絵の得手不得手は関係ない!?砂で物語をつむぐ「サンドアート」の魅力

趣味

絵の得手不得手は関係ない!?砂で物語をつむぐ「サンドアート」の魅力

趣味

「サンドアート」は、手で砂を操りながら絵を描くアートパフォーマンス。まるで動く絵本のように、発光するガラス板の上で次々と物語が展開されます。


今回お話を伺ったのは、サンドアートアーティストの伊藤花りんさん。もともと映像制作の世界にいた伊藤さんは、7年前にサンドアートと出会い、独学で習得。アーティストとしての活動をはじめてからは、東方神起や江ノ島水族館とコラボするなど国内外から高い評価を得ています。


サンドアートアーティストになるまでの道のりや制作の裏側など、たっぷりと聞かせていただきました!

サンドアートの魅力は「リアルタイム」

——まず、サンドアートについて教えてください。伊藤さんは音楽に合わせてパフォーマンスをされていますが、それがサンドアートのスタンダードな形式なんでしょうか?

伊藤

砂を使ったアート全般をサンドアートと呼ぶので、パフォーマンスがすべてではないんです。私も、本の表紙など静止画のお仕事もしています。

伊藤さんが手がけた本の表紙

——サンドアートの形式は様々なんですね。サンドアートはどこが発祥なんですか?

伊藤

明確な起源はよくわかっていないのですが(笑)、ハンガリーのアニメーション作家フェレンク・カーコさんが最初にライブパフォーマンスをしたといわれています。今も現役で活動されている方なんですよ。歴史としては30年くらいかなと。

——そんなに最近のものなんですね!

伊藤

スクリーンにライブカメラの映像を映し出すので、プロジェクターとカメラが必要なんですよ。デジタル時代のアートなんです。

——サンドアートの魅力はどんなところにありますか?

伊藤

私が面白いなと思うのは、リアルタイムでどんどん絵を変化させられる点です。似た表現でライブペイントもあるんですが、絵の具は消せないから色を重ねていくしかない。一方で、砂は消せるからどんどん変化させられるんです。

——リアルタイムってつまり一発勝負ですよね。緊張しませんか?

伊藤

いまだに毎回緊張します(笑)。でも、とても楽しんでやっています。5歳からクラシックバレエをやっていた影響もあるのかお客さんにリアルタイムで見せるパフォーマンスが好きなんです。音楽に合わせて身体を使って表現したり、客席との一体感を作れたり。絵画を展示するのとは違ったライブ感がありますね。

——ライブ感がサンドアートパフォーマンスの醍醐味?

伊藤

はい。同じ時間、同じ空間を共有している感じ。「今、楽しんでくれてるな」とか、客席の空気を感じられるのが好きです。

アニメの世界からサンドアートへ

——サンドアートを知ったのはいつ頃ですか?

伊藤

7年くらい前です。もともとコマ撮りアニメを撮っていたのですが、あるとき知人から「サンドアートっていうのがあるんだよ」と教えてもらって。YouTubeで海外の動画を見て、初めて知りました。

——アニメーションを撮られていたんですね!

伊藤

小さな頃からバレエを観て感動していたので、私も表現活動をしたくて。バレエも習っていたのですが、高校生ぐらいのときに進むべき道は違うんだなとわかってしまったんですよね。何か他の方法はないか模索していました。

それに、大学では心理学を専攻していたのですが、分析系のレポートでのミスがすごく多くて(笑)。やっぱり事務作業は向いてないなと思ったんです。自分が楽しくて得意だと思える分野で仕事をしようとの決意を固めました。それで、大学を卒業する少し前くらいから、自主制作映画の現場に携わるようになりました。そこで動画編集などの基礎を勉強したんです。

——大学を卒業してからずっとフリーランスなんですか?

