体ひとつで壁を登る達成感が癖になる!世界で戦うプロ選手が語る、スポーツクライミングの魅力【マイナースポーツ特集#16】

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体ひとつで壁を登る達成感が癖になる!世界で戦うプロ選手が語る、スポーツクライミングの魅力【マイナースポーツ特集#16】

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道具を使わず、体ひとつで壁を登っていく「スポーツクライミング」。登山で岩山を登る練習として室内で人工壁を使用したのが、スポーツクライミングの発祥と言われています。

今回インタビューしたのは、エスエスケイフーズ所属のプロクライマー・小武芽生さん。
小武さんは小学5年生からクライミングを始め、現在はプロとして国内外の数々の大会に出場しています。2020年1月に開催されたアイスクライミング・アジア選手権では3位入賞を果たし、アイスクライミング公式戦では日本人初のメダリストとなりました。

小武さんに、スポーツクライミングの魅力や始めたきっかけ、今後の目標を伺いました!

10m以上の壁を体ひとつで登る!スポーツクライミング

——「スポーツクライミング」ってどんなスポーツなんでしょうか?

小武

道具は使わず、体ひとつで人工の壁を登っていくスポーツです。壁にはホールドと呼ばれる様々な形の突起物がついていて、そこを手でつかみながら、上に登っていきます。安全のためにマットやロープ、チョーク(滑り止めの粉)は使用しますが、登るための道具は一切使用しません。

——リード・ボルダリング・スピードの3種目がありますが、それぞれの違いを教えてください。

小武

「リード」は、十数メートルの壁に設定されたコースを、制限時間内にどこまで登れたかを競う種目です。私がメインで取り組んでいるのはリードですね。

「ボルダリング」は、制限時間内に3〜5メートルの壁に設定された課題(※決められたホールドを使い登ること)をいくつ登れたかを競う種目です。命綱は使わず、下にマットを敷いて行います。
そして「スピード」は、2人の選手が同時に壁を登り、タイムを競う種目です。

——小武さんは2020年1月に、アイスクライミング・アジア選手権で3位入賞されましたよね。アイスクライミングは、スポーツクライミングとどんな違いがあるんでしょうか?

小武

アイスクライミングは、両手に「アックス」という鎌のような形の道具を持ち、足には「アイゼン」というとげの付いた靴を履いて、氷の壁を登っていくスポーツです。リードとスピードのみで、ボルダリングはありません。競技として行う場合は、氷ではなく室内に設置された人工の壁で行うケースも多いです。

小武

アックスを氷に刺したりホールドに引っ掛けたりしつつ、アイゼンで壁を蹴り、足をくい込ませながら登っていきます。
「壁を登る」という点で使う筋肉は同じですが、体の使い方はまったく違うので、体感としては違うスポーツをやっているような印象でした。

——スポーツクライミングとアイスクライミング、両方取り組んでいる選手は多いんでしょうか。

小武

かなり少ないですね。日本では私だけで、海外でも両方取り組んでいる人は稀です。
私は北海道出身で雪や氷に親しみがあったので、アイスクライミングにも興味が湧きましたが、日本だと練習ができる場所がかなり少ないこともあり、アイスクライミングに取り組んでいる人は少ないようです。

最初は習い事感覚。楽しくてのめり込むうちにプロの道へ

——スポーツクライミングを始めたのはいつ頃ですか?

小武

小学校5年生の時です。元々スポーツが好きで、器械体操やスキー、スノーボードなどをやっていましたが、「何か新しいスポーツをやってみたいな」と思っていて。色々考えていく中で、クライミングに出会いました。

今はクライミングジムの数も増えましたが、当時はかなりマイナーなスポーツでした。でも、マイナーだからこそ「面白そう!」と興味が湧いて、週に一回、習い事としてスクールに通っていました。

——最初は習い事感覚だったんですね。そこから本格的に取り組むようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

小武

本格的に打ち込み始めたのは中学生の時ですが、これといったきっかけがあった訳ではないんです。
クライミングがとにかく楽しくて、練習に打ち込むうちに実力がついて大会で結果が出るようになり、そこで更に楽しくなってのめり込んで……の繰り返しで、練習日が週1から週5に増え、大会にも出場するようになっていきました。

——小武さんは現在、プロクライマーとしてエスエスケイフーズに所属されていますよね。進路を決める際、選手活動を続けるか就職するかで迷うことはなかったんでしょうか。

小武

大学卒業時には、迷う気持ちはゼロではありませんでした。でも、スポーツ選手は若いうちしかできないので、「今できることをやりたい!」という気持ちが強かったんです。

ありがたいことに、エスエスケイフーズ所属のプロ選手として、スポーツクライミングに打ち込める環境を整えることができたので、選手活動を続ける決意を固めました。

自分でも知らなかった自分の強さが見える瞬間が楽しい!

