その過酷さはキング・オブ・スポーツ!「近代五種」でオリンピックを目指す選手の鍛錬とは【マイナースポーツ#36】

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その過酷さはキング・オブ・スポーツ!「近代五種」でオリンピックを目指す選手の鍛錬とは【マイナースポーツ#36】

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フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃、ラン)の5種目で競う「近代五種」。1人の選手が全種目をこなすことから、「キング・オブ・スポーツ」と称されています。

今回お話を伺ったのは、全日本選手権大会の3連覇を達成し、2016年のリオオリンピックへの出場を果たした岩元勝平選手。2021年の東京オリンピックへの出場も期待されています。

世界との距離を縮め続ける岩元選手に、「近代五種」を始めた経緯やその魅力、世界と戦う喜びと苦悩などをお聞きしました。

1人で5種目をこなす「キング・オブ・スポーツ」

――「近代五種」とは、どんな競技ですか?

“岩元”

1人の選手が1日かけて、フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃、ラン)の5種類の競技で戦う複合競技です。全く異なる競技に挑戦することから、「キング・オブ・スポーツ」なんて呼ばれることもあるんですよ。

――1人で5種目とは驚きです! 昔からある競技なのでしょうか?

“岩元”

近代オリンピックの父・クーベルタン男爵が考案したといわれています。オリンピックの正式種目となったのは、1912年のストックホルム大会から。当初は1日1種目、5日間かけて競技が行われていましたが、1996年のアトランタ大会以降は全ての競技を1日でこなすように変わりました。

――オリンピック競技ということで、世界的には知名度は高いものでしょうか?

“岩元”

日本ではまだまだマイナーかもしれませんが、ヨーロッパなんかではクラブチームも何個もあって、けっこう盛んな競技なんですよ。

――5種目をどうやって競い合うのでしょうか?

“岩元”

水泳、フェンシングランキングラウンド、フェンシングボーナスラウンド、馬術、レーザーランの順で競技を行います。小さな大会だとフェンシングボーナスラウンドが省略される場合もありますが、水泳、フェンシング、馬術はそれぞれ基準点からの加点・減点で合計点を競います。その得点順でレーザーランがスタートし、ここでの着順が最終的な順位になります。

――それぞれのルールをお聞きしたいです。まず水泳からお願いします。

“岩元”

200m自由形のタイム走です。2分30秒を250点とし、1秒あたり2点増減していく仕組みです。

――2つ目の競技はフェンシングランキングラウンドですね。

“岩元”

全身が有効面となり、そこに対して突きを行う「エペ」で戦います。1分間1本勝負の総当たり戦です。勝率70パーセントの250点が基準点となって、1勝すると6点加算されていきます。1分間で勝負がつかない場合は、どちらも負けということになるので駆け引きや攻撃力が要になってきますね。

――省略される場合もあるフェンシングボーナスラウンドは、どんなルールなんでしょうか。

“岩元”

最初のフェンシングで出た順位の下位同士で対戦をしていきます。30秒1本勝負の勝ち残り戦です。1勝ごとに1点獲得でき、フェンシングランキングラウンドとの合計点がフェンシングの得点となります。

――次は馬術ですね。

“岩元”

与えられた馬で障害を飛び越える競技です。障害を15回飛び越える競技で、300点満点からの減点方式となってます。障害の前で止まったり、障害を避けてしまったりしたら減点されます。

――馬は選べるんですか?

“岩元”

いえ、抽選で決まるんです。試合前に20分間だけアップの時間が与えられるので、そこで馬の性格や癖を見極めてコントロールしていきます。

――そして最後はレーザーランですね。射撃とランが組み合わさった競技なのでしょうか?

“岩元”

当初は射撃とラン別々の競技だったんですが、ルール改正によって今はランとレーザーピストルでの射撃を交互に行う競技に変わりました。

――どんなルールですか?

“岩元”

射撃後、800m走を4回行います。射撃は的に5発命中した場合、または50秒経過した時点で走り出せますが、オリンピック選手だと大体10秒前後で命中させますね。

――走った後は息が上がったりと集中力が途切れてしまいそうですね。

“岩元”

そうなんです。あと、やっぱり緊張感もすごいですね。これまでの合計得点順にスタートしていくので、順位が入れ替わったりと見ている側も楽しいと思いますよ。

苦悩は5倍だけど、喜びと達成感も5倍

――岩元さんが「近代五種」を始めたきっかけを教えてください。

“岩元”

高校時代、水泳の大会で自衛隊体育学校のスカウトの方に声をかけてもらったんです。

――スカウトが見に来るくらいの有名な選手だったんですね。

“岩元”

いえ、全然です。幼稚園からずっと水泳をやっていたんですけど、成績はそこまで振るわずでした。全国大会に出るか出ないかくらいの選手でしたね。

――スカウトされた時の気持ちって覚えていますか?

