飛ぶ!踊る!蹴る!華麗な足技を繰り出す格闘技「カポエイラ」に熱狂せよ【マイナースポーツ特集#44】

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飛ぶ!踊る!蹴る!華麗な足技を繰り出す格闘技「カポエイラ」に熱狂せよ【マイナースポーツ特集#44】

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ブラジルで生まれた「カポエイラ」は、音楽のリズムに乗ってステップを踏み、華麗な足技を繰り広げる格闘技です。アフリカからブラジルへ連れてこられた奴隷が始めたとされるカポエイラは、今では全世界で愛されるスポーツとなっています。

そのカポエイラの魅力に取りつかれ、本場ブラジルで腕を磨いたのが須田竜太さんです。20歳の頃にカポエイラの正式メンバーとして迎えられる洗礼式「バチザード」を受けた須田さんは、その後日本国内で数々のメディア出演や、格闘家への技術指導などで活躍。2016年2月には東京都新宿区に自身の道場をオープンし、後進への指導に力を注いでいます。

日本国内におけるカポエイラの第一人者として確固たる地位を築いた須田さんに、カポエイラの魅力と今後の展望についてお聞きしました。

カポエイラの始まりは奴隷たちが磨いた自由の牙

——カポエイラはどんなスポーツなのでしょうか。

須田

ブラジルで生まれた、ダンスや格闘技などいろいろなものが混ざったスポーツです。元々アフリカからブラジルに奴隷として連れてこられた人々が、自分たちの身を守るために始めたと言われています。ダンスにごまかしながら格闘技の練習をしていたため、ダンスと格闘技が混ざっているのではないかと考えられています。


——奴隷から生まれた格闘技なんですか!

須田

アフリカのいろんな部族がブラジルの農場などに収容された時に、それぞれの部族が持っていたダンスや儀式、格闘技が混ざったと考えられています。護身術としてやっていたという話もあり、面と向かって戦うよりはヒットアンドアウェイで戦うためのスタイルです。

——陽気なイメージがありましたが、歴史的に大きなバックボーンがあるんですね。

須田

今はカポエイラの楽しいところがクローズアップされていますね。当時は抑圧されていた奴隷たちが、いざというときには俺たちはやれるぞ、心は自由だという気持ちをカポエイラを通して心に持っていたんじゃないかという話があります。自由を奪われていた奴隷が、支配者の目を盗んで楽しく牙を磨いていたという歴史があります。

——ここまでは「らしい」というお話が多いようですが、理由はありますか?

須田

当時のブラジル政府が資料を全部焼いてしまったので、カポエイラの歴史を断定できる資料は残っていません。奴隷制度自体がブラジル政府の汚点だったので、ほとんど残されなかったんですよ。なのでカポエイラの研究は、口伝や絵など少ない情報を元に現在も続けられています。

流派は3つ、スポーツとして整備された流派が「ヘジォナウ」

——カポエイラには流派はありますか?

須田

奴隷制度が終わった時点で、それぞれの地域ごとに異なるカポエイラが生まれました。それらをある程度の制度やルールを定めた形にまとめようと動きがあり、一番最初に明確な形を決めたのが、私がやっている「カポエイラ ヘジォナウ」です。一方で、スポーツのような制度を取り入れずに昔ながらのカポエイラとしてまとめようという動きが「カポエイラ アンゴーラ」。その両方のいいところを取り入れようというのが「カポエイラ コンテンポラーニア」です。

——須田さんの流派「ヘジォナウ」にはどんな特徴があるんでしょうか?

須田

ヘジォナウは、当時もっともスポーツ化が進んでいました。開祖が段階(段位)、道場、型、道場訓を作り、ならず者がやっている格闘技というイメージを変えていきました。比較的テンポは早めです。現代では段位を他の格闘技のように帯で区別するようにしています。

——その他の流派の特徴はいかがでしょう?

