日々色好日 #35 「老緑-Oimidori-」

特集

日々色好日 #35 「老緑-Oimidori-」

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玄関横にある猫の額ほどの広さの祖母の庭は、瑞々しくやわらかな空気で満ちていました。

ヒメツルソバ、レンゲ、乙女椿。かりんやあけび、ユスラウメ、アロエ、紫陽花……。植物好きの祖母の小さくも豊かな庭。

開花しているのは一度も見たことはなかったですが、その中には私の名前の由来になった柚子の木もあったのです。

私が実家を出て数年後に祖母は施設に入居し、あの家は空き家になってしまいました。もちろん庭も、いまはもう当時の面影を残していません。

それでも私の記憶の中には、いつでもしっとりとした緑のにおいのするあのころの庭が残り続けています。

それでは、本日の伝統色を紹介します。

伝統色紹介:老緑-Oimidori-

老緑とは灰みをおびた深い緑色のことを指します。

松の木が年輪をかさねて年を経たものを「老松(おいまつ)」と呼び、その老松の深く渋い葉の色をイメージしたとされています。

明るい若葉の色である「若緑(わかみどり)」の対語にあたる伝統色名です。

作品紹介:『蟲師』漆原友紀

(あらすじ)植物でも動物でもない「生と死の間、者と物の間にいる」蟲(むし)と呼ばれるものが存在する世界で、蟲に関するあらゆる事象を取り扱うのが蟲師(むしし)である。主人公・ギンコも蟲師として蟲の研究をしながら旅をしていく。月刊アフタヌーンにて連載されていた漆原友紀の漫画作品。特別篇を除く全10巻完結。

『蟲師』の主人公・ギンコは、蟲を呼び寄せやすい体質であることからひとところに留まらずに旅を続けています。

その中で出会い、やがて別れる人々。様々な形と特徴を持つ蟲たち。そして移り変わる季節……

この作品を初めて読んだのは中学生のころだったのですが、ページをめくるごとにギンコのように留まるところを持たないことへの憧れが募っていきました。

でもギンコは留まるところを「持たない」のではなく「持てない」のだということに気づいたのは、大人になって作品全部を読み返した時のこと。

いつでも余所者でいることは自由であると同時に孤独でもある。

そう気づいて以来、旅を続けるギンコの後ろ姿に少しだけ寂しさを感じるようになりました。

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