日々色好日 #47 「紅の八塩-kurenainoyashio-」

特集

日々色好日 #47 「紅の八塩-kurenainoyashio-」

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毎朝きまった時間にすれ違う女子高生がいました。

制服を綺麗に着崩し艶のある長い髪をなびかせている「いまどき」の女の子です。彼女は毎日必ず幼い顔に完璧なメイクをほどこしていて、その生意気そうな感じのアイメイクがとても似合っていました。

すれ違うたびに私が連想したのはキョウチクトウの花。

綺麗で可愛らしいのに毒があるところが似ている気がしたのです。

どんな大人になるのかな。

住む場所が変わり、すれ違うことはなくなりましたが、今でもときどき名前を知らない彼女のことを思い出します。

それでは、本日の伝統色を紹介します。

伝統色紹介:紅の八塩-kurenainoyashio-

紅の八塩は、紅花で濃く染められた深い紅色のことです。

奈良時代から存在する紅花染めの伝統色で、「八」は多いを意味し、「塩」は「入(しお)」とも書かれ、染め汁に浸すことを意味しました。

つまりこの伝統色名は「紅花の染め汁に何度も浸す」ということをあらわしているのです。

紅の八塩のような紅花の濃染めは高価で贅沢だったため、平安期に入ると「禁色(きんじき)」の対象とされました。

作品紹介:『その赤色は少女の瞳』大槻香奈

『その赤色は少女の瞳』は美術作家・大槻香奈の作品集。代表的なシリーズである少女のポートレートから、本の装画などのイラストレーションまで、作者のこれまでのキャリアがつめこまれています。

ネットで不思議な眼をした女の子の絵を見つけ、じっと見入ってしまったのはずいぶん昔のことです。ガラスの破片のように鋭く脆く、こちらを見ているようで見ていない少女の絵は、当時同じくらいの年頃の少女であった私をぐっとひきつけました。

2015年に東京で開催された個展『わたしを忘れないで。』は、展示されたすべての作品に張り詰めた緊張感があり、それらがこちらがたじろぐほどの切実さを持ってそこに存在していました。

『わたしを忘れないで。』のわたしは、絵の中の少女であり、それを見ている私であり、顔も名前も知らない誰かであり、世界でもある。

いつか必ず忘れられることを知りながら、それでも「忘れないで」と言うことの切なさ、あるいはあたたかさは、どうしようもなく生きている私に深く刺さるものでした。

晩秋の冷たい雨が降る日だったことも、ビニール傘を持つ手が鈍く冷たくなっていたことも、静かなギャラリーで長い時間作品を見つめていたことも、どうしてだかわからないのに涙が込み上げてきたことも、あの日のなにもかもが色褪せずに心に残っています。

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