【今週のことばたち#16】雪は天から送られた手紙である(中谷宇吉郎)

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【今週のことばたち#16】雪は天から送られた手紙である(中谷宇吉郎)

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お天気はどうですか?

こんにちは。2月に入り、吐く息が白くなることにももう驚かなくなる季節になりました。そんな2月前半をいかがお過ごしですか? 体調など崩されていませんか?

これを読んでくださっている今日、お天気はいかがでしょうか? 真っ青な空が見えていますか? どんよりとしたくもり空、あるいは雪が降っているかもしれません。

お天気の話は「タクシーの運転手と上司としかしない」など、なんの生産性もない会話の代名詞のように言われがちですが、僕はお天気の話、大好きです。なぜ好きかというと……という話は最後にするとして。今日はそんな天気にまつわる話をしていきたいと思います。

雪という不思議

マンションの1階の家に住んでいた小学生低学年の頃、いつも以上に「今日は寒いなあ」と思って目を覚ましました。日曜日であることもあり、僕が一番の早起きです(小学生の頃って休みの日に限って早く目が覚めますよね)。なんとなく外の空気に違和感を感じ、遮光カーテンを手に取り、バッと両手で開けてみました。するとそこには日常生活では目にすることのない、どこまでも真っ白な景色が広がっていました。

そんな(ありきたりだけど、たしかな)原風景があるからか、今でも雪は好きです。あの頃から比べれば幾分大人になったこともあり、雪が降ってしまうことの面倒さ、大変さも理解しています。交通機関も影響を受けるし、車だっていつも以上に運転が危険になる、大雪となれば生活に支障をきたすこともあります。だからこそ、「雪だ! わーい!」とはもちろんならないのですが、なんとなく雪が降ると皆がを少しだけ目の前の現実を忘れ、空を見上げて、少し柔らかな静かな気持ちになるような、そんな気がして。僕はそんな不思議な力がある雪のことが少し好きだったりします。

雪の研究者

今日取り上げる名言を残したのは、中谷宇吉郎さんという方です。知らないという方も多いと思うので、少しだけ経歴を説明すると、中谷さんは1900年生まれの物理学者であり、雪の研究者です。中谷さんは(今もよく科学館などで体験できる)人工雪を作ることに世界で始めて成功した方です。科学に関する随筆等もよく書かれていた方らしいです。

僕もこの中谷さんという方をこれまで知らなかったのですが、写真で、柔らかい笑顔でこちらを向いてらっしゃる中谷さんのお顔を拝見して、きっと素敵な方だったんだろうなあと、強く思いました。それにしても、10代、20代の頃はイケメンかどうか、可愛いかどうかだけが見た目の基準になりがちですが、少しずつ歳を重ねるにつれて、もしかしたら人の見た目ってそんな単純な判断軸じゃなくて、愛嬌だったり、(逆に)影だったり。色んな軸があって、その中で見た目の好き好きってあるのかもしれないなあ、なんて思うようになってきました。……すみません、また脱線しました。

そんな素敵な笑顔がチャームポイントの中谷さんが残した「雪は天から送られた手紙である」ということば、果たしたどんな意味なのでしょうか。

全ての贈り物は手紙である

きっと雪にとんでもない関心とロマンを感じていた中谷さんにとって、雪は空から降ってくる単なる白いフワフワ、ではなく、雄大で不可思議な自然という場所が自分に届けてくれたあらゆる情報や価値が詰まった手紙だったのだと思います。実際、中谷さんは雪の結晶の構造に着目し、そこから人工雪までたどり着いたようなので、雪をあらゆる角度からつぶさに観察して、膨大なデータや仕組みを理解していたのだと思います。まさに空から降ってきた手紙です。

ただ、そうした文脈で考えてみると、私たちは日常生活において、手紙を常にやり取りしていると言えるかもしれません。SNS上のつぶやきやショートメッセージのような文章はもちろん、相手に対して投げかけたことばやあるいは態度で示した感情も全て意味のある伝達であり、手紙的な部分があります。ペットの表情だって、天気だって、もしかしたらお気に入りのラジオのノイズだって手紙かもしれない。単に「情報」を「手紙」と言い換えているだけのようにも思えますが、手紙に置き換えることで、そこに何らかの感情やあたたかさを感じることができます。そう思うと、手紙と捉えることもあながちずれた発想ともいえない気がしてきました。

改めて雪という不思議について

そんな手紙で満たされた世界の中で、中谷さんは雪という手紙を読み続け、雪のことを想い続けてきました。なぜ中谷さんはそこまで雪に想いを抱いたのか。直接お話を聞いたわけではないので、真相はわかりません。ただ、個人的にはやっぱり、雪そのものが持っている不思議さが中谷さんを魅了したような気がしてなりません。

小さな子供やワンちゃんが雪にはしゃいでいる映像などを見ると、あぁやっぱり雪には不思議な力があるなあっていつも思います。空から降ってきて、白くて、フワフワしてて、冷たくて。手に乗せるとふわりと消えてしまうのに雪だるまにすると春先までずっと残っている。この世界のものでありながら、少し遠くの世界から間違えて紛れ込んできてしまったような不思議さをまとっている雪という存在。一流の物理学者である中谷さんでありながら、きっと最初の最初に感じていたものはそうしたシンプルな雪の不思議だったような気がします。研究に没頭している中谷さんに「なぜそんなに没頭できるのですか?」と聞いたら、微笑んで名言のことばをつぶやいて下さるはずです。

そして、そんな「不思議」は僕たちも簡単に感じることができて。雪が降ってきたときにふと空を見上げて、何秒か空を眺めてみる。たとえ直前に少し嫌なことがあっても、それだけできっと気持ちはふわりと変化してしまうと思います。雪や天気にはそうした不思議があると思います。

ということで

ということで。今回は雪にまつわる名言を取り上げてみました。ここまで書いて実感しましたが、日常って想像以上に不思議な手紙で満ちているのかもしれません。今僕は自室の窓際にある机で、パソコンをひらいてこの原稿を書いていますが、左上を見上げると真っ青な空が一面に広がっています。上を見上げたら巨大な青空があるって凄く不思議な気持ちになってきました。

天気の話。嫌いな方もいるかもしれないと話しましたが、やっぱり僕は好きです。誰も傷つかなくて、皆がいつもどこか気にしていて、そして現実からちょっとだけ浮世離れしてる……。嫌なことがあったら、空を見上げる。ベタかもしれませんが、大切にしたいです。これを読み終わったら、10秒でいいのでそこから見える空を見上げてみて下さい。きっと僕のこの手紙より、雄弁に大切なことを天気が教えてくれるはずです。

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