スリル満点!山を一気に駆け下りるマウンテンバイク競技「ダウンヒル」の中毒性【マイナースポーツ特集#30】

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スリル満点!山を一気に駆け下りるマウンテンバイク競技「ダウンヒル」の中毒性【マイナースポーツ特集#30】

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数あるマウンテンバイク競技の中でも特に人気が高い「ダウンヒル」。山につくられた急斜面のコースを高速で駆け下りる、スリル満点の種目です。

今回インタビューしたのは、ダウンヒルライダーの井手川直樹さん。16歳で日本最高峰のクラスであるエリートクラスに特別昇格し、その年に全日本チャンピオンを獲得。その後、日本人で初めて海外チームに所属し世界を舞台に活躍しました。現在は選手としてレース活動をしながら、スクール開催やマウンテンバイクの普及活動などにも取り組んでいます。

井手川さんに、ダウンヒルとはどのような競技なのか、魅力や必要な能力などについて伺いました!

自転車で山を駆け下りるタイムを競うシンプルな競技

——「ダウンヒル」とはどんな競技なのでしょうか?

井手川

マウンテンバイク競技のひとつで、山の急斜面を一気に駆け下り、タイムを競う種目です。マウンテンバイクは1970年代のアメリカでアウトドア好きな人たちが自転車を改造して山道を走るようになったことが始まりと言われ、ダウンヒルはそこから派生して1980年代に生まれました。

——オリンピック競技である「クロスカントリー」とは何が違うんですか?

井手川

クロスカントリーがアップダウンのある長距離コースを走るエンデュランス競技であるのに対し、ダウンヒルは下りのみでおこなわれるグラヴィティ競技です。コースの距離は2km前後と短めです。

——ルールについて教えてください。

井手川

「ホイールサイズの規定」「コースアウトした場合は同じ場所まで戻ってレースを再開する」といったルールはありますが、基本的には「一番速く走り切った人が勝ち」という、ごくシンプルな競技です。

——競技に使うマウンテンバイクは一般道を走るマウンテンバイクとどう違うんですか?

井手川

タイヤの太さ、フレームの素材や強度、サスペンションが衝撃を吸収するための動く量などが違います。なので、一般道用のマウンテンバイクでは競技に出ることができません。

——まったく別物なんですね。海外を中心に人気の競技だと聞きました。

井手川

はい。海外ではマウンテンバイク競技がすごく人気で、僕が参加したヨーロッパラウンドも各大会で4万人ほどのお客さんが入っていました。自転車競技連盟に登録する日本のダウンヒルライダーは約400人ですが、海外はライダーの数も相当多いと思います。

16歳で全日本チャンピオンに。海外チームへ移籍し世界で活躍

——井手川さんがマウンテンバイクに乗り始めたのはいつですか?

井手川

小学5年生のときです。もともと自転車に乗るのが好きで、たくさんギアのついた自転車への憧れもあったので、誕生日プレゼントとして両親に買ってもらいました。当時はそれがマウンテンバイクだということは知らず、ただ楽しくて毎日のように乗り回していましたね。

——趣味として乗っていた?

井手川

はい。小学6年生になり、近所のサイクルショップに通っているメンバーと一緒に走っていたのですが、ある日ショップの店長さんが「レースがあるんだけど出てみない?」と声をかけてくれて、地元の耐久レースに出場したのが競技として取り組むようになった最初です。

——ダウンヒルを始めたきっかけはなんだったんですか?

井手川

もともとクロスカントリーをメインでやっていたのですが、中学1年生のときに日本でもダウンヒルが競技として本格的に行われるようになって。いろんな場所を走っている中で下りのほうが好きだし、得意だなと思っていたので、徐々にダウンヒルに移行していきました。

——高校1年生のときに全日本チャンピオンになったんですよね。どんなお気持ちでしたか?

井手川

まさか勝てると思っていなかったので、喜びよりも驚きのほうが大きかったです。JCF(日本自転車競技連盟)公認の全日本選手権の第1回目だったのですが、実はそうとは知らなかったんですよ。たくさんのメディアに取り上げていただいたことで、少しずつ「日本一になったんだ」という実感が湧いていきました。

——それから海外でご活躍されたんですよね。

井手川

はい。20歳のときにワールドチームの「グローバルレーシング」に誘っていただき、2年間スペインを拠点に、全世界のレースを回りました。レベル高いプロの走りを間近で見ることができ、チームメイトも速い人ばかりだったので刺激を受けました。また、日本ではありえないようなコースを走ることもでき自信もつきましたね。

——日本に戻られてからは?

