まるで空中格闘技!足が命の室内球技「セパタクロー」の魅力【マイナースポーツ特集#40】

趣味

まるで空中格闘技!足が命の室内球技「セパタクロー」の魅力【マイナースポーツ特集#40】

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一度聞いたら忘れられない、ユニークな競技名。「セパ」はマレー語で「蹴る」、「タクロー」はタイ語で「(籐で編んだ)ボール」を意味します。東南アジア発祥のスポーツ、セパタクローは、“空中の格闘技”とも呼ばれる、足を使った室内球技です。

全身の筋肉と関節の可動域を最大限に使いながら小さなボールを蹴り合い、最大球速140kmを超えるプレイを展開するセパタクロー。スポーツの中でも、特に難易度が高い球技と言われています。一度見たら、その迫力に圧倒され、ハマってしまうこと間違いなし!

日本セパタクロー協会の強化指定選手である玉置大嗣さんは、現在「SC TOKYO」に所属しながら、小中学生の育成にも力を入れています。学生時代から本場タイで武者修行をしていたという玉置さんに、セパタクローの面白さ、魅力を伺いました。

イメージは、足でプレイする、超ハードなバレーボール!

撮影:長浜巧明

——「セパタクロー」ってどんなスポーツなんでしょうか?

玉置

簡単に言うと、足で行うバレーボールです。3対3でネット越しにボールを蹴り合い、相手に返します。アクロバティックな動きとシンプルなルールが魅力で、見ているだけでも楽しめるスポーツです。東南アジア発祥で、今は世界中でプレイされているんですが、タイ、マレーシアなどが強豪国ですね。

——バレーボールと似ているとのことですが、ルールはどう違いますか?

玉置

バレーボールと同じく3回以内のタッチで相手コートに返すというルールですが、大きな違いが5つあります。3対3と少人数であること。手や腕を使ってはいけないこと。1人で、連続3回ボールにタッチできること。守備位置のローテーションはないこと。ブロックも1タッチになること。

——なるほど、少人数で競い合うスポーツなのですね。コートはどれくらいの広さで、ボールはどんなものを使用するのでしょうか?

玉置

バドミントンのコートと同じです。ネットの高さは、男子1.52m、女子1.42mで、バドミントンよりも網目の大きなものを使用します。ボールは、もともとは籐で編んだものでしたが、現在の公式ボールはプラスチック製。男子用が円周0.41m〜0.43m、女子用が0.42〜0.44mと、男子用の方が少し重くて小さいものを使用します。

撮影:長浜巧明

 

——ゲームは、どのように進行するのでしょうか?

玉置

サイドにいる選手が、手でボールを投げてトスをします。センターにいるサーバーがその球を蹴り、相手コートに入れてサーブとなります。そこから、ボールが自分たちのコートに来たら3回以内に相手のコートに返します。ボールが床につくと、得点になります。

——思っていたよりもボールが小さくてびっくりしました。

玉置

そうでしょう。だいたい、ハンドボールとソフトボールの間くらいの大きさで手に収まるサイズなんです。軽くて、幼い子が手遊びできるようなボールなんですが、小さいですから、なかなか思った通りには足に当たらず、サッカー経験者でもリフティングは難しいんですよ。試合中は、豪速球で飛んで来りボールが体に当たると、けっこう痛かったりします(笑)

撮影:長浜巧明

オーバーヘッドキック級のかっこよさ!「ローリングアタック」に憧れて

撮影:高須力

——玉置さんは、いつ、どんなきっかけでセパタクローを始めたんですか?

玉置

セパタクローに出会ったのは、大学に入ってからです。中学まではサッカーをしていて、高校はバスケ部だったので、大学の新歓でもバスケサークルを探していたんです。体育館でセパタクローを見て、体験をさせてもらって、即入部を決めました。

——どんなところに魅力を感じたんでしょうか?

玉置

はじめにリフティングをさせてもらったんですが、中学時代のサッカー体験が生きて、すぐにある程度はできたんですよ。だからすごく楽しくて。サッカーのオーバーヘッドキックみたいな、「ローリングアタック」というバク宙でアタックをする技があるんですが、それを決める先輩の姿にも憧れました。

——即入部を決めたポイントは?