——スポーツクライミングをする中で、「楽しい!」と思うポイントを教えてください。

小武

最初は難しくてクリアできなくても、登り方を変えたりトレーニングを積んだりしてクリアできた瞬間には「楽しい!」と感じます。自分でも知らなかった自分の強さが見える感覚になれるんです。

あとは、クライミングを通じてたくさんの人と出会えたのも、楽しいと感じるポイントですね。クライミングを通じて幅広い年代の人と知り合えましたし、国際大会に出るようになってからは海外選手との交流も増えました。

 
 
 
 
 
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——プロとして活動する中で、厳しい面や大変に感じることはありますか?

小武

大会前のメンタルコントロールは大変ですね。
私が取り組んでいるリード種目は、大会では1回しかトライできなくて、落ちてしまったらもうそこで終了。一発勝負な分、すごく緊張します。

調子がいい時には緊張を楽しみに変えられますが、いつもそうとは限りません。調子があまりよくない時には、心身が削られているような感覚になってしまうこともあります。

——大会前には、体のコンディションの調整などもされるんでしょうか。

小武

はい、特に体重のコントロールは重要ですね。少し重くなるだけで指先にかかる負担が増えて、パフォーマンスに影響が出ます。
私は食べるのが好きなので、大会前に食事制限しなければいけないのはちょっと辛いですね(笑)。

——コーチはついているんですか?

小武

コーチはいません。練習メニューの作成から大会に向けてのコントロールについても、すべて自分で行っています。

スポーツクライミングは日本ではまだ比較的歴史が浅いこともあって、コーチをつけている人はごく少数です。基本的には自分一人でトレーニングをしていますが、他の選手と一緒に練習をして、お互いアドバイスをし合いながら、技術向上に努めています。

——ちなみに、スポーツクライミングをやっていたことでこんな癖が身についてしまった……なんてことがあったら教えてください!

小武

私はロッククライミングの経験もあるので、ディズニーランドで「あの岩山登れるな」って無意識に考えてしまうことがあります(笑)。
実家に帰省した時に、暇つぶしに壁と壁の間に手を突っ張って上に登ったり、棚に指を掛けて懸垂をしたりすることもありますね。

あと、これは癖とは少し違いますが……大会に向けて運を溜めておきたいなと思って、日頃から人に優しくするなど、いい行いを心がけるようになりました。

岩を登る小武さん。わずかな隙間に指を掛けて全身を支える様子はさすが!

「今までで一番強い自分に会いたい」世界大会で表彰台を目指す!

——企業所属のプロ選手ということで、普段どんなスケジュール感で練習やお仕事をされているのか教えてください。

小武

競技活動が主な仕事、というイメージですね。基本的には大会に向けた練習を日々行っています。出社するのは、多くて月に3回ほどです。海外の大会に参加する時は丸々一ヶ月日本にいないこともあります。

競技以外の担当業務としては、エスエスケイフーズの自社製品を使ったレシピ考案を行っています。私は栄養士の資格を持っているので、「こんな使い方ができますよ」と取引先に提案するために、ドレッシングやマヨネーズを使ったレシピを考えています。

 
 
 
 
 
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——普段の練習は、どういった場所で行っているんでしょうか?

小武

週4〜5日のペースで、クライミングジムでトレーニングをしています。その日の体調によって「今日は持久力を鍛える」「今日はパワーをつける」と目標を立てて、練習メニューを決めています。

あとは、トレーニングジムで筋力トレーニングもしています。クライミングでは上半身の筋肉を使うことが多いのですが、脚力が必要な場面もあるので、補助的に下半身のトレーニングを行っています。

——これまで出場した中で、印象的な大会を教えてください。

小武

2018年にフランスで開催したワールドカップですね。
観客が数千人規模の大会だったんですが、そのほとんどが山や岩など、いろんなジャンルでクライミングを嗜んでいる人たちだったので、観客席の盛り上がりがすごかったんです。

自分の動きに観客が反応して歓声があがるのが、すごく嬉しくて! 結果は5位でしたが、声援に後押しされるような感覚で、楽しみながら登れました。

——応援の声があるのは嬉しいですね! 逆に、悔しかった大会はありますか?