井手川

HONDAがマウンテンバイクを手掛け始めた頃で、チームを立ち上げたいということで声をかけていただき、2003年から2008年まで在籍しました。

——その間に2年連続のナショナルチャンピオンやアジアチャンピオンを獲得するなど、すばらしい成績を残されていますね。

井手川

HONDAでは、選手として大会に出場するだけではなく、マウンテンバイクの開発にも携わらせていただきました。残念ながら販売には至らず撤退となってしまいましたが、貴重な経験をさせていただきとても感謝しています。

——その後は?

井手川

自分でチームを立ち上げてレース活動を続けており、6年前からは「KONA RACING TEAM(コナ レーシングチーム)」の監督兼ライダーをしています。ほかにも、イベントの企画・運営、コース設営のアドバイス、スクールの開催など、マウンテンバイクに関することを幅広くお手伝いさせていただいています。

時速80kmに達することも。メンタルの強さも重要な要素

——ダウンヒルにはどんな能力が必要なんでしょうか?タイムの差はどう生まれる?

井手川

マシンのセットアップ能力、ハンドルやブレーキのコントロール技術、コーナリング技術などが必要です。わかりやすいところで言うと、コーナーをうまく走れたらタイムは縮まりますが、コース内には岩場やジャンプなど、さまざまなセクションがあるので、どの能力が高ければ勝てるとは一概には言えないですね。

——ちなみに井出川さんが得意なセクションは?

井手川

僕はどちらかというと、スピードを出して一気に下るよりも細かい木の根や岩があるところをテクニックを駆使してスムーズに走るのが得意です。

——レース中ってどれくらいのスピードが出るんですか?

井手川

コースにもよりますが、急斜面では時速80kmを超えることもあります。

——高速道路を走る自動車と同じくらい!怖くないんですか?

井手川

プロは恐怖を感じないと思われがちですが、全然そんなことはなくて。どのレースも恐怖心を持って挑んでいます。

——そうですよね。

井手川

恐怖心があると体が固まってしまい、マシンコントロールがうまくできず転倒してしまったりするので、練習で状況やスピードに慣れ、その経験を自信につなげています。メンタルの強さも必要不可欠ですね。

——これまで怪我をした経験はありますか?

井手川

すり傷や切り傷はたくさんありますが、骨折をしたことはないんです。これはダウンヒルをやっている人の中ではめずらしいと思いますね。一番大きな怪我は、ペダルが木の根にヒットして僕だけが前に飛ばされ、大きな立木にぶつかった衝撃で肝臓を内出血しました。

——想像しただけでも痛そうです……。ダウンヒルをやっているからこそ身についた癖ってありますか?

井手川

ダウンヒルは、今の状況を読みながら次にどんなセクションがくるかなど先のことを考えながら走っていて、たとえ失敗をしたとしても振り返っている暇はありません。実生活でも、失敗や嫌なことがあってもすぐに忘れて先のことを考える癖がついていますね。

現状に満足せず努力する。史上初の40代チャンピオンを目指す

——普段はどこでどんな練習をしているんですか?

井手川

仲間と一緒に山へ走りに行ったり、家でバーチャルサイクリング「Zwift(ズイフト)」をやったり、森永トレーニングラボでウエイトトレーニングやフィジカルトレーニングをしたりしています。

——井手川さんは2015年から4年連続でダウンヒルシリーズ・シリーズランキング1位を獲得され、これまで3度全日本選手権で優勝しています。強さの秘密はどこにあるのでしょう?

井手川

「努力の継続」でしょうか。常に現状に満足せず、足りないものを補うようにしています。僕は今年40歳なのですが、年齢が上がっていくと判断能力が落ちてしまうんですよね。それを補うために、今はフィジカルトレーニングやテクニックの練習を欠かさず行なっています。

——今後の目標は?

井手川

10代、20代、30代で全日本チャンピオンを獲ったので、まだ誰も成し得ていない40代の全日本チャンピオンを目指しています!

