自転車×スノーボード!アクロバティックな冬のスポーツ「スノースクート」の知られざる世界【マイナースポーツ特集#34】

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自転車×スノーボード!アクロバティックな冬のスポーツ「スノースクート」の知られざる世界【マイナースポーツ特集#34】

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自転車とスノーボードを掛け合わせたような「スノースクート」。雪原を颯爽と駆け抜ける姿はもちろん、ジャンプや回転技が炸裂するアクロバティックさが見る人を惹きつけています。

今回は、「スノースクート」の国内最大のコンペティション「Scooter’sCrossJapanTour」で3年連続1位に輝いたフリースタイルライダーの麻生航太さんが登場。「スノースクート」の魅力から競技を始めた経緯、今度の展望、初心者が始めるコツまでお伺いします。

 

ほぼ自転車と一緒! 意外と難易度が低い「スノースクート」

photo by Naoki Gaman

——「スノースクート」とは、どんなスポーツなんですか?

麻生

簡単にいうと、自転車のタイヤの代わりにスノーボードの板を2枚つけたようなウィンタースポーツギアです。イメージとしては、BMXやマウンテンバイクに近いと思います。この「スノースクート」を使って雪山の中を駆けることができます。

——どのように操作するんでしょうか?

麻生

構造はほとんど自転車と一緒です。ハンドルを操作すると前の板が動いて、舵をとれる仕組みです。一方、後ろの板は動きません。ここに足を固定せずに乗せて、雪の中を走っていきます。

——スノーボードやスキーと違って足を固定しないんですね。ちょっと怖そうな気がします……。

麻生

「スノースクート」は足を固定しないので、ウィンタースポーツに不慣れな人にはもってこいの乗り物です! 圧倒的に自由度が高いですし。「不安定そう」とよく言われるんですけど、ハンドルで操作するので上半身が安定します。だから、ほかのウインタースポーツと比べても、「スノースクート」の方がバランスを取りやすいと思いますよ。

——自転車にはブレーキがありますが、「スノースクート」はどうやって止まるのでしょうか?

麻生

「スノースクート」にはブレーキがないんです。ただ、スノーボードのように、板の淵についているエッジを斜面に対して横にすればしっかり止まるので、そんなに怖がらなくても大丈夫です(笑)!

——どのくらい前に発祥したスポーツなんですか?

麻生

今から25年ほど前、BMXで活躍されていた方の雪の上でも走れる自転車を開発したいという思いから、フランスの雪が降る地域で生まれたと言われています。

——日本で登場したのはどのくらい前なんでしょうか?

麻生

確か、「スノースクート」が日本で販売されたのは、ちょうど僕が生まれた頃なので、23年前くらいみたいです! そう考えると意外と昔からある気がしますよね。

——競技の種類はどのくらいありますか?

麻生

概ね3つくらいですね。斜面にフラッグを立てたコースで競うタイム走「スラローム」、起伏のあるコースを複数人で競うレースの「クロス」、ジャンプなどの技で競う「ビッグエア(またはスロープスタイル)」です。

——どんな技があるのでしょうか?

麻生

空中でハンドル一回転したり、ボードを足元で一回転したり。あとは、バックフリップというバク宙技、フロントフリップという前回りの技、体を横で一回転させるスリーシックスティという技などもあります。それらを合わせる技もあって、スリーシックスティをしながら、スノースクートのフレームを回すという高度なものもありますよ。

——「スノースクート」は、通常のスキー場でできるんでしょうか?

麻生

国内だと、90%近くのスキー場でできますよ。ボードをレンタルしているところもあるので、意外と簡単に始められるんですよ。

——競技人口はどのくらいなんですか?

麻生

詳しいことはわからないのですが、国内で2万人ほどだと聞いたことがあります。意外と多いですか? だけど僕が始めた15年前は、「スノースクート」をやっている人はスキー場に1人もいませんでした。ですが、ここ数年は3〜4人も見かけますよ。着実に「スノースクート」人口が増えてきていると感じてます。

——競技としてやっている方が多いのでしょうか?

麻生

趣味として楽しんでやっている方が多いようです。スノーボードやスキーをしにきた人が、レンタルで「スノースクート」をたまたま見つけて挑戦してみようとなっているみたいです。

9歳で出会い、中1でプロを決意。お父さんがよきコーチに

photo by Naoki Gaman

——「スノースクート」を始めたきっかけを教えてください。

麻生

父がやっていた姿を見て、面白そうと思ったのがきっかけです。

——お父様がやられていたんですね!

