【今週のことばたち#15】あちこち旅をしてまわっても、自分から逃げることはできない(ヘミングウェイ)

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【今週のことばたち#15】あちこち旅をしてまわっても、自分から逃げることはできない(ヘミングウェイ)

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寒さが厳しい季節になってきました。

こんにちは。いよいよ冬ど真ん中という季節で、寒さも非常に厳しくなってきているかと思いますが、風邪など引いていませんか? 暖かくして寝ていますか? 何度かここでも書いたように冬の寒さより夏の暑さの方が苦手な僕ではありますが、1月の寒さともなるとやはり堪えます。

特に朝。冬の朝って神様が人間に用意した試練のような気がしてなりません。頑張って起きてしまえば、外の風も冷たくて気持ちもスッキリしたりするのですが、あのタイミングで布団を出ろというのは拷問に近い……。今回はフリーランスになって初めての冬なので、今年からは「結構布団でぬくぬくできるんじゃないか」と思ってみたりしていますが、なかなかそうもいかないのがきっと現実なのだと思います。

今日はそんな厳しい冬に噛み締めたい、力強いことばを取り上げます。

行動派作家・ヘミングウェイ

今回の名言を残したのは、ノーベル文学賞も受賞した世界的な作家、ヘミングウェイです。

ヘミングウェイの代表作といえば、やはり『老人と海』だと思います。僕もたしか中学生のとき、夏の読書感想文を書くために読んだ覚えがあります。その真っ直ぐで力強い文体と、海の過酷さというか、厳しさのようなものは今でも記憶にあります。それだけ、力強い小説なのだと思います。

そしてこのヘミングウェイという人、実際にスペイン内戦などにも積極的に関わるような本当に力強い、いわば行動派の作家だったようで、その文体はハードボイルドの原点になったとも言われています。そんな行動派作家であるヘミングウェイのことばを今回も寄り道しつつ、深堀りしていければと思います。

自分探しという旅について

高校から大学生の頃でしょうか。「自分探し」というのが一つの大きなテーマになっていました。「自分が本当にやりたいことってなんだろう」、「自分が好きなことってなんだろう」、「どこでなら自分は活躍できるのだろう」……など、自分を軸として自分にベクトルの向いた問いに延々と悩まされ続けました。

僕自身もそうでしたし、多くの方もそうだったかもしれませんが、何より悩んだのは将来のあり方、もっといえば職業についてでした。「自分に向いた仕事ってなんだろう」と、アルバイトくらいしか仕事経験がない自分がひたすらに悩んでいたのはその問いでした。結局、高校の頃、数字を扱う理系ではなくことばを使う文系の方が合うのではないかと思い、その中でもことばに関わりながら社会にも役立てる法律学の道を選択しました。

今思えば、10代や20代の始めのうちに本当に向いてる仕事なんて分かるはずがないし、ましてや自分探しの旅をしてみたところで、向いていることが見つかるとは到底思えません。ですが、あの頃はそうしたことを教えてくれる人はいませんでした。今回の名言はそんな自分探しをし続けていた自分に贈りたいです。

どこまでもついてくる自分

僕たちは将来や未来について思い悩むと、旅に出たり、外部のイベントや勉強の機会に参加しようとします。自分の外に自分が求めていたが何かがある、今はそれを見つけられていないだけだ、そう考えてひたすらにあちこち動いてみますが、これはよく考えると少しおかしなことです。なぜなら、自分とは外にあるものではなく、逆に一生離れることができない究極の内側にいる存在だからです。

たしかに旅に出たり、イベントに参加することによって新たな自分を発見したり、新たな発想に出会うことは沢山あると思います。それ自体は全く悪いことではないですし、むしろ鬱々と家にいるより、実りある時間だと思います。ですが、どれだけ外を出歩き、外に目を凝らしてもそこに自分はいません。自分とは、目を凝らしているその人自身だからです。

本当の自分を見つけたい、自分の将来をどうしていくのかを見定めたい、そうした自分に関する問いは沢山の旅をしたとしても結局の所最後の最後は自分自身を見つめ、自分に問う必要があるのだと思います。そして、ヘミングウェイが今回のことばで伝えようとしたのも、まさにその部分で、旅をすること自体が悪いということではなく、旅をし続けることが目的となってしまい、最終的にやらなければならない自分と向き合うことを疎かにするな、ということなのだと思います。

小さなヘミングウェイとともに生きる

「あちこち旅をしてまわっても、自分から逃げることはできない」。改めて読んでみても、非常に厳しいことばだと思います。まさに行動派の作家で、力強い文体が持ち味のヘミングウェイらしいことばです。

SNSを中心に情報やことばを得ている僕たちは、日頃から激しい罵り合いや罵倒や過激なことばと出会いがちで、だからこそやわらかい作品ややわらかいことばを探しがちです。特に僕自身、そうした傾向が強くあり、できるだけ喧嘩や争いといったものからは距離を置いて暮らしたいと日々思っています。

それが悪いことだとは思いませんし、むしろ過激なことだけが正しい/意味があるのだという発想は良い考え方だとは思えません。ですが、今回こうしてヘミングウェイのことを考え、ヘミングウェイのことばに触れる中で、生きる上で必要な「強さ」とは向き合うべきなのでは、と感じました。迷って外のことばかり気にしている自分がいたり、なにかお得なことはないかとキョロキョロしている自分に対して、「大切なことはそこじゃないだろう」と強く諭してくれる自分が必要なんじゃないかと思ったんです。

とはいえ、スペイン内戦に参加したヘミングウェイのように生きることはできません。それじゃあどうすればいいのか……。一つ思ったのは、「心のなかに小さなヘミングウェイを持つ」ということです。脳の中なのか、心の中なのかは分かりませんが、いわゆる内面にいる天使と悪魔のような判断軸の一人としてヘミングウェイを参加させるんです。ワイルドな風貌で、鋭い文体を持ち、あの厳しい『老人と海』を書いた作家を心の中に宿す。そうすることで、悩んでしまったとき、逃げ出しそうになったときに脳内の小さなヘミングウェイに叱咤激励をもらう。そうすることで、自分に強さを与えるんです。少しくだらないようにも思えますが、きっと小さなヘミングウェイは今の僕たちに少し欠けている大切ななにかを教えてくれる気がします。

ということで

今日は行動派作家であるヘミングウェイのことばをご紹介しました。厳しいことばではありますが、僕はこのことばを読んだとき、まさにヘミングウェイが脳内にやってきて、低い声で「あちこち旅をしてまわっても、自分から逃げることはできないぞ」と諭された感じがしました。無理はしなくてもいいと思います。ですが、自分がやり遂げたいこと、どうしても頑張りたいことがあるときは、実現のためにたまには力を込めていくのもいいのかな、と思います。小さなヘミングウェイとともに。

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