小学生とお年寄りが一緒にプレイ!?世界一平和な球技「チュックボール」の魅力とは【マイナースポーツ特集#49】

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小学生とお年寄りが一緒にプレイ!?世界一平和な球技「チュックボール」の魅力とは【マイナースポーツ特集#49】

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コートに設置されたネットに強烈なシュートを打ち込むスポーツ「チュックボール」。敵チームへの妨害なし、身体接触なしというルールから「世界一平和な球技」ともいわれています。そのチュックボールの日本代表監督を務めるのが井野大輔さん。プレイヤーとして2014年アジア選手権、2017年東アジア選手権出場を果たした後、2019年の東アジア選手権では代表監督としてチームを率いています。現在も日本代表監督を務めながらチュックボールの普及に力を注ぐ井野さんに、チュックボールの魅力と今後の展望についてお伺いしました。

チュックボールは身体接触禁止の高速球技

——チュックボールとはどのようなスポーツでしょうか。

井野

元々スイスの生物学者が考えたスポーツです。既存のスポーツは運動能力の差で優劣がついてしまうので楽しめない人が出てくる上、ケガも多いという論文を発表されていて、誰もが平等に楽しめるスポーツとして1970年に考案されました。

ハンドボールとバスクペロタ(スカッシュのように壁を介してボールを打ち合うスポーツ)をベースに作られていて、ネットに向けて投げて跳ね返ったボールを相手チームが取れなかったら得点が入ります。

——特徴的なルールはありますか?

井野

他の球技と異なり、他のプレイヤーと接触してはいけないのが大前提です。パスカットやシュートコースを防ぐ妨害も禁止で、ネットから跳ね返ったボールを地面に落とさずキャッチするのがディフェンスとなります。跳ね返ったまま直接キャッチしなくても、トスでつないで最終的にキャッチできればディフェンス成功です。

——コートはどれくらいの広さですか?

井野

バスケットボールのコートとほとんど同じ広さです。コートの両端にネットが置いてあり、どちらのネットにシュートしても構いません。ドリブルは禁止で、パスだけでボールをつなぎます。ひとりのプレイヤーが3秒以上持ってはいけませんし、ボールを持ったまま4歩以上歩いてもいけません。

またパス3回の間にシュートを打たなければならないので、非常にゲーム展開がスピーディです。公式のゲーム時間である15分3ピリオド制の計45分の間に、バスケットボール並に得点が入ります。

——ボールはチュックボール専用でしょうか?

井野

公式のボールもありますが、なかなか手に入りにくいのでハンドボールを使うことが多いですね。ルール上も代用可能とされています。

ハンドボールは一般的に革製ですが、チュックボールの公式球の表面はゴムのような素材でできていて、しっとりとした手触りです。その分回転をかけたり当て方をコントロールしたりはしやすいので、角度がない方向に跳ね返るようなテクニックを使ったシュートも打てます。

選手の個性はシュートにあり、ネットにあわせて柔軟な立ち回りも

——選手のどんなところに個性がでますか?

井野

一番個性が出やすいのはシュートですね。妨害をされないので、いつでもノーマークな状態でシュートできるので、投げ方のクセやボールの跳ね返り方に個性が出ます。僕はボールに回転を掛けて投げるので、ネットに当たってから鋭角に跳ね返ってきたり、逆に勢いが死んで腕の振りに比べてボールの返りが遅くなったりします。反対にボールをキャッチするディフェンスにも個性が出ますね。キャッチが得意な選手、レシーブが得意な選手といった違いがあります。

意外に出るのがコートとの相性です。ネットはゴムの張り具合やネットの劣化具合など、一枚一枚クセが違います。あるネットではバンバン得点を決める選手でも、反対側のネットでは全然決まらないなんてことも珍しくありません。ネットにあわせてその時々でポジションを入れ替えたり、相性のいい選手にボールを集めたりするのも重要です。

——チュックボールをやっていることで身についた能力やクセはありますか?

井野

これはチュックボールあるあるなんですが、たまにバスケをやるとディフェンスしなくなっちゃうんですよ(笑)。チュックボールはパスのスティール(相手チームからボールを奪うこと)も禁止なので、目の前を通るボールに手を出さなくなります。反対に普段バスケをやっている人は、反射的に手を出してしまいますね。

あとは広いコートの中で他のプレイヤーの動きを見ながら動くので、指導先の学校の先生には「空間把握能力が養われますよ」とお伝えしています。周囲に何があるのか見えやすくなって、何が動くのか予測がしやすくなるので、車の運転が得意な人は多いですね。

20代がおじいちゃんに負けるゲーム展開に「面白い!」

——井野さんがチュックボールを始めたきっかけを教えて下さい

井野

15~6年前になりますが、当時のアルバイト先で一緒だった中学校の同級生に誘われたのがきっかけです。当時から今も住んでいる立川のレクリエーション協会の傘下団体の中にチュックボールの同好会があって、そこに参加させてもらった形です。元々私はバスケットボールをやっており、その子から「バスケやってるならできるんじゃない?」と連れて行かれたのが始まりです。

——実際にプレイしてみていかがでしたか?