玉置

マイナースポーツあるあるなんですが、「頑張ればすぐに日本代表になれるよ!」と言われて、その気になりました(笑)。実際に、自分も大学3年で日本代表に選出されました。

本場タイで武者修行。世界トップレベルのプレイに刺激を受け、プロの道へ

——学生時代からタイで武者修行をされたとか。その時の様子を教えてください。

玉置

初めてセパタクローをするためにタイへ行ったのは、大学2年の時です。だからまだキャリアも1年半とかですね。友達4人で行ったんですが、もう、ボコボコにされて、打ちのめされました(笑)。1人は現地の凄さにメンタルをやられ、さらには食あたりで途中から完全にダウンしていました。でも自分はそれで闘志が燃えたというか。翌年からは1人で行くようになりました。

——どれくらいの期間、滞在したんですか?

玉置

アルバイトして資金をためて、2週間とか、1ヶ月とか。卒業してからは、2ヶ月くらいまとめて行くようになりました。はじめはツテをたどって、だんだん知り合いを増やしていって、そのうち、プロリーグに帯同するようになりました。手伝いをしながら、一緒に練習をしたりして。

——言葉の壁は、大丈夫だったんですか?

玉置

最初はほとんど喋れなかったんですよ。重要単語だけ覚えて、Google翻訳などを使ってコミュニケーションをとっていました。タイの人って、すごく面倒見がよくて優しいんですよ。言葉が通じないストレスもありましたが、さまざまな場面で助けられたし、信頼関係も生まれましたね。

——タイでの経験は今、どう生きていると思いますか?

玉置

始めてすぐに、世界トップレベルのプレイを見たことが、まず刺激になりましたね。「ここに勝たないと世界一にはなれないんだな」と痛感しました。タイでの経験は、世界を明確に目指すモチベーションになっていると思います。

開脚180度! 念入りなストレッチで作った柔軟なカラダが武器に

撮影:長浜巧明

——見事な開脚! プレイを見ていると、玉置さんをはじめ、選手の皆さんの柔軟性の高さに目が釘付けになります。

玉置

体が硬かったらできない、というわけではないんですよ。ただ、柔らかいに越したことはないのは事実ですね。下半身を中心に、関節の可動域を広げるストレッチをしています。

——やはり、準備運動はストレッチが中心になりますか?

玉置

そうですね。どんなスポーツでもストレッチは大切だとは思いますが、ここまで念入りにするスポーツは、セパタクローが一番かもしれないですね。ペアストレッチをすることが多いのですが、相手にガッツリ押してもらいながら、自分の限界を超えていきます。自宅でも、毎日欠かさずストレッチですね。

——セパタクローの難しさって、どんなものでしょうか?

玉置

サッカーボールよりも断然小さなボールでオーバーヘッドキックをすることを想像してみてください。難しいでしょう? リフティングができたとしても、レシーブの技術はまた違って、飛んでくるボールをうまく上げるのも難しいんですよ。

——うーん、聞いているだけで難しそう! 素人にはハードルが高いでしょうか。

玉置

アクロバティックな動きが特徴ですが、繊細なボールタッチも求められるのがセパタクロー。難易度は高いとは思いますが、でもその分、できるようになった時の喜びも大きいんです。悔しさをバネに、のめり込んでしまうという人は多いですよ。

——セパタクローの醍醐味は、どんなところですか?

玉置

僕はサーバーなので、スピードのあるサービスエースを取ることができたとき。また、リカバーし合って、チームプレイを感じられる瞬間。個の技術が目立つ競技ではありますが、コミュニケーションは密に、お互いの緊張感や呼吸を感じながらプレイする、チームとしての楽しみもあります。

——セパタクロー選手あるあるの癖ってどんなものでしょうか?

玉置

ちょっとでも体が凝り固まってくると、気持ち悪いから、すぐストレッチをしたくなる。あとは、スマホなど、ものを落としてしまった時に、さっと足でワンクッションさせる、とかですかね(笑)。

怪我で日本代表落ちも……。挫折を経て復帰した今、セパタクローの未来に貢献したい

——大学在学中から日本代表に選ばれています。トップ選手としての自負は?