“岩元”

「近代五種」のこと、全く知らなかったんです。だけど当時は、水泳をやめたくはなかったんです。何か違う新しいスポーツをやってみたいとも思っていたので、挑戦することを決めました。

――水泳選手から「近代五種」の選手へ。そういう選手は多いんでしょうか?

“岩元”

ヨーロッパだと小さい頃から競技を始めている選手が多いんですが、国内だと水泳出身者が8〜9割くらいですね。大人になってからだと、水泳の技術を伸ばすのが難しいことが背景にあるのかもしれません。

――なるほど。水泳以外は未経験だったんでしょうか?

“岩元”

ランはもちろんしたことありましたが、フェンシングや馬術、射撃は初めてでした。特にフェンシングと馬術を自分のものにするのには時間がかかりましたね。

――難しいと感じる部分はどういった点ですか?

“岩元”

馬は一頭一頭性格が違えば癖も違うんです。頭もいいので、こっちの性格もわかっていバカにしたりすんですよ(苦笑)。練習によって乗りこなし方やムチの使い方などを習得し、なかなか乗らせてもらえなかったところから、馬をコントロールできるようになっていくのは楽しかったですね。

――フェンシングはいかがですか?

“岩元”

動きも道具も初めてのことだらけだったので、最初は不安しかなかったです。これも反復練習することで、瞬発力や攻撃方法を身につけられたと思います。できないことが多い分、できることが増えていくので、それは喜びであり楽しみでもありますね。

――水泳は得意分野だと思いますが、射撃やランはどうでしたか?

“岩元”

自衛隊体育学校に入った時から得意な方でした。当初から射撃も当てられていたし、ランも昔から得意だったので自信がありました。

――水泳の経験がほかの競技にいきたことってありますか?

“岩元”

鹿児島実業という、スポーツの名門と言われる高校出身なのですが、厳しい環境下で水泳を続けてきたので、それは役立ったと思います。目標を叶えるために、どんな壁や苦悩も乗り越えるというか。根性論ですけどね(笑)。

――「近代五種」だと、その壁や苦悩が5倍になりそうですね。

“岩元”

そうですね。だけど、スポーツを身につけて成長できるという楽しさも5倍です!

――1人で5種目を行う魅力ってなんだと思いますか?

“岩元”

得意種目をひたすら伸ばすのも、苦手種目を作らないというのも大事だと思っているんです。どれか1つだけ秀でていたとしても「近代五種」という競技においては勝てない。だから自分の強み、弱みを知り、勝つために何をするかがはっきり出てくるスポーツなんです。そういうのを考えて、1つ1つの競技に向き合うのも楽しいですね。

――1人で5種目を行う上で大切なことは?

“岩元”

1種目のフェンシングは得点が大きいので、勝率が伸びないと優勝から遠のいてしまうんです。もしそこでうまくいかなくても、そこで落ち込んでしまってはダメなんです。切り替えてほかの競技に響かせないことが大切だと思います。

――競技と向き合う中で心が折れたりは?

“岩元”

5種目すべてが異質な競技なので、やっていても楽しいですよ。水泳やランなどの体力競技もあれば、フェンシングや射撃といった技術競技や、動物を使った競技まである。5種目競技することは、やっぱり5倍楽しみがあるですよね。

――見る人にとって近代五種の楽しみ方は

“岩元”

最後のレーザーランですかね。10人抜きするような選手もいますし、最後にゴールテープを切った人が優勝とわかりやすいので、見ていておもしろいと思います。

魔物が住むといわれるオリンピックへの挑戦

――練習場所やトレーニング方法を教えてください。

“岩元”

自衛隊体育学校に所属しているので、駐屯地にある施設で練習しています。監督やコーチの指導の元、1日に3〜4種目をベースに日々練習に励んでいます。

――10年以上も「近代五種」の選手として活躍される中で、どのように練習と向き合っているんでしょうか?

“岩元”

どこを伸ばしたらいいかって悩む時期もありました。特に技術種目の練習って終わりがないんですよね。そうした中で、練習を重ねていくうちに自分の強みが捉えられるようになりました。

――ご自身の強みはどんなところですか?

