世界でオンリーワンの技を生み出せる!空飛ぶ曲芸師「スラックライン」の正体に迫る【マイナースポーツ特集#09】

趣味

世界でオンリーワンの技を生み出せる!空飛ぶ曲芸師「スラックライン」の正体に迫る【マイナースポーツ特集#09】

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5cm幅の不安定なラインの上を思いのままに歩いたり、前後に開脚したり。ふいに飛んだと思えば軽々と一回転をしてみせたり……。その様子はまるで、“空飛ぶ曲芸師”のようです。

今回紹介する「スラックライン」は、1960年代にアメリカのロッククライマーが暇つぶしに考案したスポーツ。2009年頃から日本にも専用ラインが輸入されると同時に国内の認知度も上がり、メディアに取り上げられる機会も増えました。公園の木などに巻いたラインの上を立ったり、歩いたり、ジャンプしたりする様子をテレビで見かけた人もいるのでは?

今回は、そんなスラックラインの魅力を解明!製造業の会社員でありながら、女子世界ランキング4位の顔を持つ渕上万緒さん、若干14歳ながら、男子世界ランキング2位の称号を持つ菊川信さんにお話を伺いました。

渕上万緒さん(左)と菊川信さん(右)

渕上万緒さん(左)と菊川信さん(右)

ラインを自由自在に操りながら楽しむ「綱渡りの進化版」

ラインを自由自在に操りながら楽しむ「綱渡りの進化版」

——ラインの上で飛んだり、ポーズを決めたり。一見、シンプルに見えるスラックラインはどのようなスポーツなのでしょう?

渕上

二点間に張り渡した専用ラインの上で楽しむスポーツです。分かりやすく言えば、綱渡りを進化させたもの。スラックラインと一口に言っても、その種類は多岐に渡ります。アクロバティックな技を繰り出す「トリックライン」、長いラインの上で歩行を楽しむ「ロングライン」や、高所にラインを張った「ハイライン」などが主流ですね。最近では、ヨガやフィットネスに転用させた形式も生まれるなど活用の幅が広がっています。

——渕上さんと菊川さんがメインで取り組まれているのは「トリックライン」ですよね。そのルールについて教えてください。

菊川

90秒、もしくは120秒の持ち時間以内に「トリック(技)」を披露し、トリックごとに決められた点数を積み重ね、その合計点を競うのが基本です。難易度によってトリックの点数は異なり、連続でトリックを決めたり、トリック中にポーズを決めたりすると加点されます。個人戦だけでなく団体戦もありますが、基本的にラインに乗るのは一人なので、個人競技の色が強いですね。

——過去に何度かテレビでスラックラインを見ました!ここ数年で盛り上がってきた印象を受けます。

渕上

そうですね。以前は「スラックラインをやってます」と言ってもピンと来る人は少なかったのですが、今ではスラックラインを知ってる人も増えたように感じます。競技名は知らなくても、ルールさえ説明すれば大半の人は理解してくれますね。

菊川

私たちがいる愛知県は、他県に比べてスラックラインの練習施設が多いようで。関東や九州といった遠方からも、遠征などでこの施設を訪れるライダーもいるくらいです。

世界でたった一つの技を生み出せる!?夢に溢れたスポーツ

——お二人は、なぜスラックラインを始めたのでしょうか?

菊川

中学の入学と同時に、小学校からの友達に誘われたのがきっかけでした。小学生の頃からバスケや野球などメジャーなスポーツは経験していた分、スラックラインの珍しさに惹かれたんですよね。初日にハマって、翌日からほぼ毎日施設に通い始めました(笑)。最初のうちはできないトリックも多くて悔しかったですが、成功したときの達成感はとても大きくて。日に日に、その感覚に惹かれていきましたね。

スラックライン歴2年足らずでプロの仲間入りをした菊川さん

スラックライン歴2年足らずでプロの仲間入りをした菊川さん

渕上

私は、7年前に地元の滋賀県に新しくスラックラインの施設ができ、興味を持った妹の付き添いで行ったのが始まりでした。試しにラインに乗ってみると、すごく足がプルプルして……。日常生活では当たり前のように行っている、立つ、歩くといった動作がライン上では難しい。信くんが言うように、それが段々とできる感覚にハマるんですよね。

——できない分、面白くなってくると。他にも魅力に感じている点はありますか?