伊藤

はい。もちろんすぐにその道で生計を立てるのは難しかったので、サンドアートを始める少し前まではアルバイトもしていました。

自主制作映画の現場では、他の人の作品作りを手伝ったり、逆に手伝ってもらって自分でコマ撮りアニメを作ったりしていました。そのときに知り合った方たちにサポートしてもらったおかげで、サンドアートの仕事をスムーズに始められたんです。

——はじめてサンドアートを見たときの印象を教えてください。

伊藤

音楽に合わせて絵を描くので、「描いている姿や手の動き、そしてそのタイミングも含めての作品なんだな」と。そこがいいなと感じました。

ちょうどその頃、映像制作と並行してダンスの公演もやっていて。ダンスのつなぎにサンドアートのパフォーマンスをしたら素敵かも、と思って練習したのが始めたきっかけですね。

——どうやって習得したんですか?

伊藤

当時は日本でサンドアートを教えている方がいなかったので、YouTubeで海外アーティストの動画を見て学びました。最初は映像を見ても、そもそもどういう仕組みで描いているのかわからなかったんです。なので、海外のサンドアーティストがテレビのインタビューに答えている映像まで探したりして。作品を描いている最中のアーティスト本人の動きを見て、自分に落とし込んでいった感じです。

——独学なんですね!始めるにあたり、道具はどうやって用意したんですか?

伊藤

最初は道具も自作でした。ガラスのテーブルを買って、砂が落ちないように自分で囲いをつけたんです。イラストレーターさんとかが使う、アクリルのトレース台ありますよね。発光する板のような。はじめはあれでやってみたんですけど、静電気で砂がくっついちゃって(笑)。砂を動かせないとどうしようもないので、ガラスのテーブルで自作したんです。

色んな表現技法を学ぶために描いたイラストや、好きな作家さんの作品が棚に並ぶ

——始めてからサンドアートのお仕事が来るまで、どのくらいの期間がありましたか?

伊藤

えーと、たしか半年くらいですね。

——半年で!?早いですね……。どういう経緯でお仕事が来たのですか?

伊藤

映像制作をしていた頃のつながりですね。「今サンドアートやってるんだよね」といろんなところで言って作品を見せたりしていたら、「じゃあうちのイベントでやってよ」という話をもらって。思いがけず早いタイミングで仕事に繋がったので、必死になって技を磨いて当日に間に合わせた記憶があります(笑)。

——そうなんですね。その後、知り合い以外からもお仕事が来るように?

伊藤

はい。イベントに来てくれた方や、YouTubeを見た方からご依頼があって、連鎖的に繋がっていきました。いきなり大手の企業さんからのお仕事が来ることもあったんです。当時はまだサンドアートをやってる人が少なかったので、検索に引っかかりやすかったんだと思います。

イメージのとっかかりは本から得る

——作品はどうやって作っているのでしょうか?

伊藤

ストーリーから自分で作るときと、音楽から作るときがあります。アーティストの方とのコラボは先に楽曲があるので、それを聴いて作品づくりに取り掛かります。

——伊藤さんが手がけた東方神起さんのミュージックビデオを見たんですが、とても素敵でした。あれは、歌詞からのイメージですか?

伊藤

はい。ミュージックビデオなので歌詞と音が先にあって、そこからイメージして描いています。

——「この音が鳴っているときに、この絵」というように、タイミングをあらかじめ決めているのでしょうか?

伊藤

ライブパフォーマンスのときはきっちりタイミングを決めてますが、映像作品の場合はざっくりです。「サビまでにこの絵を完成させよう」といった具合ですね。もちろん、どうしても音と手の動きを合わせたい大事なポイントはしっかりと押さえるようにしていますよ。

——ミュージックビデオでもやっぱり一発勝負なんですか?編集点が見つかりませんでしたが……

伊藤

そうです。なので、失敗するなど納得がいかないときは頭から何度も撮り直しています。東方神起さんのMVは5年ぐらい前のことなので記憶が曖昧ですが、1日がかりで撮影したから3テイクぐらいはしたと思います。

——ひとつの作品を作るとき、トータルでどのくらいの期間かかるのでしょう?

伊藤

作品によって違いますね。資料を読み込まないと作れないものもあるので……。

——たとえば、どんな資料ですか?