“岩元”

緊張してもいつも通りの力を発揮できるところですかね。「近代五種」をやるようになってから考え方が変わったんです。水泳選手時代は、緊張して大切な試合で結果を出せなかったのですが、今は競技一つ一つを楽しみながらやろうと。そう思ってからは緊張しなくなりました。

――「近代五種」を始められてから4年で全日本大会制覇されています。当初から手応えや自信はあったんでしょうか?

“岩元”

始めたばかりでがむしゃらに練習してました。初めて行う競技もあって楽しくて夢中だったんです。練習するうちに、ちょっとずつ手応えと自信を得られるようになって、3年目のとき、全日本大会で3番手になったんです。だから4年目は優勝する自信と確信はありましたね。

――以降は、世界も視野に入ってきた?

“岩元”

競技を始めって5年目くらいの時、ルール改正で射撃とランを交互に繰り返すレーザーランに変わりました。僕たちアジア勢はこれに早く対応できていたので、海外の大会でも上位に食い込んでました。だから世界を意識し出したのもこの頃ですね。

――2016年にはリオデジャネイロオリンピックにも出場されました。

“岩元”

大会の直前に決まったということもあって、体も心も準備万全とまではいきませんでした。結果は29位。悔しさしかないです。

――2021年の東京オリンピックへの出場も期待が集まってます。

“岩元”

出場できるなら、メダルは確実に狙っていきます。前回の出場で、オリンピックの独特な雰囲気はわかったので、実力をしっかり出せるようにしたいですね。

――雰囲気って、他の大会と違うものでしょうか?

“岩元”

他の選手がおっしゃるようにやはり、オリンピックには魔物がいます。気持ちも高ぶっちゃうし、自分が自分でいられなくなるくらい焦った部分もありました。

――日本を背負うプレッシャーは計り知れないと思います。

“岩元”

いろんな方の協力をいただき、とてもお世話になっているので、どうしてもいい成績を残して帰らなきゃいけないという気持ちはありました。リオで最後にしようと思っていたんですが、みなさんの後押しや期待もいただいて。だから最後の集大成じゃないですけど、自国の東京で僕の姿を見せられたと思っています。

子供のうちから始めれば世界も狙える!

――「近代五種」を未経験でやる人はいますか?

“岩元”

海外だと10歳前後からスタートする人が多いですが、日本だと18〜19歳から始める人が多いですね。選手には水泳経験者が多いですが、小さい頃から始めるとすごく有利なスポーツだと感じています。フェンシングや馬術、射撃といった感覚が要となる競技なので、早いうちから感覚を養えたら世界を目指せると思います。

――もし「近代五種」を始めたい場合、まず何からスタートすればいいですか。

“岩元”

「近代五種」はたくさんの道具も必要だし、特に馬術は費用が結構かかるので、まずは水泳とレーザーランの「近代3種」から始めるといいかもしれません。

――どう始めたらいいでしょうか。

“岩元”

今は大会やイベントがあるので、まずはそこにエントリーしてみるといいと思います。射撃の練習はなかなか難しいですが、水泳とランさえできれば「近代3種」を楽しめると思います。ここで成績を残した選手が、「近代五種」に移って活躍したという実例もあるようです。

――競技を続けるコツやヒントはありますか。

“岩元”

僕は小さい頃からオリンピックに出るのが夢でした。そういう目標があったら、ずっと競技に向き合ってこられました。だからタイムを伸ばすとか、大会に出るとか、目標を持つことかなと思います。

――「近代五種」の普及についてのお考えをお聞かせください。

“岩元”

今もなお、「近代五種」を知らない方がたくさんいらっしゃいます。だから、自分が東京オリンピックに出ることで、しっかりと日本中に広めていきたいです。僕の姿をみなさんに見ていただいて、「近代五種」の魅力を知ってもらえたらと考えています。

――「近代五種」を楽しんでみたいという人にメッセージをお願いします。

“岩元”

東京オリンピックで「近代五種」を見てもらえたら、より身近に感じてもらえると思います。多彩な技術に触れられるし、最後まで順位が入れ替わって臨場感もたっぷりです。そこでもし競技を始めたいと思われたら、すぐにできる水泳とランからスタートしてみてください!

「近代五種」を始めるには?

まず「近代3種」の大会やイベントにエントリー

エントリー方法

日本近代五種協会のHPから申し込み

 

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