井野

シュートを邪魔されないのがよかったですね(笑)。元々そんなに運動神経がいいほうではないので、妨害を考えずに打てるのは新鮮でした。また誘ってくれた子とは別の同級生もチームにいまして。いかにも文化系という女の子だったんですが、彼女のシュートで跳ね返ってきたボールが重くて全然取れなかったんです。これが面白くなっちゃって、大会に出るほどハマっていきました。

——衝撃的な出会いだったんですね!大会に出た時はどんな気持ちでしたか?

井野

身体接触禁止のルールなので、出てくるチームの中には小学生チームやおじいちゃんばかりのチームがありました。こっちはバリバリ現役の20代を集めたチームだったので自信あったんですけど、おじいちゃんチームに負けちゃいまして。

バスケならそんなことにはならないですし、そもそも一緒のコートでプレイすることがありません。これは面白い世界だと思い、ますますハマっていきました。

——接触禁止のルールなら、男女も一緒にプレイできそうですね。

井野

日本選手権は「選手権の部」と「親善の部」に分かれていまして、当時の親善の部ではコート内に必ず女性が入っていないといけないというルールがありました。当時の同好会も男女半分ずつくらいのメンバー構成で、ポイントゲッターの女の子もいました。今日本で一番強いのが愛知にあるチームなんですが、そこには女性同士だと物足りないから男子に混ぜて欲しいと入ってくる人もいるくらいです。これも身体接触禁止だからこそできる感じですね。

スポーツビジネスへの興味からチュックボール界の裏方へ

——井野さんが選手として出場していたのはいつ頃ですか?

井野

同好会のときには会長をやっていたりもしたので、そこから考えると10年くらいになります。その間に2014年にアジア選手権、2017年に東アジア選手権へ出場しています。

——日本代表としての出場ですね!代表メンバーはどのように選出されるのでしょう?

井野

2014年は国際連盟から招待をいただいて出場しました。当時代表として出られるメンバーが5人くらいしかいなくて、試合時には他の国からメンバーを借りました(笑)。

2017年の頃は、もう選手兼マネージャーみたいな状態で、どちらかというとマネージャー寄りでしたね。大会が行われる韓国へ若い選手を連れて行きたいと思っていたので、韓国に行けるメンバーの中から最強だろうというメンバーを集めました。現在も各チームからの選抜のような形でメンバーを選んでいます。

——その当時から裏方の仕事に携わってらっしゃるんですね。

井野

チュックボールを始めた当初にやっていたアルバイトが、当時の西武ドームで球団ファンクラブのアルバイトだったんです。その時に興味を持ったスポーツビジネスの活動を、チュックボールを普及させる方向に持ってきた感じですね。

2017年には本当に細かいところまで対応していまして。国際連盟とのやり取り窓口はもちろん、ユニフォームの発注や海外に行ったことがないほとんどの選手のパスポート取得の手伝いや、飛行機の予約も全部やりました(笑)。

——井野さんあっての日本チュックボール界ですね!その後監督にシフトしたきっかけはありますか?

井野

2019年に日本で初めて東アジア大会を開催した時、監督は誰がいいかという話になったんですね。その時にずっとマネージャー的な動きをしていて、全国のチームのメンバーも知っているということで、白羽の矢が立った感じです。今は監督の肩書きでメディア対応や情報発信をやっています。

ただスパッと選手から監督へ完全に切り替わったわけでもないんですね。今も東京のクラブでは自分もプレイしています。

アジアは世界最激戦区、日本の実力は世界ベスト16クラス

——現在の日本のチーム状況について教えて下さい。

井野

現在は愛知、福島、東京、群馬にチームがあります。協会の本部があるのは群馬です。福島が一番大きくて、30人くらいのメンバーが集まっています。毎年3月に日本選手権が行われていて、福島のチームも含めて5~6チームくらいが参加しています。

——世界的に盛んな地域はどちらでしょうか?

井野

ここ何十年もトップを張っているのが台湾です。現在の国際連盟の本部も台湾、会長も台湾の方が務めています。ヨーロッパも強いんですが、アジアは台湾、香港、マカオと強豪国が集まっていますね。

——日本はその激戦区の中にいるんですね。

井野

世界選手権への出場枠はアジアに3つの枠があり、この枠を5~6チームで争います。このアジアの3枠に入る国が、世界大会でもそのままベスト4に入るんですね。なので日本はなかなか世界大会に出場できていません。

——それは厳しい!井野さんから見て、日本のレベルは世界的にどの程度だと思いますか?

井野

フラットに見れば、ベスト16に入れるんじゃないかというくらいですね。アジアではない他の地域だったら世界選手権に出場できていると思います。個々の選手でも、愛知のチームから代表入りした2人は、世界的にすごく評価が高いですね。アジア大会後のパーティでは、ユニフォームを交換して欲しいと行列ができちゃうくらいです。

——すごい!選手間で評価されるとは、本当にレベルが高いんですね!