麻生

日本に「スノースクート」が入ってきてから数年後、雑誌に載っていたのを見て始めたそうです。幼い頃は「なんかやってんなぁ」くらいの印象でしたが、9歳くらいの時、家族旅行で実際にやってみたらハマっちゃいました。それ以降は、毎週家族でスキー場に行ってましたね。

——初めてやられた時のこと覚えていますか?

麻生

スキーもスノーボードもやったことないのに、いきなり「スノースクート」を渡されたんですよ。「練習しておけ」と。だから母に見守られながら、1人で練習していたのを覚えてます。でも意外とすぐに乗りこなせていた記憶があります。

——え、簡単に乗れちゃったんですか! 初心者でもすぐに乗れるものでしょうか?

麻生

「スノースクート」って、雪の上での自由度が圧倒的に高いんですよ。スキーやスノーボードは板に足を固定しなきゃいけないので、なかなか自由がきかない。でも足を固定しない「スノースクート」は、転びそうになったら板の外に足を出せば防げる。だから安全性は高いんですよね。

——9歳から始めた「スノースクート」に本気で向き合うようになったのは?

麻生

小学生の時からずっと野球をやっていたんですが、中学1年生の時に肩をケガしちゃいまして。治すのに2年かかると言われたので、もう諦めようと思いました。でも何かを頑張りたかった。そんな思いもあって、ずっと遊びで楽しんでいた「スノースクート」のプロを目指そうと決めました。

——当時はどのくらいの頻度で練習していたんですか?

麻生

シーズン中は月に2回くらい行っていたので、年に5〜6回くらいですね。大阪から岐阜まで片道4〜5時間かけてスキー場に行ってました。

——実際にプロを意識するようになった出来事はありますか?

麻生

中学3年生の時に、みんなでジャンプ台を作って飛ぶというイベントをやったんです。そこで上手な人に技を習って飛んでみたら簡単にできちゃったんです。ハンドルを一回転させる技なんですけど、それが嬉しくて本気度が増しましたね。

——プロを目指すために取り入れたことは?

麻生

高校生になると、「スノースクート」の技の向上につながればと、シーズンオフの夏も平日も練習できるBMXを始めました。あとは、冬季以外は「ウォータージャンプ(※人口の滑走路、水を張った着地部を用意した、空中演技の練習ができる施設)」で練習をしてました。年中練習できるようになってからは、一気に上達しましたね。

——練習はどのようにされていたんですか?

麻生

ほかの選手の動画を見たり、撮影した動画を父に送ってアドバイスをもらったりですね。父は「スノースクート」の契約ライダーだったので、いいコーチが身近にいたことが大きかったですね。

圧倒的な練習量で日本トップの座に君臨!

photo by Naoki Gaman

——練習の成果を発揮する場面はいつ訪れたのでしょうか?

麻生

天狗じゃないですけど、だいぶ乗りこなせていたんで「オレ、うまいじゃん」って思ってました(笑)。それで高校2年生の時、フランスの大会に出たんですよ。おそらく日本人最年少の出場者だったんですが……。

——結果はどうだったんでしょうか?

麻生

「ビッグエア」というジャンプを5回飛ぶ部門に出場したんです。いざ出てみたら、今までに飛んだことないくらいでかいジャンプ台で、雪も氷みたいなあまり良くないコンディションで……。全ジャンプ、失敗しちゃったんです。それからさらに練習に精を出すようになりました。

——その大会の翌年、麻生さんは「Scooter’sCrossJapanTour」のビッグエア部門で優勝されます。しかも3年連続で制覇されました。その秘密は?

麻生

誰よりも練習していた自信があったので、自分のライディングさえ出来れば勝てるとは思っていました。でも実際はめっちゃ緊張してました(笑)。そんな中で意識していたのは、失敗してもいいから攻めて自分のベストを出して勝つこと。ただ、アンパイを狙わずに攻めすぎて、5回のジャンプの内、4回連続でこけてしまいました(苦笑)。けっこう焦りましたが、5回目に成功して優勝できてよかったです!

——フランスの大会での敗北が練習に精を出せた?

麻生

はい、体が覚えるまで徹底的に練習しまくりましたね。そうしたら習得した技も増えたし、技一つ一つのクオリティも格段に上がりました。当たり前かもしれませんが、練習量に比例してうまくなるんだなとわかったんです。

——技をものにしたという実感は、どんな時に感じるものですか?

麻生

なんとなくの感覚でわかるんです。自分の動画を見なくても、自分が飛んだジャンプを客観的に捉えられるようになっていたので。だから誰に教わるわけでもなく、微調整をみずからできるんです。これは練習で得た感覚でしかないんですが。

 
 
 
 
 
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——「スノースクート」を始めてから15年ほど。どんな時に楽しいと思いますか?

