1試合中の走行距離13km!日本代表キャプテンが語る「オーストラリアンフットボール」の魅力【マイナースポーツ特集#39】

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1試合中の走行距離13km!日本代表キャプテンが語る「オーストラリアンフットボール」の魅力【マイナースポーツ特集#39】

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ラグビー場をはるかに超える広さのフィールドを駆け抜ける球技「オーストラリアンフットボール」。1850年代後半にオーストラリアで生まれ、世界60ヶ国でプレイされる国際的なスポーツです。

そのオーストラリアンフットボールの日本代表に、四大会連続で選出されたスタープレイヤーが榊道人選手。2008年には代表チーム「サムライズ」のキャプテンを務め、2005年・2008年には世界選抜にも選出された日本オーストラリアンフットボール界を代表する存在です。

現在はトッププレイヤーとして活躍する一方で、教室や講演などの普及活動にも尽力。そんな榊選手にオーストラリアンフットボールの魅力と、今後の展望についてお聞きしました。

1試合中の走行距離は12~13km!クリケット場を使う高速のフットボールゲーム

——オーストラリアンフットボールとはどんなスポーツですか?

オーストラリアンフットボールは、オーストラリアで最も人気のあるスポーツといわれています。160年くらい前からオーストラリアでプレイされており、プロリーグの人気が非常に高い競技です。

——オーストラリアというとラグビーのイメージが強いですね。どんな違いがありますか?

楕円球を使うのは同じなんですが、大きさがラグビーより一回り小さいですね。ラグビーはゴム製のボールが増えてきましたが、オーストラリアンフットボールは伝統的に皮のボールを使っています。グラウンドも長方形ではなく、オーバル(楕円形)のクリケットグラウンドを使います。広さはラグビー場の倍くらいですね。

画像引用:https://melos.media/hobby/31562/


——ラグビー場の倍!広いですね!

選手人数もラグビーは15人ですが、オーストラリアンフットボールはフィールド18人とベンチ4人の計22人です。選手交代はプロリーグで80~120回の回数上限はあります。ほとんどフリーに交代できますね。

——試合のルールを教えてください。

ボールをパスやランで進めていき、フィールドの端にある4本並ぶポールのうち、真ん中2本の間にキックで蹴り込んで得点を獲得します。ゴールは転がしていれてもOKで、真ん中2本の間を通ると6点。両端のポールとの間を通ったり、ボールを相手に触れられちゃうと1点になるので、ほとんど失敗です。

——広いフィールドを移動するパスやランに特徴はありますか?

パンチでボールを押し出すハンドパスかキックを使います。ラグビーのように投げてパスはできませんが、360°どの方向にパスしてもよいので、フィールドを広く見渡す視野が求められますね。ランはラグビーのようにボールを手に持って走るんですが、15mごとに一回地面にバウンドさせないといけません。

——ボールを持つ相手を止めるには、タックルをしてもいいんですか?

はい。肩から下、ヒザより上のエリア内ならタックルしても大丈夫です。肩に手がかかるとハイタックルという反則になるので、そこはラグビーよりも厳しいですね。

——おお、激しいルールですね。フィールドが広く、相当動きますよね。

そうですね。1試合で12~3キロは走ると思います。ポジションによって走る距離が違って、フルフォワードといわれるフォワード側の選手と、フルバックという一番バックスの選手は空中戦のコンテストがメインになるので、そこまで走りません。中盤のミッドフィールダーが一番走ります。

——1試合で12~3キロ!

はい。今はAFL(オーストラリアのプロリーグ)では点数が多い試合をファンが喜ぶというデータを取っているので、バスケットみたいに展開の早い試合を好む傾向がありますね。12~3キロ走るにしてもロングでダラダラ走るのではなく、短距離を全力疾走するほうが多いです。1試合あたりの得点数はプロで100点前後になっています。

——榊選手は、その一番走るというミッドフィールダーですよね?

はい。その中でも、真ん中のローバーというポジションが多いです。ただ、ずっと全力疾走し続けるのは厳しいので、グラウンド内でポジションをローテーションしています。今は各選手にGPSがつけられてて、時速何キロでどれくらいの距離を走っているのかバレちゃうので(笑)選手もかなりプレッシャーがあります。

——それは厳しい!サボれませんね!

オーストラリアンフットボールのために仲間と起業!普及活動にも尽力

——日本のプレイシーズンについて教えてください。

日本では4月から12月くらいがシーズンで、1月から3月がオフです。AFLのシーズンが4月から9月なので、日本もそれに合わせています。ただオーストラリアとは季節が逆なので、夏は暑すぎちゃって。なので8月はリーグが止まります。

——試合場はどのような場所でやっていますか?

