いかにかっこよくイスに座れるかを競うスポーツ「ホッカン」。不思議な形をしたホッカンと呼ばれるイスを投げて回したり、自らの体を使って空中で技を披露したりと、華麗なパフォーマンスでかっこよさを競います。
今回お話を伺ったのは、ピン芸人のハラコさん。ご自身の単独ライブや地域のお祭り、スポーツ番組などで「ホッカン」の腕前をお披露目し、その魅力を発信しています。
そんなハラコさんに、「ホッカン」を始めた経緯やおもしろさ、おすすめのポイントなどを直撃しました!
目次
ドイツ発祥のマイナーすぎるスポーツ「ホッカン」。審査基準はかっこよく座るだけ!
——「ホッカン」とはどんな競技なのでしょうか?

簡単にいうと、ホッカンと呼ばれる糸巻きのような形をしたイスに、いかにかっこいよく座るかを競うスポーツです! 2007年頃にドイツで発祥したと聞いています。
——ドイツが発祥なんですね。現地ではどのくらいの知名度なんでしょうか?
以前、「ホッカン」競技者としてテレビ出演した時に調べてもらったんですけど、1000人もいないくらいだそうです。ドイツでもかなりマイナーで、スケボーのような感じでストリート系の人たちがやるスポーツの1つという認識のようです。ちなみに国内では、多分、沖縄の大道芸人と僕の2人だけ(笑)。
——2人ですか!
はい。だからマイナー中のマイナーだという自信はあります。道具のホッカンも国内では入手不可なので、ドイツから取り寄せました。本体が日本円で18,000円くらいなのですが、郵送費が15,000円だったので30,000円以上はかかりました。でも必要な道具はこれだけ。現地の人は私服でやっているので。僕はジャージでやっていますけど。
——審査基準やルールを教えてください。
アメリカで世界大会を開催しているんですが、そこでは1分間の演技で競います。総合ポイント、テクニック、ダブルスの3つの部門がありました。審査基準は、さっきも言った通り、いかにカッコよく座れるか。これですね。
——どんな技があるんですか?
ホッカンを空中に投げて回したり、ジャンプしてホッカンの上に乗ったり、ホッカンの上で逆立ちしたり、いろいろな技がありますよ。
「ホッカン」を始めるきっかけは単独ライブ。競技人口少なすぎて先生はYouTube動画
——「ホッカン」を始めたきっかけは?
単独ライブすることが決まった時、生産性のないものにチャレンジするという企画が立ち上がったんです。僕、大学まで野球をやっていたこともあって運動神経がいいので、スポーツ系でやろういうことになって。ネットで調べて見つけました。日本の競技人口が極めて少ない誰も知らないスポーツに挑戦する姿がおもしろいと思って、1カ月後の単独ライブに向けて練習を開始しました。
——最初に「ホッカン」をやってみた感想は?
めちゃくちゃ難しかったです。あまりにもマイナーすぎて日本に教えてくれる人はいないので、YouTubeで動画を見ながら練習するしかなくて。これは絶対に単独ライブまでに習得できないと…。グズグズで終わる予感しかなかったです。
——どの辺りに難しさを感じましたか?
まずイスのホッカンの重さにつまずきましたね。1.8kgあるんですよ。これ投げて空中でくるくる回すということだけでも至難の技。1時間くらい練習しただけで、腕の筋肉が悲鳴をあげました(笑)。
——結局、単独ライブはどうなったんですか?
ホッカンを空中に投げて回して座る、ホッカンを足で蹴り上げて回して座る、ホッカンの上で逆立ちしてから座る。主にこの3つの技を練習したんですけど、3週間くらい経った頃、急に上手くなったんです。多分コツを掴み出したのがこのくらいの時期なのかも。なので単独ライブではうまくいきましたよ。結構ウケたし、盛り上がったんです。
ドイツ人にはハマらない?笑いのコンテンツに変えて仕事も急増
——「ホッカン」に取り組む中で、楽しいと感じるポイントを教えてください。
最初はできなかった技ができるようになった時は、何にも変えられないような達成感と喜びがありますね。あと僕がやる「ホッカン」って、本国の「ホッカン」とはちょっと違うんですよ。そこが芸人として「ホッカン」をやる醍醐味になってるというか。
——と言いますと?
