『ちはやふる』で人気急上昇!「競技かるた」の世界に迫る【マイナースポーツ特集#02】

趣味

『ちはやふる』で人気急上昇!「競技かるた」の世界に迫る【マイナースポーツ特集#02】

趣味

「百人一首の歌には時代を超えて共感される心情が描かれています。たとえば『好きな人を待っている時間は長いし、秋はちょっとセンチメンタルになる』というように。どの歌にも感情移入できるから、百首すべての札が愛しいです」

そう語るのは、競技かるたを高校2年生で始めてから、社会人になっても趣味で続けているという小川ゆみさん。百人一首を使ったスポーツである競技かるたの魅力は、札を速く取れたときの爽快感と、歌の美しさだといいます。

いざ目の前で実演してもらうと、雅な印象から一転、武闘派な側面も垣間見えました。  

記憶力と瞬発力のスポーツ

――「競技かるた」とはどのようなスポーツですか?正月にやる「かるた」とはどう違うんでしょうか?

小川

いちばん大きな特徴は、札に百人一首を使うことですね。古くは「歌かるた」と呼ばれ親しまれていましたが、明治37年ごろに競技かるたとしてルールが確立されました。読手が詠んだ和歌の上の句(和歌の前半 5・7・5の部分)を聞き、下の句(和歌の後半 7・7の部分)が書かれた札を相手より早く取れたら自分の取り札になります。

お正月にやるかるたは、取る人が何人か輪になって札を囲み、いちばん多くの札を取れた人が勝ちというルールですよね!でも競技かるたでは、基本的に1対1で戦います。

自分側に並べた札を「自陣」、相手側を「敵陣(または相手陣)」と呼び、先に自陣から札をなくした方が勝ちです。

自陣の札を取れば自陣が減り、相手陣にある札を取ったり相手がお手つきをしたりすると、好きな札を一枚、自陣から選んで相手に送ることで、自陣の札を減らすことができます。

――相手より早く札を取って、自陣の札をどんどん減らしていくゲームってことですね?

小川

簡単にいえばそうですね。

札の並べ方も独特です。自分の持ち札をあらかじめ決めている配置に沿って「上段、中断、下段」の3段に並べます。

使われる札は百首のなかからランダムに選ばれた50枚。各自25枚ずつ取って並べます。

小川

場にある札は50枚ですが読手はすべての札をランダムに詠みあげていくので、場にない空札(からふだ)が詠まれたときは、あせってお手つきをしないよう気をつけなければなりません。

並べ終わったら「暗記時間」と呼ばれる15分間で、その場にある札の配置をすべて記憶します。

――ここにある札をぜんぶ覚えるんですか!?記憶力が大事ですね......。

小川

目をつぶっていても、端から順に暗唱できるくらい正確に覚えることが速く取るためのコツです。歌が詠まれはじめたら迷っている時間はありません。

読手が詠む音を聞き分けて、正しい札に向かって瞬時に手を伸ばしてください。

――「音を聞き分ける」とは?

小川

はい。「音」は、正確には「決まり字」といいます。「歌のここまで聞けばどの歌かわかる」というものです。

たとえば上の句の一文字が「ひ」で始まる札は、「ひさかたの」「人はいさ(ひとはいさ)」「人も惜し(ひともおし)」の3枚です。それぞれ「ひさ」「ひとは」「ひとも」まで聞けばどの札が詠まれているかわかります。

すべての札は一回しか詠まれませんので、仮に「ひ」から始まる3枚の札のうち2枚が詠まれたら、残りの1枚は「ひ」の一文字で特定できます。このように、決まり字は試合が進むにつれて変化していくので、詠まれた札を記憶しておくことが重要です。

――脳みそフル稼働なんですね。あとは、相手よりいかに早く取るか。

小川

札が分かった瞬間、このように払います。

――おお。すごい勢いです……。

小川

狙った札をピンポイントで一枚ピシッと払えたときの気持ちよさは格別です。

実力が拮抗している相手との対戦ではよく手がぶつかります。お互いに勢いよく手を伸ばすし、体重が乗っていることもあるのでぶつかるとかなり痛く、骨折したなんて話も聞いたことがあるくらい(笑)。

こういった激しさからか、競技かるたは、別名「畳の上の格闘技」とも呼ばれています。

800年前に歌われた感情がいまなお受け継がれる理由

――小川さんが競技かるたを始めたきっかけを教えてください。

小川

高校時代に学校行事として開かれた「百人一首大会」がきっかけです。当時は、下の句が書かれた札をみて、上の句が思い浮かぶ札が一首あるかないかというレベル。「何枚か取れたらいいな」くらいのテンションで参加しました。

でもいざ試合が始まってみると一転、狙っていた札を対戦相手に取られてしまうと悔しいような残念なような気持ちが込み上げて......。なんといいますか、買おうとしていた洋服の最後の一着を目の前で、他のお客さんに持っていかれちゃったときのような感じでした(笑)。

――なるほど(笑)。それで火が付いたんですね?

小川

そうです。もっと速く取りたい、なんならぜんぶの札を取れるようになりたい! と気持ちが高まり、運良く学校に百人一首部があったので入部し、本格的に練習を始めました。

――漫画『ちはやふる』では、高校生が競技かるたに青春を捧げる姿が描かれていますよね!