小武

2018年9月にオーストリアで開催された世界選手権です。大会に向けて調整もしっかりできて、すごくいいコンディションで臨めたのですが、一手の差で4位になってしまったんです。
世界大会で表彰台に上がったことがなく、「今回こそは!」と思っていたので、あれは本当に悔しかったですね。

——選手としての今後の展望を教えてください。

小武

2018年の一番調子が良かった時のコンディションにまずは戻して、世界大会で表彰台を狙っていきたいです。
スポーツクライミングは、誰かと競うというより自分の強さを更新していくような競技なんです。「今までで一番強い自分に会いたい」という思いがあるので、そのために日々のトレーニングをコツコツと積み重ねていきたいですね。

北海道・神居古潭(かむいこたん)の凍った岩山を登る小武さん

小武

競技活動が落ち着いたら、アイスクライミングやロッククライミングにも取り組みたいですね。海外には、何日もかけて登るような岩山もあるんですよ! 岩の中で宿泊しながら、頂上を目指すんです。
選手として記録を目指すのは若いうちしかできませんが、年齢を重ねても形を変えて、クライミングは続けていきたいですね。

はしごを登れる程度の筋力があればOK!老若男女楽しめるスポーツ

——クライミングって筋力が必要そうなイメージですが、どんな人に向いているスポーツなんですか?

小武

はしごを登れるくらいの筋力があれば大丈夫ですよ! テレビで流れる映像を見て「こんな動きできない……」と気後れしてしまう方もいますが、あれは世界レベルの選手のクライミングなので。

初心者向けの難易度が低いものであれば、お子さんからお年寄りの方まで幅広く楽しめると思います。実際、70代の祖母と一緒にクライミングをしたこともあります。

——予想以上に始めるハードルは低いんですね! やりたいと思ったら、まずは何から始めたらいいんでしょうか?

小武

クライミングの3種目のうち、リード・スピードが練習できるジムはかなり限られているので、ボルダリングジムに行っていただくのがいいかと思います。ジムの利用料金は、場所にもよりますが一回2,000円程度で、時間帯や曜日によって値段が変わります。初回は登録料がかかるケースもあります。

クライミングシューズと滑り止めのチョークはそれぞれ2〜300円程度でレンタルできるので、動きやすい服を持って行けば大丈夫です。
初めてボルダリングをする場合は、インストラクターに声を掛ければ基本的な登り方やルールについては一通り教えてもらえます。

——何回か通って道具を揃えたくなった場合、いくら位かかるんでしょうか。

小武

クライミングシューズは1万円〜あります。週に1回登る程度なら、1〜2年くらいはもつんじゃないかな、と。チョークは1,000円以下、チョークを入れるバッグは専用のものを買うなら3,000円くらいでしょうか。自分でバッグを作る選手もけっこういますよ!

——最後に、クライミングを始めようとしている人にメッセージをお願いします!

小武

ホールドを掴んで体を引き上げる、という基本的な動きができる方であれば、老若男女誰でも楽しめるスポーツです。レベル別にルートが組まれているので、難易度の低いルートなら初めての方でも気軽にチャレンジできます。クリアできた時の達成感は癖になりますよ!

指先や腕、体幹、足と全身の筋肉を使いますし、柔軟性も必要なスポーツなので、全身をまんべんなく鍛えたい方にもおすすめです。あとは、握力がつくので瓶の蓋を開けやすくなります(笑)。興味が湧いたらぜひ一度チャレンジしてみてください!

スポーツクライミングを始めるのにかかる費用

ジム利用料約2,000円 ※ジムによる
ウェア上下で数千円程度
シューズレンタルなら約2〜300円、購入なら1万円〜
チョークレンタルなら約2〜300円(バッグ含む)、購入ならチョーク&バッグで4,000円程度

 

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