通常の「ホッカン」はかっこいい技を見せてイスに座っておしまいですけど、僕の場合は音楽に合わせてダンスをして、ホッカンに座った後の表情で笑いを取るというか。イスに座るというのは、普通ならなんてことのない行為。これを死に物狂いで一生懸命やって、その後座ってドヤ顔をするという流れですね。
——芸人・ハラコ流の「ホッカン」なんですね。
単独ライブのために「ホッカン」を習得しましたが、せっかくだからとドイツ大使館に見せに行ったんです。そうしたらドイツの方は、何がおもしろいのかわからないと(苦笑)。一生懸命頑張っている姿は、おかしくなんかない。むしろ“クール”だよって。競技者としては嬉しい言葉ですが、芸人としては少ししんどいですよね(笑)。
——確かに芸人さんにとしてはツラいですね(笑)
まさに文化の違いでしたね。それでもおもしろがってくれて、日本のドイツフェスティバルなどに呼んでもらえるようになったんです。現場でも「ホッカン」のライブ感と、座った後のピエロ的な要素がウケるし、結果的に芸人としては万々歳です(笑)。
筋トレせずとも筋力アップ。フィジカルの強さが「ホッカン」マスターの鍵
——どこで練習しているんですか。
公園かスタジオでやっています。コンクリートの地面より、ゴム製の床を選んでますね。そっちの方が、ホッカン自体が傷つかないので。
——練習方法はどんな感じですか?
ひたすら動画を見て練習ですね。それに背中にホッカンを乗せてみたりと自分なりの技を作って追加してみたり。最初はホッカンの使い方を間違っていて、空中に投げて受け止める時の手が逆だったことがあって、腕がアザだらけになったこともありました。
——ホッカンとの距離感を掴むのも難しそうですね。
そうなんです。糸巻きのような不思議な形をしているので、距離感をうまく掴まないと顔にぶつかったりなんてことも…。それにホッカンの上に乗ったり、逆立ちをする技もあるので、体の動かし方、使い方も相当難しいんです。そもそも身体的・肉体的能力が必要だなと感じています。
——運動神経がいいという自負がありながらも、「ホッカン」習得は難しい?
ホッカンの上にジャンプして乗り上げたり、転がして歩いたり、そこで逆立ちしたりというアクロバティックな技が多いので、まずはその練習からでしたね。逆立ちに関しては、今、15歩くらい歩けるようになりましたけど。
——上達するために筋トレやストレッチを取り入れたりは?
「ホッカン」の練習にいっぱいいっぱいで取り入れてこなかったんですが、始めてから1年経った今、勝手に筋肉がついていました。周りから体が大きくなったと言われることがあったんですが、実際に昨年着ていた服が小さくなったりしていて、服のサイズが変わってました。特に上半身は筋肉がつきましたね。
——“あるある”なのかもしれませんね!
“あるある”でいえば、目についたペットボトルをつい回しちゃいますね。ホッカンをくるくる回すように、気づいたらペットボトルを空中に投げていたり。「ホッカン」による体の変化もクセも出てきて、そこも含めておもしろいですね。
現在“約”日本2位!本場ドイツで優勝してから国内で「ホッカン」を発信したい
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——「ホッカン」を取り入れてから1年ちょっと。現状、「ホッカン」との向き合い方はいかがですか?
コロナの自粛期間中、結構練習していたんですが、そこで大きな壁にぶち当たってしまいました。片手で逆立ちしたり、ホッカンを足で回したりと、大道芸人的な要素やスケボー的な技が必要なので、やはりそれが難しいなと。だから最近は、それを身につけるべく、ブレイクダンスやスケボーの動画をチェックしています。
——競技者として目指すところは?

国内には大会がないので、おそらく僕は今のところ日本第2位でしょう(笑)。だから目指すは、本場のドイツの大会で優勝。本国で日本初のチャンピオンになって、日本に凱旋帰国したいですね。やっぱり今、国内で「ホッカン」をやりましょうと推奨しても、届けられないと思うので。海外で結果を出して話題になってから「ホッカン」を啓蒙するのが理想的ですね。
——「ホッカン」を始めたいと思っている人にメッセージをお願いします!
ドイツから道具を取り寄せたりとハードルはちょっと高いですけど、そこを乗り越えたらスポーツの魅力を再確認できると思います! 99回挑戦してもできなくて100回目で突然できるようになったということが、この「ホッカン」で何度も起こりました。これってスポーツをしていた人だったら、経験したことのある感覚だと思います!
——スポーツ経験者”あるある”ですか!
目に見えてすぐに結果には繋がらないけど、練習していた技ができたりと上達を実感できる日が急にやってくるんですよ。僕は野球経験者でスポーツに昔から親しんできましたが、大人になってからスポーツから離れていたので、この感覚がめちゃくちゃ懐かしいし、これを体感できるのはすごく新鮮で楽しいです。
——途中で「ホッカン」の習得を諦めるのはもったいないですね。
その通りです。積み上げたものはちゃんと結果に出る。そういう感動体験が「ホッカン」でできるはずです!
——「ホッカン」を続けるコツってありますか?
やっぱり人って目標を達成するために頑張れるものなので、人前で披露する機会を作ることですかね。僕は単独ライブに向けて練習していましたし、その様子を毎日YouTubeで配信してました。練習の順番としては、まずはホッカンを回して手で受け取ったりと道具の使い方をマスター。それから技の練習に励むといいかと思います。ぜひスポーツの楽しさと喜びを再び体感してみてください!
ホッカンを始めるのにかかる費用
道具 | 15,000円〜 |
ウェア | 0円(私服or手持ちのジャージなどでOK) |