玉置

大学3年生から、アタッカーからサーバーにポジションが変わったのですが、その年の秋には世界大会に連れて行ってもらえたので、とにかくラッキーだったと思います。今も、自分としては、トップ選手だとは思っていません。未熟ながらも可能性で選んでいただいたので。いい環境で育てていただいたことに感謝しています。

——2017年には、膝の大怪我で代表落ちを経験されていますね。

玉置

2017年1月に膝の十字靭帯を断裂しました。プレイができないなか、何かできることはないかと考えて、自分が所属する「SC TOKYO」の下部組織として「SC TOKYO レゾンデートル」を作ったんです。小学生世代からコーチングをすることで、タイで学んできたことをきちんと伝え、未来のセパタクローを発展させられたら、と。

——その後、2019年に強化指定選手に復帰されました。現在はどのように活動されているのでしょうか?

玉置

ふだんは、フリーランスとして働いているので、仕事の後に週に3、4回、自身のセパタクローの練習と、その合間に子どもたちのコーチもしているという感じです。今はコロナ禍で、なかなか思うように子どもたちと練習ができないのが残念ですね。

——働きながら選手としても活動し、子どもたちのコーチングまで。ハードスケジュールですね。

玉置

実際に、選手をやりながらコーチも続けるのは、大変だなと感じています。しかも2019年には結婚して子供も一人いるので面倒も見なきゃですし、共働きなので見送りやお迎えなんかも分担しています(笑)。でも、誰かがやらないと、セパタクローの認知度も上がりません。今は、とにかく応援してくれる人、セパタクローを知っている人を増やすことが、自分に与えられた使命だと思っています。

——今後は、どのように日本のセパタクローを盛り上げていきたいと考えていますか?

玉置

どうしたら、もっとセパタクローを知ってもらえるか。YouTubeや、ブログなどもやっているのですが、自分ひとりではできることも限られているので、理想としては、プロリーグのようなものができて、エンタメとしても魅力のある競技であることを伝えていきたいですね。

——選手としての、今後の目標を教えてください!

玉置

2026年、愛知県名古屋市で、セパタクローのアジア大会が開催されるんです。そこで優勝することが、今の最大の目標ですね。

少人数からはじめられる! セパタクローに挑戦してみたくなったら 

撮影:高須力

——玉置さんは大学のサークルでセパタクローに出合ったということですが、一般的にはなかなか接する機会の少ないスポーツです。やってみたくなったら、どうしたらいいのでしょうか?

玉置

まずは、地域でセパタクローの活動があるかどうかをネットなどで調べて、見学に行ってみるといいと思います。ただ、動きの難易度が高いスポーツなので、すでにやっている人たちの中に急に入ると、レベルの差を感じて、挫けてしまうこともあると思うんです。

——確かに。テニススクールみたいに「初心者から教えます」というセパタクロースクールは少なそうですもんね。

玉置

そうなんですよ。そもそもやっている場所はまだ少ない。でも、実際に見ることはいいことなので、ぜひ実物を見学してもらいたいのですが、初心者がいきなりやってみるのはハードルが高い。だから、やりたい仲間を集めて、新しく立ち上げてみるというのも手です。

——なるほど! それがやりやすいのは、少人数スポーツならではですよね。

玉置

体育館で、まずはリフティングから行って、レシーブ、トス、アタックの練習をやってみる。上達したら、バトミントンコートを借りてみたらといいと思います。

——コーチがいなければ、ネットで動画などを参考にするのもいいですね。セパタクローを始めるために必要な道具は何ですか?

玉置

まずはボールと、シューズは、とりあえずは運動用なら何でもいいんですが、やりやすさを追求するなら、よく使う足の内側インサイドが平らになっている専用の「ナンヤンシューズ」を使ってみてください。見た目よりもちょっと重いんですが、蹴りやすいですよ。

——これからセパタクローを始めようと思う人に、アドバイスをお願いできますか?

玉置

まずは、やってみて、楽しむことが一番! 小さなボールを足に当てるだけでも最初は難しいと感じるかもしれませんが、蹴るイメージがつかめたら、どんどんスキルアップしたくなると思います。ポジションには向き不向きもあるので、仲間でいろいろと工夫をしてローテーションをしながら、自分が一番夢中になれる動きを見つけて、追求してみるといいと思います。

——最後に、玉置さんにとって、セパタクローとは?

玉置

一生やっても、完成しないもの。フィジカルも、メンタルも、チームプレイとしても、上には上がある。難しいです。でも、だから楽しい。一生追求していきたいスポーツですね。

セパタクローを始めるのにかかる費用

ボール約4000円〜
ナンヤンシューズ

約3500円〜

施設利用料1000円〜 ※施設により異なる

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