小川

はい、『ちはやふる』はわたしも読んでいました!

高校3年生のときに、滋賀県の近江神宮で開催される全国大会に出れることになったんです。漫画の主人公たちと同じ舞台に立てるんだと思って、すごく興奮したのをいまでも覚えています。

全国大会の結果は、高校別の団体戦でベスト8、階級別の個人戦で4位でした。優勝はできなかったけれど、我が青春に悔いなしです。かるたを通して出会えた仲間や、かるたができる環境を整えてくれた周囲の人たちにはとても感謝しています。

――ずばり小川さんにとって、競技かるたのどこに魅力を感じますか?

小川

「これだ!」と手を伸ばした札に、相手より早く触れることができたときの爽快感がいちばんの魅力です。歌が詠まれる前のドキドキもあいまって、決まり字を聞いてからの一瞬で狙いどおり動けたときはすごく気持ちがいいですね。

そして、もうひとつの魅力は、和歌を使っているところです。百人一首はおよそ800年前に作られたものですが、「好きな人が夢に出てくるといいな」とか「秋はなんとなく寂しい気持ちになるよね」といった、現代に生きるわたしたちが共感できる歌がいくつもあります。

歌の意味を知り、作者の心情やそのとき見ていた情景に思いを馳せるうち、どの札にも愛着がわくようになりました。

――昔の人や情景に思いを馳せるなんて素敵ですね。

小川

百人一首は40首ほどが恋の歌で、なかでも、切ない気持ちを歌ったドラマチックな歌が多いんです。

たとえば、藤原定家の「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに / やくや藻塩の 身もこがれつつ」という歌があります。これは、松帆の浦(兵庫県)で夕凪のときに藻塩が焼かれる様子と、恋人を待って恋い焦がれる心情をかけて詠まれたもの。

風も波もない海辺の情景と、釜のなかでごぼごぼと踊る海藻の対比が美しい、お気に入りの一首です。

なににたとえるかは別として、叶わぬ恋を思って胸を痛めるのはいつの時代も共通ですね(笑)。

年齢制限ナシ、手軽に始められるのが魅力

――小川さんの話を聞くうちに競技かるたをやってみたくなりました。実際に興味をもった人は、なにから始めたらいいのでしょうか?

小川

実際にかるたを取ってみたい人は、各地にある「かるた会」の練習に参加してみるのがおすすめです。かるた会の情報は、全日本かるた協会ホームページの「かるた会紹介」というページから確認できます。会によって練習場所や練習日程が異なるので、個別に問い合わせてみてください。

東京都内ですと、「東京明静会」や「東京吉野会」「白妙会」などはメンバーも多く、活動も盛んなので、おすすめです。

――全国各地にあるんですね。でも、少し格式高そう……。

小川

ひとりで飛び込むのは勇気がいるかもしれませんが、社会人から始めた方も多く、初心者も大歓迎ですよ。
わたしが所属している地域のかるた会では、親御さんに連れられて来ている小さい子から、定年後に趣味で始めたという60代以上の方まで、年齢や男女の性別を問わず楽しんでいますね。

――記憶力に自信がなく百首も覚えるのは大変そうなのですが、どのように覚えましたか?

小川

百首すベてを暗記することにハードルを高く感じる人もいるかもしれませんが、楽しみながらやっているうちに、案外ラクに覚えられます!

語呂合わせの覚え方なんかもあって、ネットで調べるといろいろと出てきますよ。たとえば「(上の句)めぐりあいて 見しやそれとも 分かぬ間に / (下の句)雲隠れにし 夜半の月かな」という紫式部の歌は「めぐちゃん 雲がくれ」という語呂合わせで覚えました。

歌の意味から入りたい人は、現代語訳がストーリー調で書かれた本や、写真付きで詳しい解説をしている本を読んでみるのがいいと思います。

小川さんおすすめの入門書『原色 小倉百人一首

――競技かるたを始めるにあたり、準備するものはありますか?

小川

かるた会に入ってしまえばとくに準備するものはありません。強いていうならばジャージ、自宅で練習したい人は競技用百人一首の札が必要なくらいでしょうか。

着物を着てやるイメージがあるかもしれませんが、それは名人位・クイーン位決定戦など最上位者を決める一部の試合だけです。ほとんどの練習や大会では、動きやすいよう上はTシャツ、下は長ズボンのジャージを着用しています。

――ジャージでいいんですね!気が楽になりました。最後にこれから競技かるたを始めてみようと考えている人に向けて、メッセージをお願いします!

小川

競技かるたは何歳からでも始められるスポーツです。楽しみの見出し方は人それぞれ。誰よりも早く取ることに懸けてひたすら技術やスピードを磨いてもいいし、歌に込められた意味を味わいながらお気に入りの一首を見つけ、大事に取るのでもいいと思います。

特別な道具も心の準備も必要ありません。札を覚えたり歌の意味を知ったりというのはあとからで大丈夫です。まずは最寄りのかるた会に見学に行ってみて、一瞬のスリルや札を払う楽しさ、歌の美しさに耳を傾けてもらえたらと思います。

――ありがとうございました! 

競技かるたにかかる費用

かるた会 会費100円〜(会による)
競技用かるた5,000円
原色 小倉百人一首605円
『ちはやふる』全巻セット19,855円
合計25,560円

 

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