渕上

スラックラインは夢のあるスポーツなんです。私のように21歳から始めてもプロになったり、世界で戦うこともできる。これまで誰も挑戦したことのないオリジナルのトリックを生み出すチャンスもあるので、自分の可能性を広げるようで楽しいです。

すてきな笑顔でスラックラインの魅力を語る渕上さん

すてきな笑顔でスラックラインの魅力を語る渕上さん

菊川

万緒さんは世界の女性ライダーで初めて「メイソンフリップ」と「オウルフリップ」を成功させましたよね。僕はスラックラインを始めて2年も経ちませんが、昨年12月に世界初のトリック「ニンジャフリップ」を生み出しました。歴が浅くても、練習を積み重ねれば世界でオンリーワンの技を持てる可能性もある。その点でも夢に溢れたスポーツだと思います。

 
 
 
 
 
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——自分にしかできない技を生み出せるスポーツ!響きがすてきですね。これまでの競技人生の中で、印象的だったエピソードはありますか?

渕上

スラックラインを始めて5ヶ月目以降から大会に出続け、1年後にはプロの肩書をもらいましたが、上達も遅く、結果が出ない日々が続きました。そんな折、より設備の整った施設が名古屋にできたと聞き、スラックラインに本腰を入れるため、2018年に仕事を変えて滋賀から移住。練習環境が整ってきたことで上達のスピードも早くなり、同年の大会で初の表彰台にして優勝を飾り、世界ランク2位まで上り詰められたんです。芽の出ない期間が長かった分、あのときの感動は大きかったですね。

渕上さん、菊川さんが通う施設「スラックライン パーク ガンバデ」

渕上さん、菊川さんが通う施設「スラックライン パーク ガンバデ

菊川

僕は、スラックラインに誘ってくれた友達が途中でやめてしまい、一人ではやる気も出ずに孤立した期間があったんです。誰かと切磋琢磨する楽しさを知っていた分、モチベーションの維持も難しくて……。でも、スラックラインへの情熱から「ここでやめるわけにはいかない」と踏みとどまれました。今ではありがたいことにワールドカップにも出場でき、世界に数多くの友達をつくることもできた。あのとき諦めなくて本当に良かったなと思っています。

——紆余曲折を経て、今の輝かしい功績があるんですね。お二人の言葉から、スラックラインへの愛がひしひしと伝わってきます。

メニューの自由度が高く、マイペースに練習できる

メニューの自由度が高く、マイペースに練習でき

——普段はどれくらい練習するのでしょう?

菊川

僕はハマりすぎて、2年目までほぼ毎日練習していました。来年は高校受験もあるので、今は勉強を優先しつつ、週2〜4ペースで施設に通っています。平日は学校終わりに1日2〜4時間くらい、休日になれば10時間練習するときも。といっても、ずっとラインの上に乗っているわけではなく、気分転換をしつつ自分のペースで練習しています。

渕上

私も週4くらいです。平日は仕事終わりに2時間ほど、休日は4時間くらいですね。時間を見つけるのが難しいので、短期集中で練習に取り組んでいます。

——決まったメニューはありますか?

菊川

いや、特にないですね。ラインで練習する以外は、トリックのイメージトレーニングのためにトランポリンを使ったり、練習風景を撮影した動画を見返してトリックの精度を上げたりしています。ラインに乗っている時間は、総練習時間の半分以下くらいかな。その日の気分や練習したい技によってメニューを自由に組んでいます。

——メニューの自由度が高い分、自分のペースに合わせて練習できるのが嬉しいですね。スラックラインを行うにあたって必要な道具はありますか?

渕上

基本は施設に揃っているので、練習に際して道具を用意する必要はありません。ただ外でやる場合には「ライン」のほかに、ラインにテンションをかける「ラチェット」、木を傷つけないための「ツリーウェア(ツリープロテクション)」も使います。あとはラインが破断したときに金具のラチェットが飛んで怪我をしないように「バックアップ」も用意しますね。

「Slackline Industries」シリーズ製品がおすすめとのこと

Slackline Industries」シリーズ製品がおすすめとのこと

スラックラインの盛り上がりを牽引する存在に

——お二人の得意技を教えてください!