須田

アンゴーラは段位がなく、帯もありません。床に手をたくさんつける傾向が強く、土臭い動きが多いですね。スポーツより儀式的なイメージを持たれる流派です。比較的ゆっくりなテンポで、音楽のハーモニーを重視します。コンテンポラーニアはヘジォナウ寄り、アンゴーラ寄りとありますが、基本的にどっちもやりますね。世界的にはコンテンポラーニアが主流になっています。

カポエイラには勝敗無し!音楽に乗りジンガを踏み続ける

——基本的なルールを教えて下さい。

須田

常にステップを踏みながら、音楽のリズムにのって技を繰り出します。2人で行う組み手を「ジョーゴ」といい、直径5mの円の中でお互いに技を出しあいます。ジョーゴでは蹴ったり避けたりの攻防を続け、最中はこの円から出てはいけません。出たから負けというわけではないのですが、出たらダサイ、カッコ悪いと評価されます。

——勝敗はどのようにつけますか?

須田

私たちの流派では、基本的に勝敗をつけません。上級者同士は倒し技もあるのですが、一回倒したら終わりではなく、倒れた人が上手にやり返したらカッコイイと評価される場合もあります。多くの場合、やっている本人たち同士で「今ダメだな」とか「今の攻撃はやってやったぜ」とか分かってますね。ただしルールで明確に勝ち負けをつけるのではなく、心の中で思っていればいいというスタンスです。点数制で勝ち負けをつける大会もあったりしますが、主流ではありません。

——他の格闘技との大きな違いはどんなポイントでしょうか?

須田

大きく2つの違いがあります。まずは音楽があるところです。みんなで組んだ円陣の中で行う集会形式の組み手を「ホーダ」と言いますが、音楽が動きを命令するんです。早くやれ、ゆっくりやれ、キレイにやれ、飛べ、倒せ、など。なんとなく流れでやるのではなく、音楽にちゃんとした意味があります。

——楽器を弾くのは専門の演奏者なんでしょうか?

須田

いえ、本気でカポエイラをやる人は、全員楽器をできないといけません。カポエイラにはいくつか楽器がありますが、帯の段階によっては全部できないとダメです。メインとなる楽器は「ビリンバウ」という弓のような楽器です。先ほど説明した命令は、ビリンバウのリズムによっても出されます。一度に三本など、複数のビリンバウが演奏される場合もあり、その場合には一番大きなビリンバウが仕切り役、指揮者になる傾向が強いですね。

——もう一つの違いとはなんでしょうか?

須田

もう一つは「ジンガ」の存在です。ジンガは踊るように左右の腕と足を交互に出すステップです。カポエイラの最中には常にジンガを踏み、止まってはいけません。ジンガはカポエイラの基本ですが、とても個性が出ます。最初は基本を教えますが、やがて手がぶらぶらな人、アゴをしっかり守る人、歩幅が広い人狭い人など、人によって千差万別です。奴隷からの解放を目指していたのに、みんな同じじゃ自由じゃない、奴隷のままじゃないかという、カポエイラの精神がジンガに出ています。

——確かにリズムにのったステップを踏み続ける格闘技は他になさそうです。

須田

他の格闘技では、オーソドックス(右構え)では左手を前に出して右足を後ろに引く半身の構えになります。ジンガは常に左右の手足を交互に出すので、構えが一定ではありません。そこは他の格闘技にはないところですね。

ハマったきっかけは自らの変化「マンガや映画のキャラクターに近づけた」

——須田さんはどんなきっかけでカポエイラを始めたのでしょう?

須田

いくつかの理由が合わさった結果です。当時「オンリー・ザ・ストロング」というカポエイラを題材にした映画を観たこと、ゲームの「鉄拳3」のキャラクター「エディ・ゴルド」がカポエイラを使っていたこと、マンガなどで観たカポエイラが頭に残っていたことなどがありました。さらに元々ダンスをやっていたんですが、カポエイラの動きを取り入れているチームがあったんです。それでカポエイラを習えると知って、実際に習いに行ったらハマった感じですね。結果的にダンスは辞めてしまいました。

——ダンスを辞めるほどハマった理由はどこにありましたか?

須田

最初は、マンガや映画で見たようなカッコいい蹴りやアクロバットができるようになって、キャラクターに近づいていくのが面白かったですね。いろんな動きができるようになっていく自分が楽しかったんです。

——確かにあの動きができるようになると楽しそうです!

須田

またカポエイラは思い切り蹴っ飛ばしたりしないので、なんか「できてる」感じがするんです。上級者が合わせてくれるので、カッコいい蹴り合いができちゃったりするんですよね。そうなるともっとすごい技をやりたいとか目標が見えてきて、続けていればできるようになる道が見えてきました。気がついたらブラジルに行きたいとか、楽器も面白いとか、ジョーゴの駆け引きが楽しいとか、いろんな目標や楽しさが出てきてきましたね。こうなったらもう戻れません(笑)

——普段の生活ではしないような動きが多いカポエイラですが、日常生活で役に立つことはありますか?

