日々色好日 #84 「鸚緑-ouryoku-」

特集

日々色好日 #84 「鸚緑-ouryoku-」

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階段があると、そこに立ち入れても立ち入れなくても、屋上まで行けるのかとついその先が気になってしまいます。

高校に入学した春のこと。教室は新しい校舎の3階にあって、そこからさらに階段を上っていけば屋上に出ることができるかもしれない!と友人と試したことがありました。

4階を通り過ぎていよいよ屋上へ……と思ったのに、階段を上り切ったところにある屋上へのドアにはしっかりと鍵がかかっていました。しかもそれだけではなく「立ち入り禁止」の張り紙まで。

私も友人もひどくがっかりしましたが、「まあ当たり前だよね~」と笑える出来事でもありました。

私は早々に高校を辞めてしまったので当時一緒に階段を上った友人とはそれきりでしたが、今でもあの日のことをたまに思い出しては、少しだけ懐かしい気持ちに浸っています。


それでは、本日の伝統色を紹介します。

伝統色紹介:鸚緑-ouryoku-

鸚緑(おうりょく)とは、オウムの緑色の羽のような鮮やかな黄緑色のこと。

鸚緑はオウムの漢字表記「鸚鵡」の「鸚」をとり、文字通りオウムの羽の黄緑色を表現した色になっています。

鸚緑は別名として「鸚歌緑(おうかりょく)」と呼ばれることもあるそうですが、厳密に言えば「鸚歌緑」はインコの羽の色にちなんだ色名とされています。

鸚緑が色名として定着したのは近代で、比較的新しい伝統色名です。

作品紹介:『ポトスライムの舟』津村記久子

(あらすじ)工場で契約社員として働く29歳のナガセは、生活のために時間をお金で売ることへの虚しさを感じていた。そんな彼女はある日、職場で見かけたポスターで自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ163万円であることを知ってしまうが……。


『ポトスライムの舟』は、作家·津村記久子による中編小説です。

直接的な描写を使っていないのにうすら寒い虚しさのようなものが全体に溢れていて、「生活のために時間を売り、そのお金で生活をし、そのために時間を売り……」という抜け出せない不毛な繰り返しへの虚無感が真に迫ってくる作品でした。

それでいて虚しいだけの物語ではなく、かといって素晴らしいハッピーエンドというわけでもなく、淡々と日々が続いていく様子がよりリアルで、本当に誰かの人生を少しだけ覗いたような気持ちになります。

静かな雨の降る中でコップに雨水をため、主人公のナガセが友人の娘とともに延々とポトスライムの水差しをするシーンが印象に残っていて、そういえば自分の実家にもポトスライムがあったなと昔のことを思い出しました。

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