日々色好日 #55 「花紺青-hanakonjou-」

特集

日々色好日 #55 「花紺青-hanakonjou-」

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故郷を離れて数年が経ちましたが、帰省するたびに街並みが変化していて、いつもなんとなく知らない土地に来てしまったような気持ちになります。

生まれ育った場所だし、いつでも帰ることはできると思ってましたが、気づかないうちに私は「余所者」になってしまったようです。

変わっていくことは誰にも止めることはできず、すべてはゆるやかに流れていく。

懐かしい川の写真を眺めていると、失ったものの数ばかり数えてしまいます。

それでは、本日の伝統色を紹介します。

伝統色紹介:花紺青-hanakonjou-

花紺青は紫色を帯びた暗い青のこと。

人類最古とされるコバルト顔料「スマルト」の和名が花紺青で、この色は最も古い例としては古代メソポタミア文明の頃から使用されていたそうです。

日本では顔料「紺青色」の中でも人工顔料のことを「花紺青」と呼び、天然石のアズライトを原料とする顔料を「石紺青」と呼んで区別しています。

作品紹介:『ガーデン·ロスト』紅玉いづき

(あらすじ)異様なまでにお人好しなエカ、寂しさを異性で埋めようとしてしまうマル、女らしさにコンプレックスのあるオズ、大人びているように見えて弱いシバ。彼女たちの楽園は、せまくてあたたかな放送部室。それぞれに問題を抱えた4人の女子高生の視点で描かれる、4つの季節の物語。

『ガーデン・ロスト』は『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞を受賞した紅玉いづきによる現代小説です。

初めてこの本を読んだのは登場人物たちと同じくらいの年齢のころで、当時は彼女たちが抱えている形の違う葛藤や寂しさや焦燥をほとんど理解することができず、登場人物たちの持つそれぞれの歪みも怖く、物語の中にひっそりと存在するテーマすらも掴めませんでした。

そんなこともあって再読はしないだろうと感じていたのですが、先日この本のことをふと思い出し、あまり深くは考えずまた手に取りました。

葛藤、寂しさ、焦り、自分以外の誰かの痛み。何もかもを噛み砕いて飲み込んで、なりふり構わず不恰好に前に進んでいこうとする彼女たちの姿は、今の自分には苦しく痛々しく、強烈に眩しく、涙が出るほど輝いて見えました。

初読から10年。長い時間をかけて登場人物や物語に自分が抱く気持ちが変化したことに気づいたのです。

こういった出来事があると、時間が経って変わっていくことも、流れていくことも、何かを失っていくことも、そんなに悪くないような、そんな気持ちになってしまいます。

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