須田

転んで立ち上がるとか自分から転ぶとか、いろんな状態に体を動かすので、柔軟性と全身のバランス力がつくらしいです。私はずっとやっているので実感はしていないんですが、習いに来る総合格闘技のチャンピオンが「バランス力がついたおかげで勝てた」と言ってくれました。あとはカポエイラにおけるいい姿勢というのがあり、それを意識すると体幹が鍛えられます。特に背筋をガンガン使うので「背中が割れた」なんていう女性の方もいました(笑)

ブラジル修行は1ヶ月滞在、「日本から来たヤツが相手してやるぜ」と小学生指導も

——現在日本では指導者側におられますが、今でもブラジルへいかれますか?

須田

今はコロナで行けませんが、過去には合計15回くらい、年に1~2度いっていました。一回行くと1ヶ月くらい滞在しますね。片道35時間もかかるので、長く滞在しないともったいないです(笑)。また季節が日本と真逆なので、短期間だと体が慣れません。ブラジルでは夏にイベントが多いので、日本の秋や冬に行って、イベントでがんばるために徐々に体を慣らしていきます。

——ブラジル滞在中はどんなペースで指導を受けますか?

須田

道場に滞在したり、前にあるマンションやアパートを借りて、週3回ほどレッスンを受け、週1回はホーダに参加します。週末は他団体のホーダに出稽古に行きます。また向こうの小学校では授業でカポエイラを教えているんですが、学校でやる昇段式の手伝いをしたりもします。日本から来たヤツが相手してやるぜ、という感じです(笑)。

——ご自身の練習だけでなく、指導側にも回るんですね。

須田

基本的にはレッスンを受けて、あとは向こうの上手いヤツと一緒に練習するのが多いです。立場的に全部練習というわけにはいきませんが、向こうでは遠慮無く自分からやりたいと言える環境になります。

——他にはどんな国でカポエイラは盛んでしょうか。

須田

北朝鮮など特殊な国以外はどこでもありますね。アメリカはメチャメチャありますし、ロシアやイスラエルも盛んです。中国も最近少し出てきているようですが、あまり広まっていない感じですね。アジアでは日本が一番盛んだと思います。

目標は「僕の生徒をどんどん上手にしたい」

——カポエイリスタ(カポエイラの選手)としての目標はありますか?

須田

自分の帯は最高師範ではなく、グループの最高師範になるにはあと3段階上げないといけません。でも自分はそこにいかなくてもいいと思っています。もし昇段しても自分が納得できるかはわからないですし、名誉段みたいなもらい方をしてもそんなにうれしくないと思います。

——ご自身の昇段にはこだわりがないんですね!

須田

そうですね。僕自身が上がるよりも、自分の生徒をどんどん上手にして、生徒が上がってくれればいいと思います。自分がなるよりもずっとうれしいと思いますね。あとは指導者として続く人に出てきて欲しいです。カポエイラだけで生きている人は少ないですけど、僕がここまでできたので、続く人が出てきてくれるといいですね。あんまり儲かってないですけど(笑)。

——日本における普及について目指すところはありますか?

須田

日本におけるカポエイラの認知度を上げたいですね。カポエイラはブラジルを知る窓口としてちょうどいい存在だと思っています。カポエイラの知名度を上げることで、カポエイラそのものやブラジルに対する恩返しができないかという気持ちで取り組んでいます。

——その認知度アップには何が必要でしょうか?

須田

やっぱり一般の人にアピールしていきたいですね。そのためにだったら、何かとのコラボとかいろいろやって、いろいろな人に面白いと思ってもらって、どんどん裾野を広げたいです。うちの道場でもレッスンのレベル段位を細かく分けたり雰囲気を明るくしたりと、気軽に入りやすいような取り組みをしています。今は全国的にそういう気持ちの先生が多いので、とても心強いです。

——業界内で注目されている動きなどはありますでしょうか?