日本のリーグでは正式なオーバルのグラウンドを取れないので、ラグビー場をお借りして9人制でやっています。場所は都内を中心ですね。近郊ですと川口や横浜のほうでやります。

——国際大会は18人制とのことですが、感覚の違いはありますか?

9人制のほうがひとりで分担するエリアが大きいので、よりマルチに動けるプレイヤーが活躍できる傾向がありますね。ただ国際大会は正式ルールの18人制でフルオーバルのグラウンドを使うので、国際大会の前にはきちんとした大きなグラウンドを借りて合わせる練習はしています。

——現在日本ではプロリーグはありませんが、選手の皆さんは普段何をされていますか?

今のリーグは社会人と学生が同じリーグでやっています。学生はもちろん学校にいっていますし、社会人はそれぞれの会社なりで仕事をしています。

——榊選手ご自身も普段はお仕事があって、休日に練習されているのでしょうか。

私は日本オーストラリアンフットボール協会で普及活動も担当しているので、その協会の仕事が半分くらい。あとは自分で仕事を選んでいかないと生活を続けられないので、自分で会社を立ち上げました。オーストラリアンフットボールの子ども教室などは平日が多いので、時間を調整しやすいようにしています。

——会社を立ち上げての活動の時間を捻出されているとはすごいですね!

オーストラリアンフットボールの仲間と2人で会社を作りました。いずれはオーストラリアンフットボールだけで食べていけるようにスタッフを組んでいこうと思っています。

大学卒業後の海外移籍で徹底した科学トレーニングを体験

——榊選手ご自身がオーストラリアンフットボールに出会って、競技を始めたきっかけを教えてください。

きっかけは大学でした。皆さんご存じの新歓の時期に勧誘されまして、初めてオーストラリアンフットボールをスポーツバーで見せていただきました。自分の知らない世界で人気のスポーツがあると知り、新しいチャレンジをしたいと思ったのがきっかけでしたね。

——以前には別のスポーツをやっていたんですか?

小さい頃はサッカーをやっていて、高校三年間はずっとボートをやっていました。

——ボートとオーストラリアンフットボールにはあまり共通点が無さそうなイメージです。

そうですね、直接何かスキルが役立ってることはないんですけど、タイムを測るような競技は球技とはタイプが違うので、両方体験できたのはよかったですね。

——スポーツに無駄はありませんね。ちなみにサッカーなどのスポーツから転向したほうが入りやすいんでしょうか。

それがそうでもなくて。同じフットボールのくくりでも、ラグビーやサッカーをやっていた方って、どうしても蹴り方にクセがついちゃうんです。オーストラリアンフットボールはまっすぐボールを落としてまっすぐ蹴るのが基本なのですが、蹴るときにひねりが入ってしまったり。柔道やっていたプレイヤーとかもいるんですけど、そういった球技未経験の方のほうがすんなりオーストラリアンフットボール式の蹴り方に入れている気がします。

——大学で始められた後、海外でプレイされていた時期もあるんですよね。

はい、2年間はオーストラリアでプレイしていました。国際大会が4年生の時にあたんですけど、その頃にちょっと声を掛けていただいて、卒業してからオーストラリアにいっていました。AIS(オーストラリア国立スポーツ研究所)でやっている、AFLに入る前の事前キャンプみたいなものに参加させてもらって、そこからエッセンドンボンバーズというプロクラブの練習生にしてもらえました。

——おお、すごい! 本場ですね!

できればプロリーグの二軍みたいなところでプレイしたかったんですけど、日本でいう所の独立リーグみたいな所のチームに声をかけてもらい、そこで1年プレイしています。

——日本とオーストラリアのプレイ環境にどんな違いがありましたか?

日本とは競技人口がずいぶん違うので一概には比べられませんが、本当にいい施設で練習できたので環境はまったく違いました。例えばトレーニングするにしてもストレングスはこの方、ランニングはこの方、タックル練習は格闘家を呼ぶなど、スタッフの充実度が違いましたね。

——かなり細分化されていますね!練習は厳しかったですか?

オーストラリアはトレーニングがかなりコントロールされていて、辛いんですけどむちゃくちゃ辛いわけじゃないんですよ。辛くなったら今日はこの人アウトっていうのが管理されているので。またプレイヤーが飽きないようにコーチも毎回トレーニング場を変えるんですね。日本でいう駒沢公園みたいな公園で練習したりと、モチベーション維持はすごく勉強になりました。

——オーストラリア人に囲まれた練習、周囲はみんな大きかったんじゃないですか?