伊藤

「顕微鏡学会」からお仕事をいただいたときは、顕微鏡で見える世界の写真でしたね。石とかの物質のものや、生物のものなど様々……そうそう「閲覧注意」って書いてある資料もあって(笑)。クリックしたら、顕微鏡で見た虫のアップの写真でした。たくさんある資料の中から、絵にしたときに面白いものをピックする作業に時間がかかりましたね。

ほかに準備に時間がかかった作品といえば、「時間」をテーマにしたパフォーマンスのご依頼ですね。

——抽象的ですね。難しそう。

伊藤

「時間をどう表現するかはお任せします」とのことだったので、あらためて時間とはなんだろうと考えて。時間について書かれた、やや哲学的な本も読みました。けっこう厚い本だったので読むのに時間がかかりましたね。

時間とは何か探るために読んだ本。アトリエには他にも作品作りのための資料がたくさんあった

——本からインスピレーションを得るんですね

伊藤

音楽が先にあるものじゃない限り、イメージのとっかかりを本から見つけることが多いです。

——サンドアートの要、砂について伺いたいのですが、砂はどうやって入手するのですか?

伊藤

今は株式会社トウチュウという企業さんにタイアップしていただいてますが、はじめた当初は東急ハンズで買っていました。クラフト系のコーナーに売っていますよ。

——砂にこだわりはありますか?

伊藤

私はずっと、オーストラリアの砂を使っています。今の砂は手から真っ直ぐ落ちてくれるので、思うとおりに作画できるのが気に入っています。あと、粒が細かいところも。粒が大きいと、画素が粗い感じになってしまうため、細かい方が繊細な作品が作りやすいんです。

——今の砂は、初期にハンズで買った砂とは使い心地が違いますか?

伊藤

前の砂はもっと色が濃かったんですが、今の砂は白いので、よりグラデーションが表現できますね。絵の具と一緒で、薄い色は重ねるほど濃くなっていきますが、濃い色はもとから光の透過率が低いので出せるグラデーションの幅がせまいんです。

習わなくても、自分の表現を見つけられる

——サンドアートはどんな人に向いていると思いますか?

伊藤

うーん、向いていない人はいないと思います!細かく描きたいなら、絵が好きな人が向いてるかもしれませんが……。音楽と合わせる楽しさを知っているという点ではダンス好きな人にとっつきやすさがあるかもしれない……。

だけどやっぱり、向き不向きはあまり考えなくていいと思います。上手にやることより、楽しむほうが重要なアートなので。

——「サンドアートをやってみたい!」と思ったら、まず何から始めればいいのでしょう?

伊藤

人から習うのもいいんですが、趣味でやるなら、自分で好きに描いてみるところから始めるのがいいと思いますよ。

——伊藤さんのように、ガラスのテーブルとハンズの砂で?

伊藤

ガラスのテーブルのほうが砂を動かしやすいんですけど、最初は静電気を気にせずアクリルのトレース台でやってみる方が手頃だと思います。場所をとらないし、どこでもできますしね。

——最後に、サンドアートを始めたい方にメッセージをお願いします!

伊藤

サンドアートって、ふつうの絵とは違う描き方ができるんです。たとえば花だったら、指先でちょんちょんとつまむよう描ける。そういう独自の描き方を見つけてくのが面白いので、あまり「こうじゃなきゃいけない」っていうのはないんです。なので、とにかく自由に楽しんで、自分なりの表現を見つけていってほしいなと思います!

――形にとらわれず、自由な発想で描いていいんですね。すてきなメッセージありがとうございました!

伊藤さんのパフォーマンスを見たい方は、ご本人のSNSでライブ情報をチェックできます。

公式サイト
Twitter
Instagram

サンドアートにかかる費用

800円(1kg)~
透明な板トレース台の場合:約2000円~
ガラステーブルの場合:約3000円~
合計2,800円~

おすすめのアイテム

おすすめのアイテムは以下になります。揃えるときの参考にしてみてください。

 

人気記事Ranking
  • 月間

  • 週間

  • すべて

menu

したい・ほしいを探す

したい・ほしいを叶える