須田

現在、カポエイラを題材にした「バトゥーキ」というマンガが連載中です。これの存在は大きいですね。マニアックですけど、とても面白いマンガです。バトゥーキをきっかけに入門してくれた人もいます。8巻の巻末に僕がコラムを書いていますので、機会がありましたらぜひ読んでみて下さい!

全国に道場あり!まずはGoogle検索から!

——カポエイラに興味を持たれた方はどんな入り方がいいでしょうか?

須田

ぜひGoogle検索で道場を探してみて下さい。全都道府県とはいきませんが、8割くらいの都道府県に道場があります。まずは見学から入ってみましょう。もし近くに複数の道場があるようなら、それぞれ全然スタイルが違うので、見学した上で良さそうなところを見つけるといいと思います。僕の道場は東京都新宿区にありますので、お近くの方はぜひ見学に来てください!もちろん見学無しで体験からもOKです。

須田さんの道場「カポエイラ・テンポ」https://capoeira.or.jp/

——事前の準備は何か必要ですか?

須田

体の準備としては、ストレッチをやっておく程度で十分です。むしろ動画などを見て練習すると変なクセがついてしまうので、後々直すのが大変になります。もし複数の道場を見学するつもりなら、ある程度の段階でひとつに絞った方がいいですね。ジンガひとつとっても道場によって全然違うので、ここと決めた道場のスタイルを学ぶのをオススメします。

——必要な道具はありますか?

須田

特に新しい道具は必要ありません。裸足でやりますので、靴も不要です。足をいっぱい上げるので、短パンは避けた方がいいですね。半袖のTシャツと、長いジャージがあればOKです。

——カポエイラにはどんな人が向いていますか?

須田

可能性の幅が広いので、いろいろな人にオススメできます。全然運動をしていなかった人には変なクセがついていなくて上達が早かったという場合もありますし、ダンスをやっていた人に向いた動きが見つかることもあります。

——他の格闘技経験は活用できますか?

須田

実は最初がちょっと大変です。半身に構える格闘技が多いので、左右対称に動くジンガでつまづきやすいんです。ステップは踏めても、蹴った後にまた半身に戻っちゃったりとか。ただそれを乗り越えると、いずれ元の格闘技の経験とカポエイラが近づくときがあります。上級者は投げ技があるんですが、柔道経験がそこで活きることもありますし、空手の素早い踏み込みがカポエイラの踏み込みと一致する瞬間もあります。

——性別による始めやすさの違いはありますか?

須田

性別は関係ないですね!男性と女性が一緒に蹴りあえるのがカポエイラです。女性特有の柔らかさが活きる場面も多いです。柔らかく相手の裏に回る動きなど、僕よりも女性の方が得意な技もあります。

——年齢はいかがでしょう?

須田

ある程度の年齢以上の方は、運動経験があったほうがいいですね。ジンガでずっと動きますし、柔軟性も身につきにくくなっていきますので、運動未経験だとなかなか大変かもしれません。ただ、うちでも50歳から始めた方もいますし、生徒の最高年齢は67歳の方です。ある程度の年齢以上の方は皆さん「ここまではやりたい」という目標を明確に持たれるので、年代に合わせた指導で、その目標のちょっと上くらいまでは到達させています。

——最後にカポエイラに興味を持たれた方へメッセージをお願いします。

須田

カポエイラは性別を問わずに楽しめるスポーツです。僕の体育の成績は2でしたが、カポエイラを楽しんで続けていたら、いつの間にかいろいろな技ができるようになっていました。さらに昔はひょろひょろだった体もガッシリと大きくなり、久しぶりに会った人には驚かれるほどです。ぜひ体の変化を楽しみながら、一緒に自分の可能性を追求しましょう!

カポエイラを始めるのに必要な費用

ジャージ

1,500円~

カポエイラを学べるオススメのマンガ

バトゥーキ ※1~10巻、以後続刊560円~

須田さんの道場「カポエイラ・テンポ」の料金

1回払い

一般2,000円
5歳~小学生1,000円
中学生・高校生500円
それより上の学生1,000円

回数券

大人(期限無し、10回)14,000円
大学生以上の学生(期限無し、10回)7,000円

月謝

一般13,000円
5歳~小学生7,000円
中学生・高校生5,000円
それより上の学生(29歳まで)7,000円

※月謝の場合、所属支部で練習無制限、月3回は他支部への無料参加可

※ウェア、ロッカーなどレンタル有り

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