すごいですよ(笑)僕の身長が166cmしかないのに、周りの平均身長が182~3cmくらいなので、プロリーグに入ると一番小さかったです。ただ、最近では少しずつゲームスピードが上がっていて、今168cmの選手がプロに在籍しています。

——先ほどおっしゃっていたスピーディな展開につながりますね。

そうですね。戦術の流れなんかを見ると、日本人のようにスキルのある小柄なプレイヤーに向いたチャンスが広がってきているなと感じます。

すっかりハマったオーストラリアンフットボールでうれしい瞬間は「勝ったときだけですね(笑)」

——大学時代に勧誘されてすっかりハマったオーストラリアンフットボールの醍醐味はどこにありますか?

プレイの自由度がすごく高いので、いろんな選択肢の中から正解を見つけていくプロセスが面白いですね。プロリーグではプレイの一つひとつに、どういう意図のプレイだったかというレビューがつきます。そこに選手の特徴が出ますし、それをチームで組み合わせていってチームの戦い方を作っていくのが面白いですね。

——日本のスポーツではまだまだ根性論の考え方がすごく多いと思うんですが、お話をお伺いする限りはかなり科学されたスポーツだと感じました。

オーストラリアのスポーツ全般において進んでいるポイントだと思います。あとはあちらはモチベーション管理がすごく得意で、重視していますね。スキルやフィットネスはみんなトップレベルなので、周りのモチベーションをあげられるような選手は評価されます。プロのクラブでは本当に人間味のある立派な方ばかりでした。

——実際に今日本のトップ選手としてプレイされていて、プレイしてよかったという瞬間はありますか?

本当に勝った瞬間だけですね(笑)トレーニングではつらいことも多いんですけど、勝ったときはやってたことの何が勝ちにつながったのかを探すのに、すごくモチベーションが高くなります。そういうとこは報われたなあと思いますね。

——反対にオーストラリアンフットボールをやっていることの苦労はありますか?

オーストラリアンフットボール自体ではないですが、日本の環境がまだまだ整っていないので、皆様に広く知っていただいて、いろんな方に参加してもらったり見てもらったりして、応援していただきたいと思いますね。規模が小さいのでもっとプレイヤーを受け入れたいと思っています。

——オーストラリアンフットボールをやっているからこそのクセみたいなものはありますか?

難しい質問ですね(笑)街中で車を運転したり歩いたりするとき、あの人にパスするにはどうしようかなと考えることはありますね。ハンドパスがいいのか、キックがいいのか。練習でも選手のスピードだったり身長だったりはバラバラなので、この人の身長でペースだとこのあたりに出しておけばいいかなとか考えちゃいます(笑)

——おお、みなさん同じようなクセがついちゃうんですかね。

いや、やってますって人には会ったことありません(笑)後輩や他の選手にはイメージトレーニングになるって話はしてるんですが、なかなか浸透してくれません(笑)

コロナ影響も「日本人の力を証明したい」目指せ国際大会トップ4

——普段の練習についてお伺いします。日常的にはどんなスケジュールで練習されていますか?

日本に帰ってきてからは自分でフィジカルやランニングのメニューは作ってますね。スキルトレーニングだったりチームトレーニングは、今年はコロナの影響で土日だけになってしまいました。以前は火・木の夜もスキルトレーニングをみんなでやってました。

——コロナの影響は大きいですね。

かなりあると思いますね。オーストラリアンフットボールはコンタクトスポーツですし。また僕らもプロではないので常にクラブで行動しているわけではなく、仕事なり学校なりに行った人が集まってきます。みんなクラブに迷惑かけないように、普段の生活から我慢してるんじゃないかなと。私自身も気をつけています。

——試合日程にも影響ありますよね。

2020年12月27日にリーグの優勝決定戦があったんですが、東京-大阪間の遠征が難しいので延期になりました。今シーズンはAFLのプロリーグも短縮日程になっちゃいましたね。

——世界的な影響はどうでしょうか?

国際大会のインターナショナルカップが毎年オーストラリアで開催されるんですが、今年は中止になってしまい、先日来年の大会も延期が発表されました。現状ではオーストラリア側が外国からの受け入れを確約できないという理由ですね。

——国際試合からしばらく遠ざかってしまう状況ではありますが、榊選手ご自身の日本代表としての目標はありますか?