麻生

練習している時は納得できる滑りができなかったり、怖くて痛い思いをすることだってあります。だから楽しくない時間が圧倒的に長いんです。でもその分、技ができた時の楽しさと嬉しさは倍以上ですね。

——いうならば、練習があってこその達成感ですかね?

麻生

そうですね。練習した時間は決して無駄にならないんです。練習を続けていると、急にできるようになったりする。そういう自分に打ち勝つ瞬間が何度も訪れるのが魅力だと思います。競技自体の才能があるかどうかはわかりませんが、競技を続ける才能はあったんだと思います。

——競技を15年も継続できたのはなぜ?

麻生

僕の場合、「スノースクート」の練習が習慣化しているから、やめるという考えにすらならないんです。ある生活が当たり前というか。今、オフシーズンは週2回2時間ほど、シーズン中は毎日5時間くらい練習してますね。

——練習を重ねることで得たことはありますか?

麻生

やっぱり感覚がすごく大事だなと思います。何度練習してできなくても、頭の中でできた時の様子をイメージできていれば、後々必ず身に付けることができるんです。練習ももちろん大切ですけど、最近はイメージも大切になってきましたね。

——「スノースクート」を続けているからこそ、身についた特殊能力は?

麻生

行動力ですかね。あとは怖いと思うものが少なくなりましたね。バンジージャンプもすぐに飛べますし(笑)。

3年連続日本1位。それでもプレッシャーはない

photo by Naoki Gaman

——日本でトップ選手でいることのプレッシャーはありますか?

麻生

特にありません! 楽しく乗れればそれだけで良いんですよね(笑)。順位とかは結果論でしかないので。

——ご自身がずっとトップでい続けるのは、目指すべく上がいないことでもありますよね。それがゆえの大変さはありますか?

麻生

そうですね。どうやってより技術を向上させられるかなとは考えますね……。そこで最近は、スノーボーダーやスキーヤーの方に技のヒントをもらったりしてます。ジャンプや回転など、似ている技があるので。あとBMXの動画を見て、それに近い動きをしてみようと練習してみたり。

——今後もトップの座は譲らない?

麻生

どうなんでしょう……。でも大会自体が2018年の開催を最後になくなっちゃったんです。大会がなくてもそれにこだわらずに、僕は写真や映像で「スノースクート」の魅力を伝えて行きたいと思っています。

——普及のためにも?

麻生

そうですね。「スノースクート」をもっと知ってもらう場、見てもらう機会を増やせていけたらいいなと思ってます。そういう仕組みを作るために、これからちょっとずつ準備をしていきたいです。

レンタルでもOK!スノースクートを始める方法

photo by Naoki Gaman

——「スノースクート」を始めるにあたって、必要な道具はありますか?

麻生

まずは「スノースクート」とシューズですね。シューズは防水加工のされた登山用のものなどで大丈夫です。あとはスキーやスノーボードと同じようなウェア、ゴーグルやグローブも用意するといいと思います。レンタルを利用してもいいかと。

——グッズさえ用意しておけば、滑れるようになりますか?

麻生

滑れます! 昨年、スキー場でインストラクターやっていたんですが、初めて雪を見るというフィリピンから来た4人家族は、15分くらい練習したら滑れるようになりましたよ。ウインタースポーツの中で一番簡単だと思います。コンビニにチャリで行くくらいの気楽な気持ちで乗っていただければ!

——「スノースクート」を始める際、注意すべき点はありますか?

麻生

「スノースクート」は10万〜が相場ですが、ネットで安く売っている場合も。古いモデルのものだと重たかったりするので、そこはご注意を。ぜひショップで手に取ったものを買ってみてください!

——初心者が「スノースクート」を続けるコツやヒントがあれば教えてください。

麻生

1人でやっても続かないので、「スノースクート」をやってる人同士でつながったり、友達に勧めて一緒にやるのも一つの手かと思います。情報交換もできるし、一緒に滑ったりすると楽しさも倍増です。

——「スノースクート」の第一歩を踏み出したい人へのメッセージをお願いします。

麻生

いろんな人にやってもらいたいし、自分が滑っている姿も見てもらえたらなって。今後、みなさんの目に触れる場を作っていきたいと思ってます。興味があったら、まずはチェックしてもらえたら!

「スノースクート」を始めるのにかかる費用

スノースクート

10万円〜

ウェア

2万円~

ゴーグル

2,000円〜

グローブ

2,000円〜

シューズ

1万円〜

写真提供:Naoki Gaman

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