菊川

僕は縦1回転の間に横に1回捻る「メイソンフリップ」、縦1回転に対して半回転だけ捻る「ミスティフリップ」といった前方回転を取り入れたトリックが得意です。

前方回転を取り入れたトリックを披露する菊川さん

渕上

私は前後に開脚するトリック「スプリット」ですね。見た目のインパクトも強く、イベントで披露すると観客の方が驚いてくれるので。

渕上さんの得意技「スプリット」

——お互いのプレイスタイルの印象を聞かせてください。

菊川

個人的に女性ライダーさんは横回転を好む方が多いように感じるのですが、万緒さんは横回転だけでなく、男性ライダーが得意とする縦回転も積極的に取り入れています。女性ライダーの中では世界初のトリックに挑戦し、成功しているのもかっこいいですよね。

渕上

そんな風に言ってもらえて嬉しい!信くんは、この施設で出会った当初は私が教える立場だったのに、驚くスピードで上達していって。信くんだけにしかできないトリックを生み出したり、自分のスタイルを確立していってる。将来が楽しみだし、スラックライン界をトップで引っ張っていく存在になると確信しています。

 
 
 
 
 
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——今後はどのような目標を描いていますか?

渕上

今後も女性ライダーの中で世界初のトリックをどんどん成功させ、世界のトップクラスで戦いたいです。信くんのように若い子の活躍も著しく、私にとっては過酷な状況になると思いますが、これからも常に先を見据え、さらなる高みを目指していきたいですね。

菊川

今年は海外大会に出場する予定なので、世界各国の友達を増やし、常に自己ベストを更新しながら数年のうちに世界チャンピオンになりたいです。引いてはスラックラインが国内外問わずさらに有名になり、競技人口も増え、誰もが知るスポーツになったときに、自分も現役で活躍する存在でありたいです。

運動神経がなくても大丈夫。可能性を信じてまずはチャレンジ

スラックライン上達表

——スラックラインを始めたい人は、まず何から始めるべきでしょうか?

渕上

最初から道具一式を揃えるのはお金もかかりますし、ハードルも高いと思います。試しに練習施設を訪れるか、体験会やイベントを探して参加するのがおすすめです。

——体験会なら参加のハードルも低そうですね!スラックラインはどんな人に合っていると思いますか?

菊川

チームプレーが苦手だったり、マイペースに練習したい人におすすめです。運動神経がなくても継続すれば必ず上達できる。可能性は無限大なので誰でも挑戦してほしいです。

渕上

スラックラインは老若男女問わずに楽しめるスポーツです。一見、跳ねたり、回転したりと難しそうにも見えますが、トリックをせずとも楽しむ方法はいくらでもあります。運動好きな方はもちろん、親子で新しいことを始めたい人にも挑戦してほしいです。

腕を組む、菊川信さんと渕上万緒さん

——最後に、これからスラックラインを始めてみようと考えている人に向けてメッセージをお願いします!

渕上

スラックラインを人に勧めると、「私にはできないから」という声をよく聞きますが、始めはできないのが当たり前です。自分のレベルに合わせて簡単なところからスタートできるので、諦める前に一度チャレンジしてほしいです。

菊川

僕は小学生の頃、よく問題ばかりを起こす問題児だったんです(笑)。スラックラインを始めてから目上の人や外国の方とも接する機会が増え、コミュニケーション力や人としての基本を身につけられた。周りからも「(内面的に)成長したね!」と言われます。人としても成長させてくれるスラックラインを全力で楽しんでほしいです。

——渕上さん、菊川さん、すてきなお話をありがとうございました!

取材協力

今回の取材は、渕上さんと菊川さんが通うスポーツ施設「スラックライン パーク ガンバデ」、お二人の活動を支援する「EXALER」にご協力いただきました。

スラックライン パーク ガンバデ
住所:愛知県名古屋市中川区供米田2-1101
HP:https://gambader.amebaownd.com/

EXALER(エクスエイラ―)
HP:https://www.exaler.com/

スラックラインにかかる費用

スラックライン教室(スラックライン パーク ガンバデ)登録料:500円
お試し参加:2,500円 / 回
体験会無料〜(開催予定はこちらから)
スラックラインセット約10,000円〜

 

撮影:細江亜里沙

 

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