現状では、日本代表がなかなか成績が振るっていません。順位はだいたい中盤からちょっとその下くらい。まずはトップ4ですね。自分がプレイしている間に達成したいなと。そして将来的には日本人選手の力で優勝できると証明したいと思います。

——日本人ならではの戦い方もあると。

また、AFLも世界大会を主催する際にはやっぱりお金をかけてやってるので、AFLのプロリーグで見られない戦術だとか、違う人種のプレイヤーがどんなプレイを見せるのかというのは見たいと思うんですね。なので日本人ならではのプレイを見せて、AFLの発展にも寄与していきたいと思います。

目標は本場での高校生プレイヤー育成!「既存のスポーツで輝けなかった人でも挑戦できる」

——将来の優勝に向け、榊選手ご自身が普及活動に従事してらっしゃいますが、現在の日本におけるオーストラリアンフットボールの普及にはどんな手応えを感じていますか?

かなり有望な選手がいますね。僕がもっとも欲しいターゲットは高校生の世代で、はやくオーストラリアに送り込みたいと思っています。協会はオーストラリアのクラブとつながりがあるので、向こうのアカデミーに入れるパイプもあるんですが、やっぱり今は認知度が低いので、なかなか競技そのものに触れる機会がないのが課題です。今競技人口が200人くらい。1,000人くらいに広がると、アカデミー入りも現実的になってくると思います。

——重視される基準などはありますか?

AFLが探している選手にはいろんな基準があります。先ほど少し触れたように、身長が低くてもチャンスがある戦術に変化してきました。また日本のスポーツとは考え方が違うんですけど、スキルやフィットネスはクラブ側で教えられるので、きちんとした態度やチャレンジする気持ちが資質として重視されます。なのでどういった方でも、スポーツやっててもやってなくてもチャンスがあるという世界ではあります。

——育成に向けた視点が全然違いますね!スポーツを見る意識が一変しそうです!

向こうではAFLで学ばせてもらったりコーチングコースとかもいったんですけど、個人がダメと言わずにコーチやクラブ側のアプローチが違うと考えますね。日本の状況とはぜんぜん違うと思いました。

——これからの普及活動の予定や展望がございましたら。

大きくは2つありまして。ひとつは自由に使えるフルオーバルのグラウンドですね。グラウンドの確保が大きな課題なので、その解決には力を入れていきたいです。

——特に榊選手が力を入れているポイントはなんでしょう?

あとは先ほど触れました高校生のスカウト。男性も女性も向こうのアカデミーに入れてもらいたいです。オーストラリアンフットボールには、既存のスポーツでは輝けなかった人でも挑戦できる環境がありますので、若い人たちに挑戦して欲しいと思っています。

オーストラリアンフットボールの始め方

——ではこれから挑戦したい人に向けて伝えたいことはありますか?

まずは新しいことにチャレンジするのが第一だと思います。今までの経験は関係なく、新しいことに積極的にチャレンジする方を、オーストラリアンフットボール界は求めています。またプレイヤーももちろん重要なんですが、協会を運営するスタッフがあってのプレイヤーという面もありますので、スポーツ経験を問わずいろんな形で関わっていただけたらと思います。

——興味をもった方が実際に始めたい時に、どうアプローチすれば良いでしょうか。

まずは協会の方へご連絡をいただければと思います。お住まいの地方を教えていただければ、設立準備中のクラブも含めてプレイできる場所をご紹介します。また、今はサッカーをやっているクラブ全員で挑戦したいというような場合には、私が直接お伺いしてレクチャーいたします。 協会へのご連絡はホームページ経由か、あとはTwitterもやっていますので、そちらにご連絡ください。

——必要な道具なども教えていただけたら!

ボールはクラブにあるので、運動着とスパイクくらいですかね。スパイクは大体サッカーのものを使うケースが多いです。ただプロの選手もトレーニング中はランニングシューズでやっている選手もいるので、新しい道具はあまり必要ありませんね。ほとんどお金はかかりません。試合に出るようになったら、マウスピースを着用してもらうようになります。

——では最後にオーストラリアンフットボールに興味を持たれた方へのメッセージをお願いします。

国際大会で日本が優勝する日を夢見ています。その目標に向かって一緒に、実際に選手として競技される方、スタッフとしてオーストラリアンフットボールを支えてくれる方、常に門戸を開いてお待ちしております。ぜひ興味があれば気軽にコンタクトしてください!

「オーストラリアンフットボール」を始めるのにかかる費用

スパイク3,000円~
トレーニングウェア2,000円~

 
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