよ。

――なんと……!!

岡林さん

そのあと、夫が出ている大会を観に行ったんですが、試合を観ていたら『わたしも頑張れば日本代表になれるのでは?』と思い始めて。

そこから本格的にスピードボールを始めて、日本代表を目指すようになりました。

――大樹さんともスピードボールとも”運命的な出会い”を果たしたんですね。

岡林さん

そうですね。大会を観に行ったときは夫と付き合い始めたばかりで、わたしがスピードボールを始めれば一緒に練習できるという考えもありました。

夫が世界大会に行くんだったら、わたしも一緒に行きたいというモチベーションもありましたね(笑)。

――始めた当初は難しかったですか?

岡林さん

はい。最初に見たときは簡単に打ち返せると思ったんですけど、ボールに縦回転がかかって角度が少しでも変わると空振ってしまいました。

――そこから徐々に上達されていったんですね。

岡林さん

そうです。スピードボールは上達が見えやすいのがいいところだと思います。

まずはラリーができるようになり、その次は角度がついたボールを打てるようになり、そしていろいろな軌道のボールを打ち返せるようになる。そうやって上達の階段を登っていくのが楽しかったですね。

――本格的に始めてからどれくらいで日本代表に選ばれたんですか?

岡林さん

1年です。成績的にはギリギリのラインでしたけどね。

――1年は凄いですね。

岡林さん

スピードボールを始めるときに『1年で日本代表になる』と目標を掲げていたので、うれしさや満足感はありました。

チャンピオンとして勝ち続けることで「誰かの目標になる」

――2011年からは日本選手権を10連覇しています。チャンピオンとしてのプレッシャーは感じますか?

岡林さん

もちろんです。ここ何年も『今年こそは負けるかもしれない』と思いながら大会に出ています。

それに『わたしは本当のチャンピオンではない』という思いもあるんですよね。

――それはなぜですか?

岡林さん

2011年に初めて全日本女子シングルスで優勝したんですが、実はその前年に、それまで女子の絶対的なチャンピオンだった選手が競技を辞めてしまったんです。

わたしはその選手と公式試合で一度も対戦したことがなかったので、それがいまも心残りではあります。

――なるほど。その選手と試合をしてみたかったという思いがあるんですね。

岡林さん

そうなんです。でも、練習では何度も手合わせしてくれました。

練習試合で初めて1セット取れたときの嬉しさは、いまも鮮明に覚えています。それが競技生活のなかで一番印象に残っていますね。

――2017年に世界選手権のミックスダブルスで銅メダルを獲得したことも、ご自身にとって印象的なのでは?

岡林さん

そうですね。わたしが日本チャンピオンとして出場した初めての世界選手権だったので、『どこまで世界に通用するのか挑戦したい』という気持ちでのぞみました。

――ミックスダブルスは、大樹さんとのペアだったんですよね?

岡林さん

そうです。夫と一緒に出たミックスダブルスで銀メダル獲得を最大の目標にしていたんですけど、結果的にはあと1点が取れなくて銅メダルになってしまいました。だから少し悔しさが残りましたね。

――それでも、夫婦でメダルを取ることは凄いことだと思います。

岡林さん

ありがとうございます。もちろん、夫婦でメダルを取れたことへの達成感はありましたよ。初めて夫婦でペアを組んで出場できたことに嬉しさも感じましたね。

ただ、夫と一緒に出たからこその喧嘩もありました(笑)。

――選手としての今後の目標や展望はありますか?

岡林さん

女子チャンピオンという肩書きをいつまで背負えるか、というところには挑戦したいです。

チャンピオンとして誰かの目標になる立場でもあるので、責任を持って勝ち続けていきたいと思っています。

スピードボールの普及は競技環境や用具が課題

――現在は、ご夫婦で「相模原スピードボールクラブ」の運営もされていますよね。

岡林さん

はい。相模原スピードボールクラブは、わたしと夫が相模原方面に移り住むタイミングで、自分たちが練習できる場所を確保するために設立しました。いまは小学校の体育館を借りて練習しています。

――どんな方が練習に参加されているんですか?