——各地でイベントも開催されているんですよね。神社でレースが行われたという記事を見て驚きました!

井手川

そうなんです。エナジードリンクブランドのレッドブルが主催する「レッドブルブル・ホーリーライド」というイベントで、京都の石清水八幡宮や愛媛の石鎚神社本社など、「勝負」や「自己研鑽」に縁のある地で行われています。狭い参道や急な石段を下ったりするので、マシンコントロールが難しく、なかなかスリリングですよ。

——特に印象に残っているレースはありますか?

井手川

広島県尾道市の千光寺山のレース。転倒から巻き返して優勝することができました。通常の大会では転倒すると勝てる可能性はほぼないのですが、「レッドブルブル・ホーリーライド」はコースが独特なことあり、逆転のチャンスがあるんです。面白いレース展開で、見ている方にも楽しんでいただけたのではないかと思いますね。

——あらためて感じるダウンヒルの魅力とは?

井手川

猛スピードで走りながら各セクションを通過するには、見た目以上にテクニックが必要です。また、どう進むかを瞬時に判断してレースを組み立てなければ勝つことはできません。数分の間に自分が持つすべての力を出し切ってゴールできたときの達成感や爽快感は、ほかでは体験できないものですね。

——井手川さんはプロになって今年で24年目。ずっと続けてらっしゃるということは、ダウンヒルはそれだけ中毒性があるスポーツということなのでしょうか?

井手川

そうですね。スリルや達成感がある一方で、美しい景色の中を自転車で走るという非日常感も味わえる。特に好奇心旺盛な方はハマりやすいと思います。レースも楽しいですが、僕は山の中を仲間と一緒に走っているときがなにより楽しいです。

講師として子どもたちに自転車の安全な乗り方を指導

——スクールの講師もされてらっしゃるんですよね。

井手川

はい。6年前から「イオンバイクJr.アカデミー」という、小学生を対象にした月謝制のマウンテンバイクスクールで講師をしています。また、今年自分の会社(BICYCLE CAST株式会社)でも「バイシクルアカデミー」というスクール事業を立ち上げ、僕はその中で小学校低学年の子を対象にしたスクールを開催しています。

——「バイシクルアカデミー」ではどんなことを教えているんですか?

井手川

自転車って乗ろうと思えば早く乗れてしまうので、技術が追いついていない状態で道路に出てしまう子が多いんです。交通事故や怪我から自分の身を守れるように、「止まる」「曲がる」「判断する」という基礎的なことを教えています。

——教え子がマウンテンバイク競技をやっていたりもするんですか?

井手川

はい。「イオンバイクJr.アカデミー」卒業後、レースに特化した「イオンバイクJr.レーシング」を受講し、全国レベルで走っている子が何人もいます。やはり教え子の活躍は嬉しいですね。

競技ならスクール、趣味ならマウンテンバイクツアーに参加を

——今、日本でも自転車の人気が高まっているそうですね。

井手川

はい。「3密」を避けるために自転車を利用する人が増えているので、これを追い風にマウンテンバイクの人気も高まってほしいです。海外で流行っているのに日本で流行っていないのは、きっと遊び方がわからないからだと思うんですよね。これから普及活動に力を入れ、マウンテンバイクの楽しさや魅力を発信していきたいです。

——ダウンヒルをやってみたいと思ったら、まず何から始めたらいいのでしょう?

井手川

富士見パノラマリゾートなど、スキー場でやっているスクールに参加してみるのがいいですね。必要な道具がすべてセットになったプランもあるので始めやすいと思います。競技としてではなく、景色を楽しみながら走りたいという方にはマウンテンバイクツアーがおすすめ。最近は女性の参加者も多いみたいですよ。

——最後に、ダウンヒルに興味を持った方に向けてメッセージをお願いします!

井手川

「楽しいのでぜひやってみてください」と言いたい気持ちはありますが、危険も伴うスポーツなので、レースを観戦するのも良いですし、体験される際はスクールなどを受けてからチャレンジして、ダウンヒルの魅力を知っていただきたいです!

ダウンヒルを始めるのにかかる費用

ダウンヒルマウンテンバイク20万円〜
ヘルメット4万円前後
ウエア(上)4,000円前後
ウエア(下)1万5,000円前後
セーフティジャケット3万円〜
 

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