井野

僕がチュックボールを始める前は、国際試合はなかったんです。せっかく世界大会もある競技なので、若い子が国内だけで終わるのはもったいないと思っていました。実際に世界に出るようになって、自分たちが世界でも通用すると知って意識が変わってきましたね。もっと上達しよう、世界を目指そうという気持ちになってくれているのがとてもうれしいです。

フォーマルとカジュアルの両面から、目指すは年代を超えた幅広い普及

——チュックボールの普及について、どんな形で盛り上げたいと思いますか?

井野

チュックボールが絶妙だなと思うのが、レクリエーションスポーツと競技スポーツの狭間にいるところです。レクリエーションだと物足りない人に対しても適度な強度があります。なので運動神経はよくないけど体を動かすのは好きだとか、メジャースポーツをやっていたけど天井が見えたので別スポーツに転向したいというような人を引き込んでいきたいですね。

——確かに絶妙な立ち位置のスポーツです!

井野

妨害禁止というルールが絶妙ですよね。このルールは教育的にも評価が高くて、小学校でも実際にやって欲しいというお話をいただきます。

実例として、愛知の中学校で選択体育の科目に入れていた時期がありました。ドッジボールで自分に向かってボールを投げられるのが怖くても、チュックボールの跳ね返ってきたボールを捕るのは新鮮という子もいました。体育でチュックボールに触れた流れで、今も愛知のチームでプレイしている選手も多いです。

——競技者としてはどんな人が向いていますか?

井野

現役選手の中ではハンドボール経験者が多いですね。ディフェンス面だとバレーやサッカーのゴールキーパーをやっていた人が上手です。バスケットボールは全体的に動きが似ていますね。小中高で何らかの球技をやっていた子は入りやすいと思います。

とはいえ、小学生からおじいちゃんおばあちゃんまで楽しめるのがチュックボールのいいところなので、誰でも楽しくプレイしてほしいと思います。

——ここまでの普及の手応えはいかがでしょう?

井野

最近はハンドボールのチームから練習に取り入れたいとご連絡をいただいたり、成田のハンドボール協会で子どもたち向けに取り入れたいというお話をいただきました。また静岡のハンドボールチームが使っている体育館でネットを見つけたという話がSNSに上がったので、僕から絡みにいって教えに行ったこともあります。

——他の競技との繋がりからの普及ですね!

井野

以前にはクィディッチ(ハリー・ポッターに出てくるほうきに乗る球技)やコーフボールをプレイしている方たちともお話ができました。今マイナースポーツ同士がどんどん繋がりはじめていて、イベントやらオンラインの観戦会などの普及方法を参考にさせてもらっています。

——最終的な普及の目標はございますか?

井野

僕の中では「フォーマル」と「カジュアル」の2つの軸で考えています。

フォーマルは今までのように競技者として日本代表となって世界を目指すという方向。カジュアルは誰でも楽しめるようにエンタメや遊びの要素を取り入れていく方向です。柔らかいボールだったり小さいコートだったり、子どもやおじいちゃんおばあちゃんも一緒にできるような仕組みを取り入れたいと思っています。

大会自体も遊びの要素があっていいと思います。実際に福島のあるチームにアニメ好きの人が集まって、チーム名も好きなアニメを題材にした名前をつけています。そのまま日本選手権に出場してもいいので、肩の力を抜いて参加してもらいたいと思います。痛車ならぬ「痛ユニフォーム」で大会に参加してもおもしろいですね(笑)。

ちょっと軽く体を動かしに、ぜひチュックボールを体験にいこう

——チュックボールに興味を持った方はどのような始めたらよいでしょうか?

井野

まずチュックボールは道具が手に入りにくく、プレイできる場所が限られています。愛知・福島・東京・群馬の近くにお住まいの方は、SNSで私までお声がけいただければチームに紹介いたします。

井野大輔さんTwitter

https://twitter.com/ino_daisuke1114

——チュックボールをプレイするのに用意した方がいい道具や服装は?

井野

服装はユニクロとかGUなどで売っているスポーツウェアで十分です。場所はほとんどが体育館ですので、室内競技のシューズなら何でも大丈夫です。実際にバドミントンシューズでプレイされている人もいます。

本格的にやるとなると、ディフェンスの時にヒザをつきますので、バレーボール用のヒザサポーターは必要になってきます。

——チュックボールの興味が出た方、始めたい方にメッセージをお願いします!

井野

どうしてもスポーツを体験するとなると、体験入部のようにかしこまってしまいます。チュックボールにはぜひ、ちょっと体を動かしたいとか、新しいスポーツを見てみたいというような軽い気持ちで気軽にきていただきたいと思います。ぜんぜん勇気もいりませんので、ぜひお気軽にお声がけください。

チュックボールを始めるのにかかる費用

スポーツウェア

3,000円~

屋内用シューズ

2,000円~

ヒザ用サポーター

2,000円~

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