岡林さん

夫の会社の同僚や、相模原の近くに住んでいる大学時代の友だちが中心です。たまに地元の方や体験希望の方も来ますよ。

普段はみんな仕事をしているので、練習は土日に行っています。

――皆さん”スピードボール仲間”なんですね。

岡林さん

相模原スピードボールクラブを設立したことで、仲間と過ごせる居場所をつくれたという思いはありますね。

大会に出場するときも、試合に勝つことより他チームの方も含めてスピードボールの仲間に会えることがモチベーションになっています。

――大切な仲間との出会いも、スポーツの醍醐味ですよね。

岡林さん

そうですね。とくにマイナースポーツはその競技を知っている人の輪が狭いので、一体感が生まれやすいと感じます。

それはスピードボールに限らず、マイナースポーツのいいところだと思っています。

――スピードボールの普及活動には取り組まれているのですか?

岡林さん

いまは町田市に住んでいるんですが、2018年頃から町田市を中心にスピードボールの普及活動に取り組んでいます。

地域で行われるイベントでスピードボールを紹介させてもらったり、ツイッターで知り合いになった方にイベント出演のお声がけをいただいたりしていますね。

――イベントなら初心者も参加しやすいですね。

岡林さん

はい。これまで延べ700名以上の方に、スピードボールを体験していただきました。

ただ、スピードボールの普及には”用具問題”があるんです。

――用具問題とは?

岡林さん

用具が欲しくて協会に問い合わせをしても、在庫がないという状態が続いているんです。

だからスピードボールに興味を持ってくれた人に、競技環境を提供しにくいのがジレンマになっています。

――用具がないと競技をするのは難しいですもんね……。

岡林さん

そうなんです。そういうジレンマを抱えた結果、いまはスピードボールの競技人口を増やすことよりも、体験会の参加者にその場を楽しんでもらうことを大切にしています。

――スピードボールができる場所はどれくらいあるんですか?

岡林さん

全国に10拠点ほどです。東京、神奈川、千葉、埼玉に練習できる場所があって、関東以外だと新潟と大阪にもあるみたいです。

個人的には、スピードボールができる場所をもう少し増やしたいとも思っています。ボーリング場みたいにふらっと行けて、仲間内で遊びながら楽しめる環境があったら理想的ですよね。

まずは日本スピードボール協会主催の体験会に参加してみよう!

――スピードボールはどういう人に向いていますか?

岡林さん

老若男女におすすめのスポーツですが、個人的には10代~30代くらいの男性に向いていると思っています。

余っている力をすべてラケットに込めてくれたら、それだけで楽しめると思うので。

――スピードボールに必要な能力や技術はあるのでしょうか。

岡林さん

思いっきりボールを打つことですね。それができるだけで、速いボールを打てるという武器になります。

――実際に始めたいと思ったときは、何をしたらいいでしょう?

岡林さん

まずは日本スピードボール協会に問い合わせるのがいいかもしれません。日本スピードボール協会では月に1回、千葉県船橋市で体験会を開催しているので。

――千葉県が遠方という場合は?

岡林さん

協会に問い合わせれば、私たちがやっている相模原スピードボールクラブや、そのほかの拠点も紹介してもらえると思います。

だからまずは協会に直接連絡を取ってみてください。

――揃えるべき道具はありますか?

岡林さん

とくにないですね。体験会に行くときに、運動できる服装を用意するくらいだと思います。

――体験会は費用がかかるのでしょうか。

岡林さん

基本的には無料の場合が多いと思います。ただし公共の施設を使っている場合は、施設の利用料が発生する可能性があります。

――最後に、スピードボールを始めてみたい人にメッセージをお願いします!

岡林さん

スピードボールは、ボールが真正面からではなく横から飛んでくるイメージなので、誰もがこれまで体験したことがないような新鮮な感覚を味わえると思います。

ぜひ体験会などに足を運んで、実際に楽しんでいただけたら嬉しいです!

スピードボールを始めるのにかかる費用

スポーツウェア3,000円~
屋内用シューズ2,000円~

※上記はあくまで参考です。

体験会等の問い合わせ先

日本スピードボール協会(月1回、千葉県船橋市で体験会を開催。体験場所を探す場合はこちら)http://www.speedball.jp/
NPO法人日本スピードボール協会(国際スピードボール連盟加盟団体。日本代表に興味がある方はこちら)https://www.japan-speedball.com/

岡林さんの連絡先

ツイッターhttps://twitter.com/yukina_oka
相模原スピードボールクラブhttps://sagamiharasbc.wixsite.com/home

 

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